姉系女子×シスコン系男子。
「結婚すんの?」
「そう」
3つ上の姉は付き合って4年目の彼氏と結婚することになった。3日前にプロポーズされたらしい。
「結婚式って、いつ?どこで?つーか、どんな人?」
「もー、矢継ぎ早に質問しすぎ!」
明るく笑う姉は幸せそうだ。誕生日に好きなものを買って貰った時とか、大会で良い賞を貰った時、そんな時の笑顔。
「えーっと、結婚式は来年の6月で、ハワイでするの。結婚相手はー………この前家に来た時、居なかったっけ?」
「いつ」
「先週の日曜日。挨拶に来たの」
照れたように頬を染めて笑う。幸せな時の笑顔とは違う、初めて見る笑顔。
「…その日大会だったよ」
「あ、ね、どうだったの?我が弓道部の後輩君よ!」
「優勝した。…写真は?」
「おめでとうございます!」
「ふざけなくていいよ」
「もー、冷たいんだから。写真はあるよ。この前旅行したの」
「は?どこに?」
質問しすぎだって、と笑う姉。スマホを出して結婚相手の写真を見せてくれた。明るい姉に似合う、優しそうな人。
「北海道に行ってきたの!ラベンダー畑が綺麗だったなー…。あ、あんたも彼女出来たら一緒に行きなよ!」
「行かねーし。…プロポーズってどんなのだった?」
「えーっとね、ふふ、ふふふふ、」
幸せそうな笑いが止まらない姉。
ちょっと怖い。
「秘密!ふふふ、」
ニヤニヤしながら秘密、なんて。聞きたくても、聞けない雰囲気。
「…部屋にいるから、晩御飯出来たら呼んで」
「え、ちょっと、」
姉の焦った様な、困った様な声を聞きながら、自室のドアを閉める。
「結婚って、まじか…」
姉が長い間付き合っている人がいることは知っていたし、そろそろ結婚するだろうとも思っていた。だけど、姉の口から聞くと、衝撃は大きい。
ベッドの上に四肢を投げ出し、落ち込んでいると、呼び鈴が聞こえた。玄関のドアを開ける音がして、続いて姉のはしゃぐ声が聞こえてきた。
「あ、悠月、彼が私の婚約者の笹原 理人さん。理人さん、弟の悠月です」
「沙月ちゃん、弟がいるって言ってたね。はじめまして、悠月君」
「…どうも。何で敬語?」
「璃人さん、2つ年上だもの」
「聞いてない」
「言おうと思ったら、悠月が部屋に行っちゃうんだもん」
「は?」
姉と言い争っていると、クツクツと喉の奥で笑う理人さん。
「悠月君、しっかりしてるんだね」
「…」
脈絡の無い話に何も言えず、黙って理人さんを見る。
「俺にも悠月君と同じくらいの妹がいてね。しっかりしてて、悠月君と雰囲気が似てるから」
しっかりしてるんだろうと思ったんだ、と優しい笑みを浮かべて言った。
「…姉ちゃんを幸せに出来るんですか」
「ちょっと、悠月!」
「んー…、ごめんね、幸せには出来ない」
「は?」
「俺は、幸せにするんじゃなくて、一緒に幸せになりたいんだ」
一方的に幸せを与えるんじゃなくて、2人で幸せを作りたい。
笑みを浮かべながらも、強い口調で言う彼は幸せそうに「俺はもう幸せだけどね」と姉を見ながら付け加える。
「……結婚おめでとう」
「ありがとう」
「ありがとう、悠月」
*****
「ね、ちゃんと綺麗!?」
「うん、綺麗」
「…」
「何」
「悠月が素直なとこ、初めて見たかも…」
「前言撤回。ブース」
「悠月!」
新婦の控え室から出て、隣の新郎の控え室へと逃げる。
「悠月君」
白いタキシード姿の義兄の横に、見知らぬ女子。
「兄さん」
「あ、莉奈ははじめましてか。奥さんの弟さんの、悠月君。悠月君、俺の妹の、莉奈」
「はじめまして。莉奈です」
「はじめまして。悠月です」
「悠月君、沙月ちゃん綺麗だった?」
「ノーコメントで」
「えー…、その言い方は余計に気になるよー」
「じゃ、私が代わりに見てきてあげるよ」
「えっ!莉奈狡い!」
「兄さん、式まで見ないって決めてたでしょ」
じゃあね、と言って控え室を出た莉奈さん。
「理人さん」
「ん?」
「姉さんを、よろしくお願いします」
「うん。必ず2人で幸せになるよ」
天気は快晴。
海がすぐそばにある教会での結婚式。
姉の望んだ場所で、姉が愛する人と、共に誓を立てる。
今日、姉は世界一幸せな妻になる。
お久しぶりです!
私は学生です。つっこまないでください。
でも、遅くなりましたごめんなさい!
はい、ちょっとタイトル詐欺。
あんまりシスコンじゃないよね、悠月君。
姉系っつうか、姉だよね、沙月さん。
でも、これ以外に思い浮かばなかったんですよ…。何?何だったら合うの?と思いつつ、妥協してしまいました。思いついたら編集させていただきます。
次は、もう少し早めにアップできると思います。頑張ります。
Transparenzの相良亜貴でした。
では、また会えるのを楽しみにして。
*2017/02/12 加筆修正しました。