16、独占インタビュー
16、
世の中というか世界がクラツクニの報復攻撃で騒がしい間――
日本では毎日のように増える本土の情報でにぎやかだった。
まず最初に取材陣が向かったオーヤシマ地域。
日本チックなこの地域は、多数の種族が住んでいた。
文化も地域ごとにバラバラで、平安時代みたいな街があるかと思えば、縄文や弥生みたいな生活をしているところもある。
戯画化された日本の歴史、その各時代が場所ごとに点在しているという感じだった。
そして、いわゆる『人間』というのは存在しない。
鬼、天狗、河童。狐、狸、狼の獣人たちなどなど。
サキュバスと言うかサバエナスたちなんかもいる。
妖怪図鑑に載りそうな多数の種族が島々の中で暮らしているのだった。
そこから西に行くと、大陸国があり、こっちは中国文化に似ていた。
ただし似ているというのは一部だけで、他は雑多な種族からなる混沌とした場所。
であるらしい。
ごく簡単なものだが、オーヤシマ地域の紹介がひと段落ついたのは、ちょうどその頃。
「ちょっとお願いがあるんですけど」
山田氏へ、鈴谷女史から連絡がきたのだった。
「コネというのじゃないですが、ヤマダさんからお願いできませんか?」
「何でしょう」
答えたのは最近入手した携帯電話端末を通してである。
何故持っているのか。あると便利だからだ。
別に電話だのメールをやり取りする友人はいなかったが、ネットの見るのに使う。
そういうわけで入手してすぐに鈴谷女史にもアドレスを送っておいた。
「実はですね。あなたの上司……女王陛下にインタビューをお願いしたいんですよ」
これに山田氏はふむ、と首をひねって空中を睨んだ。
魔女がこの世界にやってきて以来、世界中の人間が彼女に対するニュースを一日も欠かさず配信し続けている。
というか、常にニュースの材料を提供しまくっているのだからしょうがない。
そもそも魔女の力を体現する魔法に関しても、いわゆる科学的にはなんにもわかっていないということらしい。
過去に魔法とか言われた、ぶっちゃけると迷信と同じ名前であるが完全に別物。
超自然的というと胡散臭いが、その胡散臭いモノが厳然とした現実としてある。
科学者たちは頭を抱える毎日を送っているとか。
一応使い魔のインプたちが研究の協力をしているが状況は芳しくない。
今のところはあらゆる機器を使って使い魔が魔法と言う現象を起こすところを計測しつつ、色んな説を提唱しているそうだ。
まあ、既存の科学を鼻くそのように馬鹿にしている……。
としか思えないのが、魔女の魔法のでたらめさなのであった。
またクラツクニ本土にしても何人かの科学者がやってきてはいる。
大気の成分などを調べて、一応人間が生存可能というぐらいはわかったそうだ。
そもそも、そうでなかったら取材になんかいけないだろう。
元が平凡なサラリーマンである山田氏には、詳しい説明を受けてわからないが。
「そういえば、そういうものは今までなかったですな」
国連から出頭しろという命令みたいなものが来たことはある。
しかし、魔女に対して直接インタビューをしたいという者はいなかった。
いや、思った者はいたかもしれないが、山田氏が知ったのは今回が初めてだ。
「まあ自分の意見が通るかどうかはわかりませんが、一応聞いてみましょう」
「ホントですか? やったあ!」
鈴谷女史は女子高生みたいな声を出して喜んだ。
「しかし、相手は何をするかわからんですから、相応の覚悟はしてくださいよ」
「大丈夫ですよ、多分」
なんだよ、多分って。山田氏は言いたかったが、言わなかった。
そして。魔女にちょろりとそのことを尋ねた結果。
「いいぞ」
魔女はあっさりと了承をしたものだった。
忙しいのか暇なのかよくわからない魔女であるが、すぐにインタビューの段取りを行う。
場所はどこにしようかと考えたが、一応大きな国の女王だから変なところで、というようなわけにもいくまい。
実際には魔女さえ良ければ、そのへんのファミレスだろうがかまうまいが。
何しろ、独裁者なのだから。
で。山田氏の提案により、本土の取材陣を迎えたホテル施設に行うこととなった。
本土から日本に戻ったばかりだった鈴谷女史は再び本土に舞い戻ることになったけど、別に気にしてはいないようだ。
インタビュー時に関しても、スーツ姿でニコニコとしていた。
くそ度胸があると言うか、ものをあまり考えていないというか、鈍感というのか。
鈴谷女史に対して、そんなことを思う山田氏であった。
かくして、インタビューは始まるわけだが。
前置きやら何やらをカットして、直接的な部分のみ書き出すと。
――ヒミコというお名前は本名ですか?
「一応な。日本に来る時に適当につけたものだ。元の名前はない。というか覚えてない」
――失礼ですが、今おいくつですか?
「数えてないから知らん。多分お前よりは長く生きているな」
――ご出身はこのクラツクニですよね? それとも……。
「それも覚えてはいないな。気がついたらこの世界にいた。昔のことはぼんやりとしている。ただ、うっすらと日本という国のことを覚えている」
――それは昔日本……にいたおられたと、いえ、日本の出身とか……!
「さあな。何となくだから何とも言えん。もしかしたら元は日本人だったのかもな。そういや日本のことを初めて知った時どこか懐かしい気もした」
――それは重大なことかと思いますが……。
「そうなのかもしれん。だからかどうかは知らんが、日本のことは悪く思っていない。いや、けっこう気を使ってやってると思うぞ」
――確かに国民の支持はよろしいほうだとは思われます。そうでない人もいますが。
「そりゃしょうがない。我のやりたいようにやってるからな結局は」
――次の質問ですが、陛下の使用される魔法に関してです。それは、うまく言えませんけど私たち普通の人間にも使えたりするのでしょうか?
「訓練を積めば素質次第だが、ある程度は使えると思うぞ。我と同レベルとなるとなかなかに難しいとは思うがな」
――そ、それはすごいですね! 是非とも広めていただきたいです。
「そうだな、次は魔法の普及に取りかかるか。しばらくは戦争をしたがる国もないとは思う。まあ、あっても別にどうということはないが」
まあ、だいたいこんなやり取りがしばし続いた。
このインタビューはすぐさまネットで鈴谷女史の名前と共に広まり、反響を呼んだ。
魔女は元は日本人、らしい。
この部分はどう解釈されたものか、
「日本人は魔女の同類だ!」
と、いきりたったキリスト教徒などが日系人を襲う事件が多発した。
後に歴史に悪名を刻むことになる大問題が発生してしまったわけである。
そうなっても、原因の魔女はのほほんとしたものだったが。




