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グルメダンジョン

マエスタ領の地下に建造されていた謎のダンジョン、俺はそのダンジョンの謎を解く為冒険者を派遣し、そして今何故か領主の俺がダンジョンに居た。

どうしてこうなった。

 

 ダンジョンの魔物が本当に食えるのか確かめる為にこれまた何故か非戦闘員を連れてダンジョンを潜るこの不条理。


「領主様、魔物の気配です」


 レンが魔物の気配を察知して警戒を促す。

彼女の気配察知は探知範囲こそ短いものの精度はかなり優秀だった。

魔物の数は言うに及ばす、大きさ、強さ、そして周囲に溶け込むカメレオンのようなステルス能力を持った魔物の気配まで察知できるのだ、正に人間レーダー。


 その正体はかつてシャトリア王国で出会った魔法少女フィジカルカレンだった。

だってスキルでステータス確認すれば本名分かるし。

 この世界ミドルネームを詐称することは出来ないが本来の名前から一文字抜くとかは普通に出来るらしく意外とごまかしが効くみたいだ。

まぁ本人がナイショにしたがっているので自分から話すまでは黙っておこう。


 実際の所彼女はかなり優秀でレーダーとして以外にも戦闘面でもかなり強い、武闘家としてかなりの腕前を持っておりサラメーの街の武術師範達が自信を持って送って来ただけの事はある。

 どうやら魔法少女(物理)として戦わされた事で武の心に目覚めたと思われる。

ただし操られていた時のように肉体の限界を超えて戦うのではなく、修行によってかつてのような強さを身に付けたようだ。

 これが天才か・・・

只のザコなら彼女一人で事足りるほどだ。


「私が先行して攻撃します、領主様達は援護をお願いします」


「分かった」


とはいえ援護の必要など無く瞬く間に彼女が倒してしまうのだが。

ほら勝った。

レンの手によってこちらの気配に気付く前に魔物達はその短い・・・のかは分からないが一生を終えた。


「鑑定ターイム!!」


「「たーいむ!!」」


「はいはい」


アリス、フィリッカ、ドゥーロに促されてスキルで魔物の鑑定を行う。


『マッハバード

地上を音速で走る抜ける鳥の魔物、その肉は非常に美味でよく走るマッハバードほど美味しい肉となる』


地上で音速を出すなよ。


「食用だ」


「「「やったー!」」」


今回の魔物も食用だった、というのもこれまで狩った魔物はすべて食用にできる魔物でどれも美味な食材だったからだ。狩った魔物をしめた後は宝物庫に入れて保存する。


「いやー実食が楽しみですなー」


「たのしみー」


「今度は鳥か、焼き鳥かそれともフライドチキンにするか」


フィリッカ達は味を気にして、アリスは調理法の思索に耽っている、ダンジョンの中でのんきなもんだ。


「ああ、そうだ、お疲れレン」


「きききき。恐縮です領主様!」


俺が声をかけるとレンは挙動不審と思うくらい動揺しながら答える、なんでここまでキョドるかな、操られていたとはいえ前はもっと堂々としていたはずだけど。


 ふたたび進軍を再開してその後も散発的に魔物を狩り進んでいくと先行していたスケルトンのトラスーが歩みを止める。


「どうした?」


「罠です」


トラスーは膝を付いて地面をチェックし始める、彼は生前は腕の良いスカウトだったが戦争で斥候部隊に組み込まれ敵の待ち伏せを受けて戦死してしまったらしい、今回のダンジョン探索に選出されたのは彼の自主的な志願でもあったそうだ。

