表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇系女子×〇〇系男子。  作者: 相良亜貴
3/10

寒色系女子×カフェ系男子。 前篇

カフェ、【Kaleidoscope】は私のバイト先。地域の人や私が通う地元の高校生に人気のお店。

そこの店長、日向(ひゅうが) 雅臣(まさおみ)さんは私の彼氏…のはず。


「いらっしゃいませ…ってああ、莉紗(りさ)ちゃんか」

「すみません、補講で遅れました」

「補講…?…そっか、お疲れ様。着替えておいで」


頭を撫でられ、見送られる。その触れ方は恋人に対して、というよりは妹に対して、という感じがする。

付き合い始めて半年。キスはおろか、手を繋ぐのもまだ。


告白は私からだったけど、あの人は告白と思ってないんじゃないか、なんてエプロンをつけながら考える。


「莉紗ちゃん、早速、陣内(じんない)さんにこれ、お願いします」

「はい」


雅臣さんはかっこよくて、女性ファンもお客様の中には多い。まさに、選り取り見取り。その中から私を選んだ理由は、未だに不明。選んだつもりじゃないのかもしれないけれど。


「陣内さん、お待たせいたしました」

『ありがとう、莉紗ちゃん』


陣内さんは素敵な婦人。柔らかな雰囲気で凄く優しい常連さんだ。


「莉紗ちゃん、ちょっといいかな」

「何かしましたか」

「ううん、買い出しに行ってきてほしいんだ。いつものお店で、メモに書いてあるものを、お願い」

「分かりました」


親友達曰く、『表情を作れ』。

表情筋が発達してない私は、よく“冷たい人”と思われる。親友は『莉紗は美人だから、ちょっと冷たく見えるのかもね?でも、クールでかっこいいよ!』とフォローになってないフォローをくれた。

手を出されない、と言うと、もう1人の親友はキレた。


 『何その贅沢な悩み』

 『贅沢?』

 『大切にしてもらってるってことでしょうが』

 『…そういうもん?』

 『なんなら交換するか?』


贅沢な悩みと言われ、そうかもしれない、なんて思い始める今日この頃。それ以前に彼女と認識されていないのかもしれないけども。


「…売り切れ」


メモにあったものの1つが売り切れていて、雅臣さんに連絡すると、少し離れた違う店を教えてもらったので、その店に向かう。


『あれ、秋野(あきの)?』

「…」


お目当てのものを買って店を出ると、名前を呼ばれ、振り返ると親友の彼氏がいた。

ちなみに、そいつが見ていたショーウィンドウにはファンシーでキュートな、男子には不釣り合いと言っても過言ではないグッズ。


「そういう趣味…」

「違う違う違う。春陽(はるひ)を怒らせたから、お詫びの品を検討中」

「だったら、私のバイト先のクッキーは?春陽のお気に入りの1つ」

「じゃ、そーする」


何も話すことが無いので、そのまま2人で沈黙のまま店に帰る。


「ただいま帰りました。岸野(きしの)はレジにいて」

「おう」


雅臣さんに荷物を受け渡し、春陽の好きなクッキーの詰め合わせを2つ用意する。


「756円になります」

「…なあ、2個必要?」

「756円になります」


無理矢理作った営業スマイルと共に繰り返すと、諦めたようにお金を出す岸野。


「244円のお釣りとレシートです。ありがとうございました」

「マジで機嫌直るよな」

「親友歴舐めないでくれる」

「何年」

「15年」

「…信じる」


互いにカウンターに身を乗り出して攻撃し合っていたけど、岸野は敗北を認め、帰っていった。


「同級生?」

「はい」


親友の彼氏です、という言葉は飲み込む。多分、というか絶対に雅臣さんにいらない情報。


「莉紗ちゃん、レジをお願いするわ」

「はい」


陣内さんが財布を片手に微笑んでいる。こんな方になりたい、とぼんやりと思うけど、愛想がないことに気が付いて諦める。


「768円になります」

「御馳走様でした。今日も美味しかったわ」

「ありがとうございます。1008円お預かりいたします」

「莉紗ちゃん」

「はい」


お釣りの240円とレシートを渡そうとすると、陣内さんに引き留められた。


「壁があると思った時は、自分から突き当たっていく方が手っ取り早いわ。相手が壁を突き破るのを待ってもズルズルと引きずってしまうかもしれないから。一度当たってみたらどうかしら」


ふふ、と少し意味深に笑う陣内さん。


「陣内さん、彼女に変な事言ってませんか?」

「あら、年上からの助言をしただけよ。また来るわね」


陣内さんは素敵な笑みを残して去っていった。


「…本当に、変な事聞いてない?」

「変な事の基準が分かりませんが、特には」


妙な沈黙が私と雅臣さんの間に流れる。

それを破ったのは、注文しようとしたお客様。内心、少し安心して注文をとりにいく。



『―――相手が壁を突き破るのを待ってもズルズルと引きずってしまうかもしれない』

陣内さんの言葉が、頭の中をぐるぐると駆け巡っていた――――。

どうも、Transparenzの相良亜貴です。


今回はタイトル詐欺ではありません!

この話を投稿する前にタイトルを変えようかとも思ったんですが、やめました。無駄にいじると酷くなるので。

そしてそして、謎の前篇後篇で分かれているという。

ただ単に、「長くなるな…。よし、分割しよう」と思っただけです。


何を考えているのか分からなかった日向雅臣が、後篇では自分の心の内を吐露します。お分かりの方もいるかもしれませんが、【寒色系】の意味も後篇の後書きにて説明します。


では、またお会いできる日を楽しみにして。


*2016/08/27 加筆修正しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