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19、日系人の受難

 19、日系人の受難




 リムネによる魔法教室は週に二度という形になった。

 一週間の間、生徒たち普通に学校に通い、生活をする。


 そして、週末だけを東京の教室に集められて、指導を受けるのだ。

 若い少女たちにとって重要な週末の休みを奪うことになる。


 だから、反発のようなものを予想してか、生徒たちには特別手当という名で、いくばくかのお金が与えられることとなったそうだ。

 いくばくか、とはいうものの、けっこうな大金でもあった。


 そればかりか、成績の良い生徒にはさらに追加で手当ても出る。

 おかげで生徒たちの魔法授業に対する反応は良い。


 魔法という特別なものを学べる上に、お金まで出るのだから。

 それに超能力のような力が少しずるだが、我が身につくというのは快感らしい。


 中には週末以外の休日も、授業に出たいと希望する生徒も出た。

 さて、このことはネットなどを介して世界中に流れている。


 生徒たちのプライバシーは使い魔によってガッチリ守られているが、魔法を世間に広めると いう話題は先の報道以上に騒がれた。

 現在は最少人数で授業を行っている――


 これに世界中から授業を受けたいと熱望する声が届いた。


 同時に、


「そんなものを世界に広めるなどけしからん! 即刻中止せよ!」


 という過激な意見もあちこちで起こってしまっている。


「どうしたものでしょうね」


 ネットで魔法反対のデモを見ながら、山田氏は困った声で言った。

 別段魔法が反対されようがされまいが山田氏にはあまり関係ないことだが。


 それでも、日本に関係することで世界の不評を招くことは嫌だった。


「どうしたも何もないだろうよ。いずれは魔法学校を作るつもりだ。反対意見など……」


 知ったことか、魔女はせせら笑うのだった。


「そう言うと思ってましたよ」


 山田氏は嘆息して、ネットニュースを検索する。

 さすがに、日本には大きな反対派というのは少ないようだった。


 キリスト教の一部などは不服である、という意見を出している。

 しかし、他の神道や仏教などは完全に沈黙して、我関せずという態度。


 反対にしろ賛成にしろ、下手に関わって面倒事に巻き込まれるのは嫌なのだろう。

 反対に海外では、ある国などで全国的な反魔法デモが発生した。


「DEを潰せ!」


「日本に核攻撃を!」


「神を冒涜する悪魔を倒せ!」


 過激なキリスト教団体によるデモは熱狂的に盛り上がり、収拾がつかない。

 勝手なことを言うそれらに対して、国の政府は苦慮しているようだった。


 どうもデモを扇動している連中は、日本とDE……ダーク・アースことクラツクニを同一視しているらしい。

 というか、区別がついていないのかもしれない。


 いまだ日本人も日本列島も健在で平和を謳歌しているが、国としての日本はすでにない。

 とっくにクラツクニに併合されてしまっているのだ。


 だから、日本列島を攻撃するということは使い魔という強大な軍事力を持つ大国相手に戦争するということなのだが、どうもそのへんが胡乱になっているようだ。

 魔女は国外のことなので無視しているが、逆に言うと何もしないせいでデモを過激化させているところもあった。


 元々、クラツクニに対する不満や不信は強くあったのだ。

 今までがある意味おとなしすぎただけとも言える。


 それが魔法を広めるということがきっかけで一気に爆発してしまったらしい。

 叫ぶほうは無責任なものだから気持ち良いですむ。


 しかし、現実的な対応を迫られる政府にすればたまったものではなかった。

 近代兵器が通じない怪物を有するクラツクニに対して、攻撃を仕掛ける。


 それがどういう結果を生むかはすでに一国が事実上壊滅したことで知れていた。

 自分があんな目にあいたいと思う馬鹿はいない。


 しかし、宗教だったり何かだったりに熱狂した人間はそんなことを考えぬ。 


「魔女をやっつけるんだ!

「今世紀の十字軍を結成しよう!」


 と、まあ好き勝手な非現実的主張を繰り返すのみだ。

 そんなこと、できるのならとっくにやっているのである。


 異世界という巨大すぎる上に巨大な未開拓地。

 魔法という人類の問題を半分以上は解決できるかもしれない技術。


 暴力や陰謀で奪えるのなら、大国がこぞってそうしている。

 できないのは、魔女の力が圧倒的に上だからだ。


 少なくとも使い魔の軍団と互角以上に戦える兵器でもなければ、人類に有利な交渉なんぞができようはずもないのである。

 今までの行動からして、面倒だとわかれば一気に人類を全滅……とはいかぬまでの半分ほど抹殺するくらいのことはしかねない。


 そもそも、神の存在が魔女の出現によって揺らぎつつもある。

 魔女や悪魔がいるのなら、対極に位置する神もいるのではないか。


 そう信じる人もいるが、今のところ神はその意思や存在を顕していない。


「だからこそ核兵器で最終戦争を起こして神の新時代を築くのだ!」


 こんな風に叫ぶ声もある。

 政治家の中にも半ば本気でこんなことを考えている者がいないではない。


 しかし、それを貫き通すには魔女の使い魔は強力すぎた。

 仮に核戦争で世界が滅んだところで、ゲートなる魔法陣が閉じられてしまえば―― 


 向こうには何の関係のありはしないのだ。


 ただ人類が自滅するだけで終わってしまう可能性のほうが高い。

 だから、理性的な人間が必死になって過激化する運動を抑えていた。


 しかし下手に抑圧されたり障害があるほどに燃え上がるのは恋愛だけではない。

 国民に理知的判断を促す声も、暴走する宗教には効果が薄かった。


「そもそも、奴らにはその核ミサイルも効かなかったじゃないか」


「報復攻撃を受けて我々の宗教や文化が根こそぎ破壊されるかもしれない」


 こういう声は背教行為だとレッテルをはられて排他される始末。

 最近になって作られたクラツクニの大使館前には連日デモ隊が押し寄せる。


 しかし、やられるほうのクラツクニ側はその様子をネット配信したりと、半ば見世物の如く扱っていた。

 と、いうよりも魔女はそのようにしか受け取っていない。


 中には大使館に火炎瓶を投げる者もいたが、大使館に決壊が張られ狼藉者の暴力はまったく歯が立たなかった。

 しまいには門を破ろうとしたり、銃撃する者も出るが、まるで無意味。


 かえってその国の政府が青くなり、デモを警官隊に鎮圧させようとして、大乱闘に。

 その騒ぎで馬鹿を見たのは、その国にいた日系人だった。


 何の関係もないのに、


「日本人だから魔女の仲間だ!」


 と、言いがかりをつけられてリンチされたり、殺される事件が続出。

 中にはもうこんな国には住めないと、他国に逃げ出す者も大勢出た。


 ある国の州では、早くも魔法の学校や授業を認めないという法律が提出されて、可決するという事態になっていたり――





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