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新しい力

クリスマスが終わって街は平穏を取り戻す。

昨日の今日なので今日は一日まったりと休みたい所だが年末なので皆忙しい。


「お館様のお掃除ゴーレムのお陰で大きな掃除の必要はありませんが、細かな所は我々人間の手が必要です。

皆さん!拭き忘れの無いように注意してください!」


ラヴィリアが館のメイド達に指令を出す、流石に王女付きの侍女だけあって部下の扱いが堂に入っている。

屋敷のことはラヴィリアに一任して問題ないだろう。


「ご主人様、今年中にこちらの書類のチェックをお願いいたします」


ミヤは平常運転だ、書類の中には先日までのクリスマスの収支報告の一時報告もある、軽く読んでみたがなかなかの利益率だ。

なにしろホテルは地面から石と土で作ったからコストは0、風呂を沸かすための装置に使う火の属性石、

それに寝具などのこまごまとした物の費用はあるがこれは宿泊客が町で飲み食いした金額で十分利益となっている。

サンタのプレゼントを差し引いても総合的に見て十分黒字だ。


今後も定期的にイベントを行っていこう。

料理大会や格闘大会もいいかもしれない、この街はB級グルメの町として認知されてきているし、

サラメー村に知られざる達人達が居たお陰で武術家達がやってくるようになった。


そういえばサラメー村だが、あそこはもともと引退した戦士達が集まってひっそりと老後を武の研鑽に勤めるために作り上げた村だったらしい。

それ故に意外な有名人が何人も住んでいた、みなその道では名を馳せた猛者らしい。

お陰で弟子入り希望の若者が多くなり村は町と言える規模にまで発展していた。

その際ゴーレムを使って家の建設を手伝おうかと提案したのだが、村の掟で自分の家は自分で作る事が義務付けられているといわれ断られた。

どうやらソレも修行の一環らしい。


政務の合間に俺も彼等に修行をつけてもらうことにしたのだが、


「領主様は相当優れた肉体を持っておりますな、ですが人を投げるのには最低限の勢いと対応力さえあれば事足ります。

相手の姿勢を崩して、ほい」


言われて俺は吹き飛んだ。


「己と敵の姿勢を支配しなさい、さすればどのような敵も煙を吹く様に飛んでゆきますぞ」


なんというか言いたい事は分かるがやられた事に理解が追いつかない、これが達人の技と言うものか。

ちなみに今稽古を付けてくれたのはラッグさん、先日最も多くのチンピラを用水路に叩き込んだサンタだ。

彼と残り二人がサラメー村の三傑といわれている。

曰く、投げのラッグ、打撃のムージ、関節のガダと呼ばれそれぞれがその道を究めた頂点とされているらしい。


訓練を終えて領主の館に帰るとミヤが出迎えてくれる。


「ご主人様、お客様がお見えです」


「客?」


「はい、ご主人様もご存知の方です


ミヤから客の名を聞かされて俺は相当驚いた、その人物は自らの立場ゆえに気軽に動くことが出来ないはずだからだ。

待たせてもいけないのでささっと濡れたタオルで体を拭いてから服を着替え応接室に向かう。


「お待たせしました」


「いえ、大して待っていないわよマエスタ侯爵殿」


俺を待っていた客はイザー=アザー、シャトリアに属する古代魔法文明の生き残りだった。

先の事件でその立場は非常に微妙なものになっている筈なのだが。


「ああ、気にしなくて良いわ、あの国なら先日袂を分かったからね。今はフリーよ」


さらっと言い切った。


「暫くこの町に厄介になるわ」



「面倒ごとだけは起こさないで下さいね」


「分かっているわ、所で今日やってきたのは挨拶だけではなくて、君に頼みたいことがあったからなの」


俺に頼みたいこと?

正直な所、この人の実力なら俺がいない方がスムーズに行きそうなんだが。


「いやいや、この件に関しては本当に君の力が必要なのよ」


イザーはこちらを見つめながら言った。


「私のスキルを返してくれないかな?」


「スキルを返す?」


どういう事だ?この人は俺が神器でスキルを奪ったことを知らないのか?

俺が怪訝な顔をしているとイザーも怪訝な顔をしながら俺に質問をしてくる。


「君は神器で私のスキルを回収したのでしょう?」


「えーと?回収?」


消滅させたことか?


