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わりと切実な驚異

「ふはははは!我が名はルジャ=アージャ伯爵なりぃ!

我が故郷を襲う侵略者共よ!!恐れおののくが良い!!!」


「ヒャッハー!!侵略者狩りだー!!」

「敵は消毒だー!!!」


妙にテンションの上がったルジャ伯爵とその部下達がノリノリで俺達を包囲していた異世界人たちに不意打ちを食らわせる。


『戦っている内にテンションが上がってきてイージガン平原で活躍できなかった無念とストレスをこの戦場で昇華させているようです』


あー、それは仕方がない、ミヤの説明で納得した俺はそっと見守ることにする。


「ルジャ伯爵!こっちの女の子達は投降してきた捕虜です、攻撃しないでください!!」


「承知したマエスタ侯爵!!それだけの娘達を虜にするとはやはり王の器であるな!」


うん?何か変な誤解を招いているぞ。


「くっ、まさか伏兵がいたとは!ええい!他の連中は何をやっていたんだ!」


「隊長、別働隊はほぼ全滅です!!」


「なにぃ!!」


マジか、ルジャ伯爵達意外と強い?


『ルジャ伯爵と部下の方々の戦闘をモニターしていましたがかなりの実力です、スキルや魔法もですが基礎的な戦闘技術が高いです」


なんで戦死したんだろう?


『数の暴力が原因かと推測されます』


ああ、幾ら強くても数を揃えて時間をかけて攻略されたのか、物量作戦の基本だな。

ともかくこれで目の前の敵に専念できる、俺はリーダーと思しき青い鏡鎧の男に紅弾スキルを発射する。


だが紅弾は敵の攻撃の一振りでかき消されてしまう。

障壁無効スキルの紅弾を弾くか、腐ってもボスキャラか。


「我が名はダシャー!バキュラーゼはルードが三武神の一角、宇宙騎士ダシャーなり!!!」


何か凄い肩書きのがきたな、ソリッドマリアとの戦闘で受けたダメージもあるからなるべく戦闘を長引かせたくないな。


ここに居る敵は5人、ダシャーを筆頭に光沢の鈍い鎧が4人、それぞれ青、緑、赤、黄。


紅弾を敵に向かって放つ、敵が回避している間に検索スキルで敵戦力を確認する。


「良いのかい少年?前ばかり見ていても」


「な!?」


索敵をかけようとしたその瞬間、真後ろから聞こえてきた声に驚き側面に飛びのきながら後ろを見るとそこにはさっきまで正面に居た青い鎧だった。


「もらうぞ!!」


青い鎧に腕をつかまれる、その瞬間身体から熱が奪われた。

この削られるような感覚、覚えがある。

俺は慌ててステータスを確認した。


・・・能力値が減ってる・・・


「お前・・・まさか・・・」


「そうさ、これが俺のスキル、短距離転移と能力喰だ」


やばい、ドレイン系のスキルだ。

奪うのがスキルでないだけラッキーだったというべきか?


