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11、DE~ダークアース~

 11、




 空中島の巨大牧場。宙に浮かぶ巨大海鮮養殖場。

 取材陣がそういったものを巡っている間、山田氏は魔女に呼び戻された。


 ――ちょっと面白いことになっているぞ。戻って来い。


 そんな思念と共に、魔法陣に吸い込まれて魔女のもとへ。


「まあ、これを見ろ」


 そういう魔女の声と共に、四角い画面が空中に展開してあるものを映す。

 映ったものは海上を行く貧相な船。


 見ていると、それは空中から飛来した火の玉によって吹き飛んだ。

 画面は宙に浮かぶドラゴンの姿へ代わり、消える。


 そういった映像が無数に現れ、消えていく。


 いやはや。


 船の規模や大きさこそ違うが、いくつも展開される画面内にはどれも同じ。

 海上を進む船でしめられているのだった。


「何事ですか、一体?」


「最近の日本近海の様子さ。クラツクニの様子を見せてからな……」


「ははあ」


 してみると、あの船はいずれも不法入国しようとしたものらしい。


「勝手に我の領土をウロウロされては不快なのでな。ああやって処分するのだ」


 不法入国する者を撃沈。


(いいのか、それ)


 きっと大問題なのだろうが、今はそれ以上に問題が出てきているらしい。


 というのは。


 続いて何か書類のようなものが空中に浮遊し始めたからだ。

 それも尋常な量ではない。


 何かの報告書らしいが、一枚とって読んでみれば、


「クラツクニと仲良くしたいです」


 大体こんなような意味の内容であるらしかったが、専門家ではない山田氏には今ひとつよくわからない。

 今現在の進行形でクラツクニ本土の情報は世界中に配信されている。


 鈴谷女史たちはオーヤシマという地域を見て回っているようだ。


 そこで巨大な、立ち上がれば6メートルを超える巨大な熊を見たり。

 池に棲むこれまた巨大な白蛇を見たりしているようだった。


 自然環境は日本に似ているが、明らかに魔物やモンスターとしか言いようのない巨大生物が数多く生息している地域。

 もっとも、クラツクニはどこへ行ってもこういう怪物のいない場所はほぼないらしいが。


 これはアナウンスの説明によるものである。

 さらにクラツクニが巨大すぎるほどの国土を持ち、膨大な資源を持っていることも。


 ただ、そんなものをわざわざ取らなくても、日本へ送る資源は皆魔法によって生み出されたものであるとのことだ。

 例え無限ではなくとも、魔女の協力を得れば希少な資源がいくらでも手に入る。


 そんな風に考えた為政者たちは少なくなかったらしい。

 日本の併合を支持するので、経済面などで仲良くしたいです。


 というような要請が、水面下から送られてきたようだ。それも大量に。

 ただし、あくまで水面下だけで、表面上はクラツクニの……魔女の一方的な軍事侵攻は全く認められない! という国もあった。


「しかし、どうやら我が国はこの世界でも認められだしたようだぞ?」


 書類の山を空中で舞わせながら、魔女は面白そうに笑うのだった。

 インターネットなどを参考にすると、クラツクニはDEなどと書かれている。


 ダーク・アース。略してDEというわけだ。 


「日本も英語でジャパンというようだしな。これはこれでいいだろう」


 と、魔女はパンと手を打った。


「しかし、不法侵入者や難民が多くなっているのはどういうわけです」


「人気取りではないが、ちょいと日本の民を可愛がってやっているからな」


 何でもないことだ、と肩をすくめる魔女。

 聞いてみると、どんな風に可愛がっているのか。


 まず医療にかかるお金を実質無料にしたそうだ。

 その他、高校や大学など進学にかかるお金もゼロではないが、ものすごく低くした。


 今まで金がかかっていたところを、魔法で補助した結果らしい。

 例えば、旧自衛隊などは日本の防衛部隊としてそのまま残されている。


 そこを魔法で全部肩代わりした結果、けっこうな資金が余った。

 また日本に運び込まれている資源の代金は魔女が受け取っている。


 サービス価格で販売しているらしいが、何しろ量が凄まじい。

 これを回しただけで色々良い具合になったとか。


 ついでに小中学校の給食も完全無料にしたそうだ。

 おかげで庶民は喜んで、魔女を支持する声は日に日に強くなっている。


 別にご機嫌とりが必要ではないのだがな、と魔女は首をすくめた。

 なるほど、日本に行けば厚遇されるかもしれない。


 されなくとも豊かな国で生きていける。

 そんな風に考えて密入国をしようとする者が多いのだろう。


「いずれは学費というやつをタダにしても良いかな。みんなそういうのを望んでいるのだろ」


「そうですね。喜ばれると思います」


 魔女にしてみれば、お金というのもあまり意味がない。

 何せ金でできるようなことはほとんど魔法でできるからだ。


「力づくで従わせるなど簡単ではあるが……それでは芸がなかろう?」


「そうです、そうです。こういう手段が粋でしょう、はい」


 内心ヒヤヒヤしながら山田氏は魔女に同調してみせる。

 できることなら、魔女にはこのまま温厚路線を貫いてもらいたい。


 戦争もできるだけ避けてほしいが、それは贅沢な望みか。


「ま、金や物ずくで従わせるのもやはり芸はないがな、我はそう頭は良くない」


 返答に困るつぶやきに、山田氏は沈黙を守った。


「だが侮られるのも面白くない。だから秩序を守れぬ輩や我に不満のある者は死ぬか、ここを出て行ってもらうことに決めている」


 要するには死刑か国外追放ということであろう。

 すでにそうなった連中も、けっこうな数になっている。


「それに妙な動きをしている連中もおるしなあ」


 と、魔女は『日本解放』などと書かれたビラを取り出して見せた。

 内容は、魔女の独裁から日本を解放して再び独立国になろうという動き。


 魔女のせいで既得権益を失ったりしたり、厚遇されない連中がやっているらしい。


「どうするんです?」


「ま、仮に何かしたとしてもどうにでもできる。しばらくはほっておくさ」


「ところで、お前に元日本人として聞いておきたいのだがな」


「なんでしょう」

「クラツクニから、日本に行きたいと願う者がけっこうおるのだ。どう思う?」


「え? あの、住民というか国民……っているんですか?」


「おるぞ。使い魔ほどではないがけっこうな数いる」


「……てっきり使い魔やモンスターしかいないのかと」


「言ってなかったかなあ? まあ、いい。どう思う?」


「それは……日本の文化を尊重して法律・道徳を守るのなら…………」


 と、山田氏は教科書じみた文句をボソボソ言うのだった。





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