物理系魔法少女
魔法少女ソリッドマリア、彼女の肉体はその名の通り硬かった。
それはもうダイヤモンドかと言わんばかりに。
こちらの攻撃は通用せず斬撃はカキィンと弾かれ魔法をぶつければ白煙の向こうから無傷の相手が現れる。
「やったか?」と言ったのがいけなかったか。
シールドの魔法かと思ってメテオラの星を大量発生させて連続攻撃しても、
大きな星を作ってぶつけても弾かれた。
紅弾スキルで障壁無効化を狙ってみたがこれも通じず、どうやら純粋な防御力強化のようだ。
さらに言えば重唱スキルで炎と氷の魔法を同時詠唱して、
同位置に発動させる事で対消滅エネルギーを発生させ消し飛ばそうとしたがポヒュッと言う音がして不発に終わった。
漫画の真似はするもんじゃないな。
「私の魔法ダイヤモンドボディはいかなる攻撃も通しません、無駄なことは止めなさい」
避けるとかじゃなくマジで攻撃が通じねぇ。
宝物庫からありったけの状態異常薬を取り出して投げつける。
麻痺薬、睡眠薬、筋弛緩剤、毒薬、惚れ薬兎に角投げる。
だが当たっているのに、薬がかかっているのに動きが止まることはない。
残った虎の子の防御減衰薬を投げつける、コイツは防御力の高いランドドラゴンにも通じた薬だ。
加速薬と筋力増強剤を呑んで火爆符を数枚投げつけ爆発で相手の視界を奪う。
その隙を突いて攻撃しようとしたら爆発の中から白い固まりが飛び出してきた。
ソリッドマリアだ、慌てて魔法で迎撃するがそれがいけなかった。
通じぬ攻撃を避ける必要などないといわんばかりに攻撃が当たるのも構わず突進してくる。
防御減衰薬が聞いてないのか?
一か八か大星剣メテオラで切りかかるが俺の攻撃はあっさりとかわされ右腕を捻られる、そしてそのまま捻られた腕が軋みボキッっと鳴る。
折られた・・・
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だから言ったのに」
痛みの余り地面に倒れ伏した俺をソリッドマリアは見下す。
「勝てない相手に挑むのは無能の証明です、大人しく従いなさい」
誰が従うか、攻撃が通らないのなら通る攻撃をする。
ソリッドマリアの足首を掴みながら強奪スキルを発動する。
「強奪!!」
だがスキルが発動しない、生命力も魔力も能力値もスキルも吸収できない。
「なっ!?」
「何をしようとしたのか知かりませんが無意味です、その汚らしい手を離しなさい」
攻撃が通らなくても関接はどうだ!、剛力スキルを発動して相手の足を持ち上げながら立ち上がる。
「何を?」
今度はこちらが相手の足を捻りながら地面に向かってダイブする、加速剤と自分の体重で勢いをつけて相手のヒザを折る!!
装甲の固い相手には関節を攻めるのがお約束だ、筋力増強剤でブーストしている今なら関節を極めれる筈。
「こちらの攻撃を真似ますか、悪くない判断です。
惜しむらくは右腕を負傷していることと相手が私であることです」
俺が立ち上がったことで体勢が逆転したのを幸いとばかりに両手で地面を掴み体を捻って回し関節を折るべく倒れる方向と逆を向く。
あっという間に俺の攻撃は無力化し、折る筈だったヒザは普通に曲がるだけだった。
即座に俺の腕を振り切って距離をとるソリッドマリア。
剛力スキルは瞬間的にしか発動しないのですぐ効果がなくなるのが難点だ。
仮に両手が無事でも俺の関節技じゃ簡単に返されるだけだな、魔法少女の癖に物理が強すぎんだろ。
後使えるのは粉砕スキルか、切断と粉砕は防御スキル以外なら相手の防御に関係なく効く可能性がある。
それと効かないかもしれないが重唱スキルで複数出した魔法を収束スキルで束ねて放てば攻撃が通るかもしれない。
あとこれだけ強力な防御魔法なら発動時間が短いか消費魔力が大きいかのデメリットがあるはず、それを狙うのも手か。
「私の魔法が切れるのを待つのは得策ではありませんよ、私は魔力を補充する、あなた方で言う充魔石に当たる物があります」
先に答えを言われて釘を刺されてしまった。
バカ正直に信じるわけじゃないがそうだと断定したほうがいいかもしれない、時間が経てばそれだけ王都の人間達の救助が遅れる。
仕方ない、スプラッターはいやだけど粉砕スキルにかけよう。
「クラフタよ、手はあるのか?」