そう思ったのがフラグだったのかもしれない、イキナリ両脇を何者かに捕まれる。


「俺のスキル隠密は相手に気付かれずに行動できる。そしてその力は複数の仲間にも有効だ」


「そして俺のスキルは接収だ!」


剛力スキルで無理やり振り払ったが間に合わなかった、またしても身体から何かがこそげ落ちていく。

何を奪われたのか知るためにもステータスを確認しなければ。


「ステータスを確認する必要はない、俺が奪ったのは強奪だ」


「っ!」


赤い奴の言った事は事実だった、俺のスキルから強奪が消えていたのだ。

俺の使えるなかで最強のスキルが奪われてしまった、これでスキルや能力を奪うことも奪い返すことも出来なくなってしまった。

さらに言えば強奪は上級スキル、使用回数に制限がない、もし奴が相手を選ばずにスキルを使い出したらとんでもないことになる。

カインなんか比ではない災厄になるだろう、これ以上奪われる前に殺さないと。


「ですが貴方はもう切断を使ってしまいました。あと有効そうなのは残り2回しか使えない粉砕と残り7回使える紅弾でしょうかねぇ?」


黄色の男が知らないはずの俺のスキルを言い当てる、まぁ予想は付くよ。


「私のスキルは測定です、貴方のステータスは丸裸ですよ、不死の子よ」


なるほど、こっちが魔法少女達と戦っている間に俺のステータスを確認して作戦会議を行っていたって言うのか。

スキル不明のダシャー、短距離転移とスキル能力喰の青、接収の赤、緑の隠密、黄色の測定か、コレ絶対相手のスキルや能力値を奪うためのチーム編成だよな。

威力偵察向きのバギャンチームといいバランスはあんま考慮せずにとんがったメンバー構成する世界だなバキュラーゼは。

・・・うん、現実逃避してる場合じゃない、ここは麻痺薬で・・・


「毒を使おうとしても無駄だ少年、バギャンの情報で君が毒を扱うことは知っている。

我等がメタルスーツはスーツ内で酸素を生成できる最新型だ!毒対策は万全だよ。

だが子供の癖に恐ろしい物を武器として使うものだ。

だがまあ、君のお陰でバギャンが前線から外されたことには感謝せねばな」


ハッハッハッと笑うダシャー、どうやら仲間といっても仲が悪いらしい。

転移持ちが面倒だな、ダシャーのスキルも分からないし。

そういえば魔法少女は全員スキルを持っていなかったなぁ。

操られていたからスキルの無い子達を偵察の為に使い捨てって感じか?


毒も無理で紅弾もイマイチ、スキルも知られているとなれば伝家の宝刀のアレしかないな。


「シューティングホール!!!」


飛んでる敵も自主的に穴に落とす魔法の落とし穴だ!

流石にまた落とし穴に落とされるのは嫌だったのだろう、全員割と本気で避ける。

そして俺は真後ろに向けて大星剣メテオラを横薙ぎに振りぬく。


「馬鹿め!俺のスキルは短距離転・・・グハァ!!」


やっぱ真後ろから来たか、転移持ちは真後ろに来る法則だ、たまには真ん前に出てみろよ。


そして全周囲に向かって紅弾を散弾放射する。


「「グァ!!」」


隠密で隠れてきた赤と緑が悲鳴を上げて姿を現す、さっきと同じパターンかよ。

多分とんがったチーム構成だから戦闘パターンが少ないんだろうな、

スキルや能力を奪うために確実に攻撃を成功させる初見殺しの戦術を構築したから一度パターンを読まれると弱いんだな。


メテオラの星を魔力にあかせて大量に発生させながら、

ひるんだ赤と緑の間に突っ込み全身を回転させながらメテオラを一閃させる。


「「ぐわぁぁぁぁ!!」」


普通の敵なら能力やスキルを奪われた精神的ダメージと弱体化で圧倒しながら倒し、単純に強い相手は・・・


「調子に乗るのもそこまでだ!!」


ダシャーが倒す、と。

落とし穴から逃げ切ったダシャーの剣を受けた瞬間わざと足を浮かせる。

そのままダシャーの剣に押されて身体が後ろに飛ぶ、踏ん張らなかった事でわずかに姿勢が崩れるダシャー。


「レギオンホール!」


再び表れた落とし穴をギリギリで回避するダシャー、だが本当の狙いは負傷した3色だ!


青が転移で回避するが落とし穴は見失った青を見つけると再び追跡を再開する。

何時までも転移できると思うなよ!


「ロックタワー!ストームウォール!」


逃げる青の前に岩と嵐の壁を展開し逃げ道を塞ぐ、再び転移を行うが上級でなければいずれは限界が来るはずだ。

自分の周囲にストームウォールを展開して転移による奇襲対策をした後で緑と赤を探す。

二人の姿は見えない、恐らく隠密で隠れているんだろう、落とし穴がウロウロしている。


だが隠れているだけなら麻痺薬で何とかなる。

俺は宝物庫から麻痺薬を取り出そうとするがなかなか出てこない、何度か手を突っ込んで探ってやっと出てくる。

気を取り直して麻痺薬を二人の居た辺りに投げつけてストームウォールで周囲に拡散させる。

少し経つとビクンビクンと痙攣した二人が姿を現し、落とし穴がゴミ清掃車のように回収した。

密閉して毒が入り込まないようにしたのなら穴を開ければいい、わざわざメテオラで切り裂いたのは伊達ではないんだよ。


周囲を確認すると黄色は空と地上の落とし穴に挟み撃ちにされて埋まっていた、どうやら索敵系スキルしか持っていなかったらしい。

青も転移の使用回数が切れたのか埋まっていた。

ついでなので黄色と青も麻痺らせよう。


「まさか4人とも捕まってしまうとは、流石はバギャンを退けた少年か」


どうやったのか落とし穴を破壊したダシャーがこちらに近づいてくる。

魔法を無効化する類のスキルか?最初に使わなかったのは回数制限があるからか?


「もはや小細工は無用、私直々に相手をしてやろう!!」


ボス2連戦とか勘弁して欲しいわ、切実に。

能力値とスキルを奪われて冗談抜きで戦力ダウンしているのに虎の子の落とし穴を無力化できる相手と戦うとかもうね。

内心冷や汗をかいている俺がそろそろ覚悟を決めようかと思ったところで新たな乱入者が現れた。


「そこまでよ!バキュラーゼの戦士!!魔法少女フィジカルカレンがダーリンを守るんだから!!!」


逃げていいかな?


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