スカウトとしてダンジョンで死ぬならともかく戦場で死んだのは彼なりに未練が残ったらしい。


「私が先行して歩きますので皆さんその後を付いてきてください」


トラスーは自分の足に墨を塗り通路に足を踏み入れる、その瞬間彼の頭蓋骨に矢が刺さる。


「「「「「・・・・・・」」」」」


スタスタ


何事も無かったかの様に進みさらに矢を受けるトラスー、通路を進んで十字路まで辿り着くと彼は言った。


「皆さん、私の足跡を目印にして進んでください」


「「「「「進めるか!!」」」」」


彼の頭には5本の矢が刺さっていた、誰が進むか。


「安心してください、私が嵌ったのはわざとです、その道ならばもう同じ罠が発動することはありません」


なるほど、罠が発動してしまえばもう問題ないと言いたい訳か、だが・・・


「・・・・・・なんで誰も行かないの?」


誰一人動こうとしない状況に耐えかねてフィリッカが口を開く。


「いや、だってなぁ?」


「そ、そうですね」


「ええと」


皆あえて口にせず動かない、そりゃ罠の発動した場所に足を踏み入れたい奴なんて居ないよなぁ。


「ク、クラフタ君、君男の子なんだから!」


「さんせー」


「お前等・・・・・・」


とはいえ女の子を罠に嵌らるわけにもいかんしなぁ、仕方ない。


「ブロックアーム!」


両肩の魔法の手を起動させてトラスーの歩いた場所を鉄の指でつつく。


「おお、あったま良い!!」


その瞬間、カキンと甲高い音を立てて魔法の手に矢が当たる。


「「「「「・・・・・・」」」」」


「これはビックリ、補充式の罠でしたか」


こっちがビックリである、思いっきり罠が作動しとるじゃないか。


「どうするの?」


「そうだなー」


ブロックアームを宙に浮かして通路の隅々まで移動させる、それを確認したらトラスーの傍に移動させ地面をつつかせる。


「罠は無いか、じゃ、全員運ぶからな」


「え?ああ、そう言う事」


フィリッカは理解したようだ、何だかんだ言ってコイツ察しは良いよな。


俺はブロックアームで女の子達を宙に持ち上げ移動させる、空中を移動する分には罠は発動しないのは確認済みである。

こうして俺は全員を移動させた。


「お見事ですな領主様、まさかあのような方法で罠を回避されるとは」


「・・・・・・」


むしろお前が本当にスカウトだったのかと問いただしたい気持ちでいっぱいなんだが。


「マエスタ侯爵、ここで口論をしても不毛です、進みましょう」


不穏な空気を察したレノンが進軍を提案してくる、確かにこんな所で口論しても意味が無い上に騒ぎを聞きつけた魔物がやってくる可能性が高い。


「仕方ない、行くか」



「お腹空いた」


1時間ほどダンジョンを潜った所でフィリッカが我侭を言い出した。


「お前、朝思いっきり食べたろ」


「だってお腹空いたんだもの」


「おなかすいたー」


ほらドゥーロまで真似しだした、間食をするとお昼が食べれなくなるぞ。


「ご安心を、このような事もあろうかとハンバーガーと言う物を買っておきました」


「でかしたわレノン!」


「ドゥーロも食べるー」


「好きな物を食べなさい」


もしかしてレノンって子供好きなのか? 何か今、えらいドゥーロに対して甘い感じがしたんだが。


「何があるの?」


「コカトリスバーガーセットと期間限定のとろろスライムバーガーセット、それに・・・」


「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!!今すごい聞き捨てならん名前の食い物が出たぞ、スライムっつったか!?」


「はい、とろろスライムと言う森林地帯に生息するスライムです、やや肌色のかかった白いスライムで芋や魚料理にかけて食べます、マエスタ侯爵はご存知ありませんか?」


「いや無いけど、って言うかとろろって」


「元はホワイトスライムと言う薬草を好んで食べるスライムでして、田舎の村では薬草を探す時はこのスライムの居る場所を探せば良いといわれるほどでした。

とはいえスライム、本来食用では無く大した驚異でも無いため薬草を探す以外では無視されていました。

 ですがある日薬草を求めてニホンと言う国から来た旅人がこれだけ薬草を体内に取り込むのだからきっとこのスライムも体に良いはずだと言って煮て食べたのです。

 意外にもホワイトスライムは美味でそれを知った村の人々もホワイトスライムを調理して食べるようになりました。

旅人のスライムを食べるという蛮勇を称え、ホワイトスライムはその旅人の故郷にあるとろろと言う食べ物の味にそっくりだと言う事からとろろスライムと名付けられ、村ではスライム牧場を開き品種改良を重ね様々な食用スライムとスライム料理が生まれました。