「もしかして君は神器の力を知らないの?」


「神器で切るとスキルが無くなることは知っていますが」


俺の返答に対してイザーは呆れたようにため息を吐いてから納得したように頷いた。


「やっぱり知らないようね、神器を継承したときに先代から何も言われなかったの?」


「偶然手に入れた物なので」


「ふぅ、良いわ、なら取引よ。君は私のスキルを返してくれる?

代わりに私は君に神器の使い方を教えてあげる」


ふむ、神器の使い方を教えてもらえるのはありがたい、

ぶっちゃけ取説無しはきついからな、星の生成については剣を正式に受け取ったときに伝え聞いたけど、それも当時の当時の所有者がこんな使い方をしていたって言う伝聞だったからなぁ。


「分かりましたその条件でお受けしましょう」


「ありがと、それじゃあ神器を私の肌に接触させて、切る必要は無いわ」


イザーの言葉に従い大星剣メテオラの刃先をイザーの手の甲に当てる。


「いい、神器の中に回収されたスキルがあるわ、何があるのか神器に聞きなさい。

あなたが神器に認められた使い手なら神器が教えてくれるわ」


イザーの言葉に従い神器に問いかける、その途端頭の中にリストのような物が思い浮かぶ、そこに浮かんだスキルの数は実に100を超えていた。

凄い数のスキルだ。


「スキルの確認が出来たら千里眼のスキルを私に授けるようにイメージするの」


リストの中にあった千里眼のスキルをイザーに返却するように大聖剣メテオラに命じる。

その瞬間、リストの中から千里眼のスキルが無くなった。


「ん、成功したみたいね」


「こんな事出来たんですね」


「これが神器の基本スキルよ、神器には共通能力であるスキルの蒐集と管理、そして他者にスキルを授ける能力があるわ、そして神器ごとの個別能力があるわ。

こっちはちゃんと使えているみたいね」


星の能力のこと。


「個別能力は強力な物が多いから相手をするときは気をつけてね」


「はい」


だがオレはそんなことよりも大量のスキルが気になっていた。

コイツをオレに突っ込めば凄いことになるんじゃないだろうか?


「言っておくけどあんまりたくさんスキルを持つのは感心しないわ」


「え?」


こちらの心を読んだかのようにイザーが釘を指してくる。


「人間がスキルを多く持つと肉体に負担がかかるわ、多くても3つにしておきなさい」


「じゃあ、スキルを奪う系統のスキル使いって」


「近い将来肉体に悪影響を及ぼすでしょうね」


こ、怖えー!

じゃあカインとか将来命の危険があったって言うことか。


「だって元々神様の授けてくれた力だもの、人知を超えて居るのは当然だわ、

他人の授かったそれを無理やり奪えば絶対にその報いを受けていたことでしょうね、それに貴方はそんなことしなくても良いのよ」


「それはどういう?」


「神器の継承者は念じれば神器に収められたスキルを使用できるわ」


「そんな機能があったんですか!?」


「ええ、それこそが神器の真の力ね、スキルを奪えば奪うほど強くなる」


なるほど、危険を冒してまで自分に突っ込むくらいなら今もっているスキルも神器に移したほうが良いかも知れないな、あとは神器が持ち込めない時を考えてスキルを入れ替えれば良いか。

これは面白くなってきた、ゲームで言うスキル入れ替えのようなものだな。


それにこれだけのスキルだ、使うのが楽しみだな。


「他に聞きたいことはある?」


折角だから聞いておこうかな。


「スキルが統合したり別のスキルになることはありますか?」


これまでオレの身に起きたことはこの世界の人間にとってはどうなのだろうか?

オレだけなのかそれとも誰でも起きるのか?


「極まれにだけどあるわ、逆に神器を使って上位スキルを下位のスキルに分割して分け与える事もできる。

スキルが統合するのはね、もともとすべては創造神である透明な石の授けた力だからなのよ。

言ってみればひとつのパズルをピースごとに他者に分けていたのが回収された事でひとつの固まりになる感じかしら。

そして別のスキルに変化するのは、力の引き出し方が変わるからね。

食事を補助するための「食器」であるナイフを投げつければ投てき用の「武器」になるみたいな感じね」


そっかースキルって結構自由度が高いんだな。

ともかくこれでオレの戦力が大幅に増強される事になったわけだ。


「ところでその千里眼スキルで何をするつもりなんです?

犯罪行為は困りますよ」


「そんな低俗なことには使わないわ!

このスキルはね!無くした物を探すのにすっごく便利なんだから!!」


予想以上にしょぼい使用法だった。

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