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〇〇系女子×〇〇系男子。  作者: 相良亜貴
7/10

鈍感系女子×オネエ系男子。

(りつ)!おはよ~♡」

「ああ、雪弥(ゆきや)か。おはよう」

「もう、ユキって呼んでって言ってるでしょ?」

「あだ名で呼ばない主義だから」


昇降口に向かう途中、友人に声を掛けられた。朝から元気だな、と軽く感心。

友人歴2年目の藤堂雪弥(とうどう ゆきや)は口調が女性的で、女子力高め。男女共にから人気のある男子高校生(17)。女しかいない家系故に、こうなったらしい。


「律、明日は私服デーよね!」

「え?あー…」


そういえばそんな日があったな、と思い出す。

月に一度ある私服デーは「制服から私服に変わって、異性からのギャップ萌を狙っちゃお☆」という生徒会発案の企画。数年前からあるらしく、よく先生が認めたな、と思う。


「律は今回、とんな格好にするの?」

「制服」


私服デーだからといって、制服を着てはいけないというわけではない。 一部の生徒は制服を着ているし、私も面倒だから制服にしている。


「駄目よ!前回も前々回も制服だったじゃない!」

「え、だって面倒…」

「よし、今日の放課後に買い物に行きましょ!」


約束よ!と強引に決め、下駄箱に逃げる。冗談じゃないと追いかけると、何故か雪弥が固まっていた。


「…雪弥?」

「っ、な、何でもないわ!」

「何でもないことない。何、変な物入れられてたの」

「…違うわよ」


拗ねたように唇を尖らせた雪弥の仕草は、私より女子っぽい。

女子より女子っぽい雪弥と軽く睨み合う。と、そこにのんびりした声。


「あれ、ユキと律、痴話喧嘩?」

「…梓」


諫める声色で牽制。だけど、効果が無いようで、雪弥が持っていた手紙をあっさりと取り上げる。


「「あ、」」


雪弥と声が重なる。何故か気まずそうな顔をする彼に少し腹が立った。


「ふーん…、ユキのモテ期、到来かもね。ねえ、律」

「は?」


ほら、と見せてくれた手紙の内容は「放課後、お話出来ませんか?」。可愛い便箋と可愛い文字。白河百合(しらかわゆり)という名はどこかで見たことがある。


「白河百合っていえば、ミスコンで選ばれてた子だよね?可愛い感じの」

「…そうね」

「もー、ユキはなんでそんな不機嫌なの?」

「律とお買い物に行く約束してたのよ!私服デーのために」

「2人で?ふーん…。じゃ、私が代わりに一緒に行く。いいでしょ、律」


急に呼ばれ、つい頷いてしまった。

じゃ、放課後に正門ね、と約束を取り付けた梓は、特に仲のいい子達の方に走っていった。


「雪弥、行こう」

「ねえ、律」

「ん?」

「……ううん、何でもないわ」


少しモヤモヤする心と、少し寂しそうな雪弥の顔が合わさって、息が詰まる。

だけど、雪弥が寂しそうな顔をしたのも一瞬で、すぐに「ワンピースとかがいいわね〜」なんて呑気に話す。手紙のことには触れず、それがさらにモヤモヤする。

モヤモヤの正体が分からず、しっくりこないまま過ごした。





「律はユキが好きなんじゃないの」

「…好きだよ?」


急に当たり前のことを言った梓。肯定したのに、深い溜息をつかれた。


「LIKEじゃなくて、LOVE」

「は……」


愛だよ、愛。

恥ずかしげもなく言う梓。逆に?っていうか普通に、私が照れて赤くなる。


「初心だねえ、律ちゃ〜ん。まあ、自分の心によく問いかけてみなよ」


LIKEじゃなくて、LOVE。恋愛感情としての、好き。


「あらあら、図星?」

「かも…」

「(赤くなっちゃって…。ユキちゃんに見せたかったわ)」


気持ちの名前を知ってしまえば簡単だ。"好き"という言葉がすとん、と落ちて、はまる。自覚した途端に気持ちは膨らむ。

こんなにも好きだったのか、なんて。


「よし、これでオッケー」

「え?」


何がオッケーなんだろう、と思い、梓を見ると、2つも紙袋を持っている。しかも、片方は少し大きめ。


「買ってきた!」

「え、私見てないんだけど…」

「大丈夫だって!入ってるものを全て身につけて、学校に来てね!じゃ、クレープかパンケーキ食べに行こう!」


有無を言わせぬ迫力でまくしたて、お店を出る。

それから3時間パンケーキを食べながら話し、最終的には梓の家に泊まることに。なかなか寝させてくれない梓は、彼氏の不満(のろけ)を言いながら、私の話を深くまで聞こうとする。とはいえ、気持ちを自覚したばかりで話すことはない。結局、「明日の反応が楽しみね」と微睡(まどろ)みながら梓が言ったのを最後に、寝てしまった。



