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英雄たちのサーガ  作者: 天道は遠く、人道は邇し
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プロローグ

今は昔、『最初の歌の時代』と世が呼ばれていたころ、世界は神々によって創られたと言われる。


 

宇宙を創成した彼らの内、最も偉大な神々の王エアが、底知れぬ叡智を尽くした杯に世界を満たし、命を与えたのだ。


 

かくて、気の遠くなるような時間が過ぎ、やがてまだ何者にも汚されていない、原初の世界の草原に花が芽吹き、山脈が創られ、蒼い蒼い海が命で溢れた。


 

神々はまず動物を生み出す際に、この世界における最も善良な存在として、『最初の人々』を産んだ。


 

世界に神々の呼び声が響き渡ると、『彼ら』は神々の足元、アヴァロンの湖の底で目覚めた。


 

神々が産み出した『言の葉を持つ者』の内、最も誇り高く、長命で美しく、聰明な彼らは『エルフ』と呼ばれ、神々の力の幾つかを正確に受け継ぎ、言の葉を自由に操った。


 

彼らは、その上の始祖テルハールが館を構えた、アルゴスの白い森にその創世期の居を設けることになる。


 

そして、『最初の人々』が生まれてからしばらく、太陽が世に昇り、夜が出来た頃、『遅れて来た人々』が目を覚ました。


 

暗黒の夜を恐れ、大いなる光を求める彼らは、『人間』であった。


 

やがて人間テランと呼ばれるようになる彼らは、特別な力を持たないがゆえに、裏切りを知り、時には名誉を知り、いくばくかの慈悲を知った。


 

中原の大地に根差した彼らは、その短き命の続く限り、多くの勲しと悲しみと罪を、創世期の歴史に刻むことになる。


 

神々と、二種族と他の様々な原初の生き物が育んだ『最初の歌の時代』も終わりになると、エアの弟アンヌーンが悪しき心を抱き、『終わりの人々』を作った。


 

力の角を持ち、夜を恐れず光を求めない彼らは、『魔族アンヌア』と呼ばれ、人間とエルフを脅かした。


 

やがて、アンヌーンはエアの妻である大地と豊穣の女神を捕らえ、意志を奪って鎧として用い、さらには自らに反抗的な力あるエルフたちを痛めつけて拘束し、生きる盾とする背徳の行為を持って、エアに挑んだ。



アンヌーンに与した魔族の軍隊は、邪悪な意志と力に身を包み、世界を蹂躙しようとした。


 

これに世界の行方を憂えたエアは、人間の英雄アルトスに原初の光を封じたエルウィンサルの石を与え、エルフのハイ・キングたちに来るべき暗黒に備えて武器を作らせ、魔族に対する敵意を植え付けた。


 

やがて戦いが始まり、エルフと人間が魔族との二度の大戦に敗れると、勝ち誇ったアンヌーンは神々の幾人かに単身挑み、彼らを傷つけた。


 

その傷は邪悪な憎しみに満ち、永遠に消えない苦しみに溢れていて、そのあまりの痛みゆえに傷ついた神々は涙を流し、そのため地上に雨が降ったと言われる。


 

味方の苦戦を見た勇者アルトスは、エルフの上級王ハイ・キングの一人、グラムの娘グラムウィネ他七人の勇気ある人間とエルフの若者と共に、エルウィンサルの石を持って魔族を打ち払った。


 

この時、最後の攻勢に出た人間とエルフの連合軍は、アルトスとエルウィンサルの石に導かれ、魔導で守られたアンヌーンの秘密の要塞に辿り着いたと言われる。


 

彼等は魔族の大将たちを次々に討ち取り、ついにアンヌーンに挑んだが、大地と豊穣の女神の鎧は人間の力では破れず、拘束されたエルフの盾はエルフの力では破れなかった。


 

やがて、アルトスの仲間たちは次々に倒れ、連合軍がアンヌーンの力に挫けかけた時、エアと強き神々が戦いに加わった。


 

神々とアルトスとアンヌーンは三日三晩戦い、そしてアンヌーンはついに傷つき、地に伏した。


 

エアの一撃が、アンヌーンの無敵のはずの生ける鎧を破り、盾を砕いたのだ。


 

意を決したエアに刺し貫かれた、大地と豊穣の女神の恍惚と苦悶と恐怖の悲鳴は、月と大地に亀裂を生じたとされている。









 

――かくて世界は落ち着き、アルトスの渾身のとどめで最後を迎えたアンヌーンは消えた。


 

しかし、アンヌーンは消える際、自分の魂と力を分離し、この世のどこかに封じたと噂されている。


 

神々は悲しみの地から去り、地上には残された人間とエルフ、魔族と他の様々な種族の国が出来た。


 

歴史は神々から離れ――そして、時が立った。


 

エルフと人間のアルゴス、魔族のアンノールが大陸に並び、ブレトランド地方にはドワーフ、人間、エルフ、その他の種族が屹立する。

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