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特訓と黒い襲撃者

壁を殴り続けるパル師匠と別れた俺は当初の目的であった3傑のサンタ、いや老人達を尋ねた。


「おや領主様、今日は修行の日ではないのでは?」


俺の姿を見る事無く声をかけてきたのは関節のガダさんだ、後ろから来たのに何で分かったんだ?


「領主様の気配は独特ですからな」


どうやら俺はわかりやすいみたいだ。


「普通の人間とは違う気配、ですがそれ以外の存在ではない、非常に面白い気配をしております」


肉体が半不死になったことを言っているんだろうな。


「今日は業務に余裕が出来たのでその時間を稽古に当てたいと思って伺ったんですよ」


「ソレは結構、では僭越ながらこの私がお相手させていただきましょう」


結果は惨敗だった、何というか動きはそんなに早くないのだが体が触れた瞬間、ぬるりと言わんばかりに滑らかに動いて関節を決められた。

解明スキルのお陰で判ったのだがガダさんはほとんど動いていなかった、

こちらの動きに合わせて俺の肌を滑らせるように当てていただけだったのだ。

ただその手が肘に来た瞬間、わざと己の体のバランスを崩し自重で腕を支点に独楽のように転がりながら俺の腕を捻り痛みで俺の体がバランスを崩すにあわせ地面に組み伏せられた。

漫画のような話だが実際に起きたのだ、ガダさんは一切力を入れていなかった。


これは凄い、正直舐めていた。

スピードとパワーで攻めれば、捕まれなければイケると思っていたのだが、これは完敗だ。

その後数回手合わせをして貰ってから門下生との模擬戦を行う。

試しにガダさんのやり方を真似てみたら学習スキルの効果か面白いくらい技が決まったので最後にまたガダさんに相手をして貰った。


だが慢心はいけない、相手はその技の本家であり時間と言う名の武器は強靭すぎた。

つまりコテンパンにされたんだよ。


「領主様は覚えが早いですなー、これは50年後にはやられてしまうかもしれませんて」


どれだけ生きる気だよ。



鍛錬に励んでいたら空も薄暗くなってきたのでそろそろ帰ることにしよう。

俺は鍛錬を兼ねて走りながら帰る、夕方の街道を子供が一人走るなんて危険な事この上ないが、最近は仕官希望の貴族の三男や冒険者を街道の安全を守るための巡回員に雇ったので大分危険が減っている。

街道を移動中に襲われたと言う報告がほとんど無いのがその証拠だ。


だが油断はいけない、走っているうちに日は落ち、辺りは真っ暗になってしまった。 

そしてその瞬間を待っていたといわんばかりにソイツは襲い掛かってきた。


モワァァァァァァァ!!


夜の静寂を引き裂く凄まじい音量の雄叫びが辺りを支配する。

なんか間抜けな雄叫びだな。

オレののんきな感想を打ち砕かんと何者かが襲い掛かってくる。

そいつは真っ黒な体をしていて全容はわからない、ただ一ついえるのは巨大だと言うこと。

体が黒くて全体像がつかめないため距離感が掴みにくい、大きく跳躍して相手の突進を回避した後、背後に回って紅弾を叩き込む。


数発の紅弾が命中する、しかし紅弾が命中してもまったくダメージを受けた印象が無い、体が大きいから紅弾のダメージじゃ削りきれないのか?


紅弾が聞かないのなら直接攻撃だ、切断スキルで一刀両断にしてやる。

大星剣メテオラに魔力を注ぎ大量の星を周囲に満たす。


「食らえ!!」


魔力で作り出した星の中のひとつに切断スキルをかけて星を振り下ろす、

これなら本命が判らないだろう!!

だがソイツは自ら星に突っ込んで行く。

そこはもっとも星の配置が一番厚く、そして切断スキルをかけた星の無い場所だった。

それでもこれだけの星だ、食らえば唯じゃすまない、終わりだ。


少々苦戦しかけたがこれで終わり、街道の平和は守られた。

そう思った俺だったがなんと黒い皮膚に当たった瞬間星が砕けた。

どういう事だ?

砕けた星はそのまま黒い皮膚に吸い込まれる。

魔力を喰っているのか


どうやらコイツには肉弾戦以外通用しないようだ。

面倒だが直接切るしかないか。

これだけの力を持った魔獣の存在は危険だ、この場で始末する!!

俺は大星剣メテオラの中に収められた108個スキルを検索する。


しかしそうはさせまいと黒い巨体がこちらに向かって突進してくる、空中機動スキルで空を飛んで回避する。


戦闘中にスキルを検索するのは危険だな、学習スキルが面白くて使えるスキルをチェックするのがおろそかになっていたようだ。


ならばこのまま高速で動き回って死角から攻撃だ。

そう思った瞬間そいつは跳んだ、それはもう弾かれたように一直線にこちらに向かって跳んで来た。

黒い巨体がオレに近づいた瞬間赤い線が真横に走り真っ赤な楕円が生まれる。

その中には白い岩が弧を描くように並んでいる。

いや違う、これは歯だ!こいつの口だ!!

人間のような口がオレを飲み込もうと飛び掛ってきたのだ。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


オレは慌てて回避する、怖ぁ!! 

その後もそいつは俺を噛み砕こうと巨体をぴょんぴょんと撥ねて襲い掛かってくる、動き過ぎだろコイツ蚤か!!

だがその動きは学習した、学習スキルが相手の行動パターンを俺に学ばせ、相手が飛んだ瞬間体を10m横に移動して回避しつつ、

横っ面に大聖剣メテオラを突き刺す、後は相手が自分の自重で自動的に切り裂いてくれる。

こちらは弾き飛ばされないように空中で踏ん張るだけだ。


相手が通り過ぎた後大きな地響きが起こる、痛みに耐えかねてバランスを崩したみたいだ。


さすがに一度切った程度ではこの巨体は沈まない、もっと切り刻むか魔力に頼らないスキルで一気に倒さないと。

俺がどうやって攻略するか考えていると黒いのの様子がおかしいことに気付いた。


モェェェェェェェェン


そいつは間の抜けた雄叫びを響かせたあと突然ジャンプを始める、

こちらに襲い掛かってくるわけでもなし、正直言ってキモイ、なにしろ体が真っ黒で判りづらい所為で巨大な口がピョンピョン跳ねているように見えるからだ。


俺が警戒しているとそいつは体を少しづつ回しながら数回跳んだ後ぴたりと動きを止めた。


なんだ?


次の瞬間凄まじい速度で走り出しあっという間に姿が見えなくなった。


「・・・・・・はっ!!」


ア、アイツ!!逃げよったぁ!!!

まさかの逃亡!余りにも珍妙な光景だったので反応が遅れてしまった。


「一体なんだったんだ今のは・・・」


変なモノに出会って疲れた俺はそのまま飛んで帰った。



「と言うことがあったんだ、皆も気をつけてくれ」


さっきであった変な魔獣のことを領主の館の皆に伝えて注意喚起をする。

だが皆の反応はオレの思ったものとは違った。


「お館様が出会ったのは・・・まさか」


「間違いない、ヤツだ」


「今年もこの日が来たか」


「行かねば」


「人を集めろ!!ヤツを狩るぞ!!!」


この反応、皆はあの黒いヤツの正体を知っているようだ。


「アイツは一体何も・・・」


「今宵はナス狩りだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「「「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」」



いやちょっと待て

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