オカシナセカイ
「さ、コレでこの国は貴方のモノです、どんな事でも貴方の思うままに」
玉座に座る俺にヴィシャーナが囁く。
甘い匂いが鼻孔をくすぐると彼女の言うとおりだと思えてきた。
「どんな事でも?」
「ええ、どんな事でも、例えば世界を征服する事だって、いえ、寧ろ征服してしまえば世界は平和になりますよ」
「まずは国の名を改めましょう、悪い国の存在は捨てて、新しい国を作ります。そして貴方の存在を世界に知らしめるのです」
『ヴィシャーナの言う通りにシャトリア王国は名を改めクシナンと改めた』
「次は貴方の力を見せ付けましょう」
『ヴィシャーナの言う通りに通信機を初めとした古代の発明やストームドラゴンの宝を交渉材料にして周辺各国にこの国の存在を認めさせた』
「敵対する者達を倒しましょう、ほら世界が貴方に跪いていますよ」
『ヴィシャーナの言う通りに敵対する国家を制圧して俺は唯一の王になった』
「どうですか?私の言うとおりにしたお陰で全てがあなたのモノになりましたよ」
『そうだ全てヴィシャーナのお陰だ』
「これからも私が貴方の力になってあげます、私だけは貴方の傍に居ます」
私だけ?
<大好きです、愛しています、一生貴方の傍にいます>
それはアルマの告白、俺の心が折れた時に、俺が全てを投げ出しそうになった時に踏みとどまらせた言葉。
「アルマ……」
「え?」
「アルマは……?」
「え? え? 何で……はっ! アルマ姫はお亡くなりになりました、病気だそうです」
「そんな馬鹿な!! アルマの病気は完治したはずだ!!」
「ええと、再発! そう再発したんです、あなたがシャトリアに言った直後に病気が再発してあっという間だったそうです! 貴方を呼ひ戻す暇も無いほどに」
「……嘘だ……」
そんなはずは無い、確かに治ったはずだ。
「事実です、アルマ姫は死にました」
ヴィシャーナから甘い匂いがして俺はそれが真実だと理解……
「できるかぁ!!」
俺は強く叫んだ。
◆
「キャア!!」
「っ!」
意識が覚醒する、ここは玉座の間だ。
目の前には驚いたヴィシャーナがいる、手には変なモノを持って俺の前にかざしていた。
「何だ? それは?」
「え?い、いえ! クラフタ様がうなされていましたので香を焚いて安らいで貰おうかと思ったのです」
ああ、それはお香を入れる容器か。
「御目が覚めたようですので私はコレで」
そそくさと帰っていくヴィシャーナ。
そうだ、ここはシャトリアの玉座、何故か俺はこの国の王の座に治まってしまっていた。
「いったいなんでこんな事に?」
俺の知らない所で進んでいる事態に、俺はまだ気がついていなかった。