 またその過程からペット用スライム、レース用スライム、観賞用スライムなど様々なスライムの品種が生まれることとなったのです」


 今蛮勇っつったな。

しかし何だそのスライムバブルは、観賞用とかクラゲかよ。


「スライムのレースって遅くないか?」


「いえ、競争用に飼育されたスライムは馬を超える速度で走ります、まさに空を飛ぶ鳥の如きな速さです」


何その恐怖映像、そんなスライムに追われたら恐怖で漏らす自信あるぞ。


「それでこのスライムバーガーってのは食用スライムな訳か」


「はい、この衣と言う物にとろろスライムと芋を練った物を入れて脂で揚げているそうです、美味いと話題なので買っておきました」


 いやいやいやいや、オーナーの俺はそんなモン考案してないし聞いてもいないぞ。確かに現場の裁量で新商品を作っても良いとは言ったがスライム料理って・・・


「これなにー?」


ドゥーロは別のバーガーセットが気になった様だ。

また変なモンじゃないだろうな?


「それはフェニックスバーガーだな」


「待てぇぇぇぇぇ!!」


フェニックス!?それってアレか?炎の中から再生する不死の鳥って言うアレか?


「どうしましたマエスタ侯爵?」


「い、いや、この国ではフェニックスってどういう扱いなんだ?」


「歩く焼き鳥ですが」


 ジーザス

 俺の知っているフェニックスとこの世界のフェニックスは違う物の様だ。


「フェニックスって便利よね、焼かなくても焼き鳥を食べられるんだから」


「ええ、狩人たちの間では天然の屋台と言われ重宝されています」


 もう良い、これ以上ファンタジーな夢を壊さないで頂きたい。

 そういえばこの世界でもっとも貴い魔物の一匹にも同じような名前の生き物が居たがまさかそいつまで食用扱いじゃないよな?・・・聞くのが怖い・・・



食事を終えた俺達はさらに下の階層に潜って行く。

途中新たな食用魔物が現れるが俺達の敵では無かった。

レンの能力は既に知っている通り相当なモノでさらに不死であるトラスーはその体を活用し確実に魔物を倒していた。


「ふふふ、私にあてる事が出来ますか? 痛っ」


 当たっとるやん、とはいえ実際トラスーの骨回避は凄まじい、魔法だろうが物理だろうが骨の隙間をすり抜けて後ろにいる俺達に流れ弾が飛んでくるのだ。

 良い迷惑である。


 しかもダメージを受けても不死なのでじきに回復してしまうので実質ノーダメージだ、しいて言うなら犬型の魔物が相性的に苦手の様だ。


 そしてフィリッカの護衛としてやって来たレノンは以前よりさらに研ぎ澄まされた剣技で魔物を屠っていく。


「なんかかなり強くなってね?」


「当然よ、レノンは君に負けてから猛特訓を積んだんだから、君に作り直してもらった剣を使いこなすって大張り切りで修行してたのよ」


なるほど、それでこの剣の冴えと言うわけか。

そんなレノンは自分よりも数倍大きい魔物と戦っていた、流石にこれは分が悪いな、援護をしたほうがよさそうだ。


「大丈夫よ」


 フィリッカはなんと言う事も無いと俺を制止する、だがレノンは目の前の巨大な魔物の攻撃に翻弄されている、大きいというのはそれだけで驚異だ、何しろ間合いが違う、さらに大きい所為で有効打を与えられていない、頭を狙おうとしても攻撃が届かないのだ。

だが


「ゼロブレイク!!」


 レノンの発した叫びと共に黒い魔力塊がレノンの剣『ザ・シーズン』から飛び出し巨大な魔物の頭部に炸裂、爆散し魔物は崩れ落ちた。

 何だ今の?


