ふわふわ系女子×甘々系男子。
隣の席の天音 玲さんは友達は多くないけど、先生からも、クラスメイトからも信頼されていて、誰に対しても誠実に、優しく対応する。そんな天音さんは4日前からの俺の彼女だ。
「天音さん、ここがどうしても英訳できないの。教えてくれないかな」
「あ、ずりー!天音さん、俺にも教えて!」
とある1人のクラスメイトを皮切りに、俺も、私も、と囲まれる彼女は学年トップ。皆から頼られていて、凄いなあとは思うけど。
「なんだ、優良。ヤキモチか?」
「五月蝿い、壱。妬いて悪いか。天音さんは俺の彼女だ」
友人・高槻 壱の言葉にムッとする。
「ただいま〜…っと、今日も玲は人気者だね〜」
妙におっさんくさい気がするのは俺だけか。顔の広い水原 梓もススス、と俺に近寄り、「ヤキモチですか」とニヤニヤしながら言う。
「言えばいいじゃん。玲は俺のだ!って」
ねえ、高槻。 そうだな。そんな風に言葉を交わす2人。
俺だってそうしたい。でも、そんなことをすると、天音さんに嫌われるかもしれない。
悶々と考えていると、あ、と小さく声を上げた水原。
「そういえば、さっきひかりん告られてたよ。場所は中庭、相手は3年」
「お前は…、くそ、早く言え!」
「いってらっしゃーい」
走っておそらく中庭に行く壱。“ひかりん”こと咲野 ひかりは壱の彼女さん。2週間前に付き合い始めたが、彼女さんは未だに告白される。
「ほら、高槻は行ったよ?木夏は行かなくていいの」
「……行く」
ファイト、と励まされて、輪の中に体を滑り込ませる。
「天音さんは、俺の彼女なんだけど」
「知ってるっつうの」
何回目の自慢だよ、とクラスメイトが呆れ顔。確かに、この4日間はずっとアピールしてた気がする。
「あんまベタベタすんな、ばーか!行くよ、天音さん」
彼女の手を取り、引っ張って教室を出る。ちょっと走って、空き教室に逃げ込んだ。
「木夏君、ダメですよ、あの言い方は」
「分かってる。あとで、皆に謝る。それと、天音さんにも。ごめん」
「えっと、なんで私に?」
「……嫌じゃない?」
「なんで嫌になるんですか!嬉しいです」
ふわりと笑った彼女に、鼓動がはやくなる。不意打ちが多い彼女を持つと、心臓が頑張りすぎて寿命が縮む…。
「木夏君」
「え!?あ、はい!」
「その、」
天音さんが何かを言いかけた瞬間、空き教室のドアが勢いよく開いた。
「あっぶなー…。あ、木夏と玲じゃん。ごめんねー、邪魔しちゃって」
「…何してんの」
「高槻に追いかけられてる。ひかりん、告られてなかったらしくって」
男の先輩と話しているところを遠目から見て、告白の現場だと思った水原。壱が「俺のに触んな」と言った直後に勘違いだったことが発覚。「お前のせいで恥かいた」と怒られたらしい。
「梓さん、大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫。そろそろ高槻もどこかに行っただろうし、私は退散するよ。じゃあ、あとは2人でごゆっくり〜」
やっぱり、水原はおっさんくさい。
「ったく、台風みたいな奴だなー…」
「ふふ、そうですね」
「……あのさ、さっき、何か言いかけたよね?何?」
「えっと…、名前で呼んでもらえませんかってお願いしようと思ったんです」
「名前?」
「駄目、ですか」
小さくしゅん、としながらも聞いてくる天音さん。可愛すぎる!
「………玲」
「っ!はい、木夏君」
「…駄目。俺のことも、名前で呼んでよ」
「ゆ、優良君」
「…」
「…」
「…」
「…」
「あーもー、何これ、恥ずかしすぎる…」
「ふふ、ちょっと照れますね」
両頬を淡く染めている玲は、トテツモナク可愛くて、思わず、ギュッと抱きしめる。
「玲の心臓、めっちゃドキドキしてる」
「優良君も」
互いに小さく笑って、額をくっつける。
「玲」
「はい」
キスしてもいい?
小声で聞くと、聞かないでください、なんて返ってきた。
玲にそっとキスを落としながら、『毎日玲が好きになっていくんだな』と、思う。
玲も同じであれば。
そう願いながら、もう一度キスを落とした。
どうも、Transparenzの相良亜貴です。
一応ですが、この話で「○○系女子×○○系男子。」は完結となります。あくまでも、一応です。何かこういった話が書きたくなった時、更新していこうとは思っています。その時は「ああ、更新したんだな」とチラッとでも見ていただけると幸いです。
また、今年度より受験生へと進級するので、全く更新のない日々が続くと思います。ご了承ください。
この作品の登場人物は、他の作品に関連してくる可能性が高いです。新シリーズも始められたらなあ、と思いつつ、この作品の誰かを出演させようかな、なんて思ったり思わなかったり。楽しみにして頂けると嬉しいです。
では、また皆さんに会えることを楽しみにして。
*2017/02/12 加筆修正しました。