「うん、やっぱり似合う」

「…似合ってないよ」


梓が知らぬ間に買った服はカシュクールワンピース。上から下に段々濃い青にグラデーションになっている。靴は白のオープントゥサンダル。


「あと、このイヤリングとー、ネックレスつけて。で、完成!」


慣れない服にそわそわしながら学校に向かう。


「昨日、ユキちゃんと白河さん一緒に買い物してたの見てさー、いい雰囲気だったんだよね」

「え、あの2人付き合ってるの?」

「さあ?でもまあ、ユキちゃんいい彼氏になりそうだよねー」


「…気にすることないんじゃない?」

「うん…、大丈夫」


大丈夫じゃないけど、梓を心配させないためにも嘘をつく。他愛もない話をしながら教室に向かっていると、名前を呼ばれた。


「律…?」


聞きなれた声に振り向くと、女装じゃなくて、男装の(というのも変だけど)雪弥がいた。隣には白のふわふわしたワンピースを着た白河さん。


「律、来て」


見たくない、と思ってしまう嫌な心。それを知ってか知らずか、雪弥は私の腕を引く。連れていかれた先は空き教室。


「…何」

「…誰が選んだの」

「梓。雪弥、男の格好って珍し」

「ばーか」


…なんで馬鹿って言われたんだろう。


「…律、大事なこと言うよ」

「うん…?」


はぁー、と深くて長いため息をついて



「律が好きだ。…友達としてじゃなくて、一人の女性として」

「…嘘だ」

「嘘じゃねーよ。ずっと好きだった。多分、出会った時から、ずっと」



いつもの雪弥と違う、甘くて掠れた声。こんなの、ドキドキしないわけがない。


好きって自覚してすぐに、こんな奇跡、有り得ない。そう思って頬をつねるけど、痛いだけで。


「…ね、俺、律の気持ち聞いてない」

「え、」


頑張って告白したのに、なんて拗ねる仕草は少し可愛い。


「…」

「…俺は待つよ。律が言うまで、ずっと」



「………好き。雪弥が好き。女子力が高いところも、甘いものが好きなところも、」


全部が、好き。



そう言うと雪弥に腕を引かれ、抱きしめられる。力強いけど、加減していると分かって、その優しさで一層好きになる。


「律、なんでそんな可愛いんだよ…」

「……ちょっと待って」


雪弥の胸を押し返す。ぐぇ、とカエルが潰れたみたいな音が聞こえたけど、気にしない。


「白河さんは?告白じゃなかったの?」

「違うよ。ただの相談」


雪弥曰く、白河さんには好きな人がいるらしく、「一番可愛く見える服と髪形とメイクを教えて」と頼まれたらしい。

ほら、と雪弥が窓の外を指さすと、先輩らしき人と楽しそうに笑ってる白河さん。少し頬を染めていて、可愛らしい。


「ほんとだ…」

「りーつ。俺を見ろよ」


急に向きを変えられ、変な声がでる。絶対にさっきの仕返しだ。


「律、その服似合ってる」

「ありがとう。雪弥も、似合ってる」

「梓ちゃんが選んだってのが気に入らない。………小さいな、俺」


ごめん、なんて。


「ううん。しょげてる雪弥、面白い」


可愛いと思ってしまったのは内緒だ。

全然面白くない、と拗ねる雪弥。


「んー、お取り込み中ごめんね」

「梓」

「梓ちゃん」


謝ってるけど、多分悪いとは思ってなさそう。でも、気持ちに気付けたのは梓のお陰だから、見逃そうか。


「あと2分でSHL始まるんだよね。行かないの?」


それともサボる?、なんて、悪い笑みを浮かべながら聞いた梓。


「律、このままサボらない?今は、2人でいたいんだけど」


雪弥のキラキラした目はずるい。抗えない何かがあって、頷いてしまう。


「梓ちゃん、お願いね」

「はいはい、じゃあ、また明日ね」


苦笑する梓に見送られながら、走って玄関へ向かう。何人かの先生とすれ違ったけど、止められることなく正門を出る。


というか…


「雪弥、口調戻ってる」

「ふふ、こんな私は嫌い?」

「まさか」


小さく笑いあい、どちらともなく口付ける。

手を繋ぎながら幸せを感じるのだった。

お久しぶりです、Transparenzの相良亜貴です。


ユキちゃんのような友達が欲しいなあ、なんて思います。絶対楽しいですよね。

友達は同じ感じの人が沢山より、違うタイプの人が沢山派です。


さて、ユキちゃんは相方の梨琥の作品にも出ています。ぜひ、探してみてください。大人になっていますよ!大人になったユキちゃんは………。


では、またお会い出来るのを楽しみにして。



*2017/02/12 加筆修正しました。

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