「ちょっとレノンさん今のは・・・」


「これはマエスタ侯爵、見ていただけましたか! マエスタ侯爵に打ち直して頂いたこのザ・シーズン、見事使いこなしております!!」


「ええと、今放った黒い塊って」


「はい!マエスタ侯爵から教えて頂いた4種の攻撃魔法を一度に放つ事で発動する奥義の事ですね、まさか4つの魔法を同時に放つ事であれほど強力な魔法を撃てるようになるとは、さすがはマエスタ侯爵です!」


 いや知らん、そんな機能付けてないぞ、4つの魔法を同時に放つとか漫画の必殺技かよ。

 昔同じような事して対消滅で凄い力を発揮しないか試してみたけどあの時は結局打ち消しあうだけで何も起きなかったんだよな。

いや、もしかしたらマジックアイテムの機能で発動させたから発動したのかもしれない、魔法プログラムで均一な威力を出るようにすれば人間が意識して均一にするよりもよほど正確に同じ威力の魔法を放つことが出来るのかもしれない。

今度実験してみよ。


 レン達だけでなくレノンまでもパワーアップしていて驚いたが俺が本当に度肝を抜かれるのはこれからだった。


「ブリザードプリズン!!」


 通路を埋め尽くさんばかりの小型の魔物の群れが氷の嵐に追い詰められる。

嵐は魔物達の周りに集まって行きドンドン小さくなって行き最後には魔物達を氷の塊に閉じ込めてしまった。


「見てくださいましたかクラフタ様!」


 魔物達をたった一度の魔法で一掃したアルマはそう言って俺に感想を求めてくる。


そう、アルマがである。


「う、うん、凄いじゃないか・・・」


「えへへー」


 俺に褒められて嬉しそうにはにかむアルマ、こんなに愛らしい少女がつい先ほどまで大魔法で魔物を駆逐していたのである。

 アルマの使った魔法は氷の上級魔法、俺の使う初級魔法とは訳が違う。

おそらく師匠達に習ったのだろう、アルマの魔法は熟練の魔法使いもかくやと言うほどの恐ろしい力を発揮していたのだ。


「クラフタ様、魔物を凍り漬けにしましたので解凍すれば美味しくいただけますよ」


「素晴らしい気遣いだアルマ」


「くぅ・・・ん・・・」


 オレに頭を撫でられ子犬のように目を細めて嬉しそうにするアルマ。

・・・・・・正直ピンチです、嫁の攻撃力が夫を超えています。

 オレの最大攻撃力はスキル頼りの切断くらいであって単純な魔法の錬度ではとてもアルマの魔法には勝てない、さらに武術剣術ではレンとレノンが居る、不死身度で言えばそこのスケルトンの方が不死身っぽい。

 拙い、非常に拙い。

 このままでは領主にして夫であるオレの威厳というモノが下落の一方である、至急対策を立てねばならない。



「そろそろ引き上げるか」


 小部屋で遭遇したミミックのモツ鍋を食べ終った所で俺は帰還を提案する。


「ええー、まだ最下層まで着いてないわよ」


「もっと食べたい」


 趣旨を間違えんなよお前等。


「お前等はこのダンジョンの魔物が食えるかを知りたかったんだろ?

で、予想通り食える魔物ばっかりだったんだから無理して潜る必要も無いだろ。

アリスも捕まえた魔物達を調理する方法が気になってるんだろうし」


「え?う、うん。このダンジョン、食材の種類が豊富だから結構色々な料理が作れそうだし、一端店に置くメニューを絞りたい所ね」


「ごはん作るの?」


「そうよ」


 狙い通りドゥーロはアリスの試作料理を食べる事に意識が向いたようだ。

フィリッカもレノンを誘導すれば無理に進もうとは言わないだろう。


「無理して進んでも危険なだけだ、余力がある内に戻って次の探索に備えて準備をするべきだろう」


「フィリッカ様、私も同感です、ダンジョンでの野宿は魔物の襲撃を受ける危険があります、ここは一時帰還をするべきでしょう」


「・・・・・・わかったわよ」


 なんとかフィリッカも説得できたので皆の気が変わらないうちに地上に戻ろう。

そして次にダンジョンに潜る時までに夫として妻に威厳を見せれる様に新装備&新魔法を披露しなければ。


 攻撃力不足の俺を補う高火力の魔法を開発して皆の度肝を抜いてやる。

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