救助活動と言う名の売名行為
バキュラーゼの戦士達の正体は中の人ではなく鎧のほうだった。
けどまぁそれは一端置いといてと、鎧を全部剥いで隔離した後カラフルタイツ軍団ケレメンティアの皆さんに降伏勧告を行い武装を解除させた、
彼等はあっさりと投降してきた、出張先で勤務時間外なので危険行為手当ての出ないことはしないとのことだった。
素晴らしいお役所仕事です、と言うよりサラリーマン?
投降してきたので適当な服を与えてタイツは没収である、こっそり驚いたことに変身アイテムなどと言う洒落た物は存在していなかった。
彼等は戦闘前に全身タイツを着て戦場に向かうのだ、あの格好で電車に乗るのかな?
最後に巨大ロボットなんだが最初に倒したギラードにはコクピットが無かった、
つまり無人機だ、そこで倒したギラーガの胴体を力ずくで分解をすると地球で言うパソコンのようなものが見つかった。
恐らくは修理工場の無い場所で使用する際のメンテ用のパソコンなんだろう、
そんなものまで内臓されているのだから長期間孤立した戦場で戦うことを想定して設計されたのかもしれない。
コイツはもう壊れていて動かないので今動いているギラードでぶっつけ本番と行こうか。
落とし穴を掘って埋めてあるギラードの腹まで掘り進み無理やりお腹を開いてメンテ用パソコンを操作する。
だがパソコンに表示された文字はさっぱり分からない未知の言語だった。
だから俺はこう言ったよ。
「中級言語読解魔法!!」
久々に出番の翻訳魔法である、別に叫ば無くても使えるけどね。
で、ディスプレイにかかれている文字が分かる様になったわけだが、
このパソコンはプログラムを簡単に変更するタッチパネルだった。
ゲームでプレイヤーキャラを操作するのがめんどくさい時にコンピュータの自動戦闘モードを起動する感じだ。
現在のモードは積極的に制圧戦闘をするようにモード選択がされている、無人機に侵略活動をさせているのかな?
俺はモードを非戦闘用の作業モードに変更したあと、詳細設定を細かく変更して人を襲わないようにする。
気になったのは設定の保存履歴だ、最後に操作されたのが1000年以上昔だったということ。
1000年も操作する人間がいなかったということはつまりこのロボット達の世界に人間は残っていないのではないのだろうか?
捕虜が暴れないようにする処置が完了したので街の状況を確認する。
異世界人が暴れたことでシャトリアの王都は廃墟も同然になっていた。
未だに怪我人は多いし瓦礫に埋まっている人もいるらしい。
戦闘が完全に終了した事で魔力を温存する必要が無くなったので俺は適当にその場にいたアンデッドとシャトリアの騎士に命じて王城のゴーレムコアをありったけ持ってこさせて救助用のゴーレムを作成した。
ちなみに薬の素材やゴーレムコアを勝手に持ち出せているのには理由があった。
この国の貴族の大半が王城を不在にしていたからだ。
王族をはじめ上級の貴族と利に聡い中級貴族は異世界からの襲撃が始まった途端に真っ先に逃げ出したらしい。
残っていたのは状況をまったく理解できない中級と下級の貴族だけであった。
なので王都を救った俺が強引に救助活動の指揮権を発動し、元々この国の貴族だったルジャ伯爵を初めとしたアンデッド貴族の後押しで物資を放出させた。
どうやら彼等は異世界人については完全に蚊帳の外に追いやられていたらしく、
救助活動に協力した後の利益についてそれとなくほのめかしたら進んで協力してくれた。
ついでなので彼等の中の情報通に現在シャトリアの王族が何処にいるか調べて貰った、特に王位継承権のある姫を重点的に。
後は魔法少女数人とミヤに命じて転移技術を初めとした有用な技術の資料がないか調べさせた。
これを発見、解析しなければ再度の襲撃の危険が高いからだ。
何としてもこれを最後に異世界からの侵入を止めたい。
だがその前に被災者の救助が先決だ。
ゴーレムの指揮権をアンデッド達に預けてオレも救助に参加する。
瓦礫をゴーレムに掘り起こさせて埋まっていた人を救出、
ハイポーションで怪我を治療していく。
怪我の直った人達で精神的ショックの弱い人達には食糧の配給などの手伝いをさせる。
いきなり侵略されたショックで彼等も混乱している、なにしろ空から巨人が降ってきて街を襲いだしたのだ、そりゃ驚くだろう。
だから仕事を与えることで気持ちにクッションを与える、人間やる事があったほうがネガティブな思考に沈まなくなるからだ。
それにまだ油断は出来ない、街の瓦礫を処理している時にあからさまに怪しいモノが幾つも見つかったからだ。
その一つが人を意のままに操る薬の原料であるサーメンの花。
住民によるとこの花は街の景観を良くする為にといたる所に植えられているらしい。
そして幾つもの不信な魔法具、スキルで鑑定してみた所、驚くべき事実が明らかになった。
『心透の送音具
精神防壁を無効化して自分の意思を相手に響かせる魔法具の拡張装備。
等間隔に配置することで範囲内の複数の人間を強力に洗脳する事が出来る』
『送音の筒
遠くまで音を響かせる魔法具。
音に込められた魔力も届けることができる』
この道具達は街のいたる所に配置されていた、明らかに悪意を持った人間の仕業だ。
もしかしたら魔法少女達の様にこの魔法具で国民を操るつもりだったのか?
幾つもの疑念を抱きながら俺は救助活動をしつつ怪しい魔法具を排除していった。
その時の俺はさきほどまで鳴っていた不快な音が消えて消えていた事に気付かなかった。
こうして夜通しの救助活動は翌日の昼過ぎまで続き、
そして現場で指揮を出しつつも自ら救助活動を行ったオレとルジャ伯爵は必然的に英雄として人々に受け入れられたのだった。