俺の決心を感じたのか精霊石の中のアルテア様が話しかけてきた。
「正直言うと逃げることを勧めるぞ、この国の人間を救う義理はあるまい?」
「まぁそうなんですが・・・」
「先ほどの救助宣言か?わざわざ名乗りまで上げたのには理由があるのだろう?」
「ええ、だから勝つ必要があります」
「そうか、では勝てよ」
「はい!!」
「相談は済みましたか?」
なるほど待っていてくれたのか、まぁ何をしても無駄だとか言うつもりだろうな。
「ですが何をしても無駄です」
やっぱり。
「ふんっ!!」
折られた右腕を無理やり真っ直ぐにして宝物庫から出したハイポーションをぶっ掛ける。
一気に治ったりしないが回復は早くなる。
これで戦闘に集中できる。
「フレイムランサー!!」
重唱スキルで複数出した魔法を収束スキルで束ねて更に細くする
赤い炎が蒼い色に変わっていく。
「防げるモンなら防いで見ろ!!」
魔法を放つ直前更に操作スキルをフレイムランサーに使用する。
フレイムランサーは真っ直ぐソリッドマリアに向かっていく、しかし彼女はフレイムランサーを最小限の動きで回避するとこちらに向かって飛び掛るべく腰を落とす。
「避けないと言っていません」
だろうね、それくらいは分かるよ。
俺は操作のスキルでフレイムランサーを高速でバックさせ直撃する。
「どうだ!!」
「どうもしません」
「無敵かよ!!」
拳を振り上げ飛び掛ってくるソリッドマリアに大して俺は宝物庫からさっき真っ二つに切ったギラードの半身を取り出す。
宝物庫から出たギラードは即座に本来の大きさを取り戻し、ソリッドマリアは突然表れた巨体に対応できず潰される、
単純な質量攻撃ならどうだ!!
だがあれだけの攻撃を防いだ相手だ、無傷とは思えないがこの程度で死ぬとは思えない。
即座にソリッドマリアのつぶれた場所に向かい姿を確認しようとした俺はその光景に驚きを隠せなかった。
そこにソリッドマリアはいた、だがその体はひび割れ足や腕が砕けていた。
「人形?」
砕けた腕や足から紐のようなものが見える、まるで人形劇の人形のようだ。
ソリッドマリアは人間じゃなかったのか、強奪スキルや毒が通じなかったのも納得だ、何しろ生き物ではなかったのだから。
恐らく防御減衰薬だけは効果があったのだろう、ギラードの巨体に押しつぶされて彼女の体はぼろぼろになっていた。
それでもギラードから這い出しこちらに攻撃を行おうともがき足掻く姿が薄気味悪い。
俺は大星剣メテオラで思いっきり切りつけるが高い音を響かせ弾かれる、
しょうがないので粉砕スキルを使って砕く、なんとかスキルによってソリッドマリアの肉体が砕く事が出来た。
これで駄目ならどうなっていたことか。
ともあれこれでソリッドマリアは無力化できたわけだ。
それにしても人間でなかったとはねぇ、・・・と言うことは他の魔法少女達の中に人形使いがいるのか?
もしそうならこれからも死を恐れぬ人形がたくさん襲ってくるのか、嫌になるな。
「マリア!!」
「おのれ!!よくもマリアを!!!」
「許さないんだから!」
ソリッドマリアの仲間達が心配して追いかけて来たらしい、ヤバイな囲まれた。
「決闘の結果だ、この戦いは俺の勝ちだ!!」
「ッ!」
魔法少女達の動きが止まる、よーしよし、決闘についてはちゃんと覚えていたようだ。
だが俺の安堵をあざ笑うかのようにソリッドマリアがぶち壊してくれた。
「マリオンドールズ、人形となって全てを滅ぼしなさい」
ビクンと震えたあと両腕をだらんと下げた魔法少女達が顔を上げる。
だがその顔は知性の光の灯らない人形の目だった。
彼女達は近くにいる俺に向かって襲い掛かってきた。
俺はとっさに粉砕スキルでソリッドマリアの頭を粉砕する、だが魔法少女達は止まらない。
空中機動スキルで上空に回避する、俺に逃げられた魔法少女達は互いに凄い勢いでぶつかる。
ぶつかった反動で倒れた魔法少女達は額から赤い血を流していた。
彼女達は人間なのか?俺は検索スキルで彼女達のステータスを見る。
全員種族は人間だ、クラスは魔法少女か。
恐らくさっきソリッドマリアの口にした言葉は催眠暗示のキーワードか。
ってことは何者かに洗脳されているって事だよな。
しかも彼女達はなりふり構わず俺に襲い掛かってくる。
空を飛んでいる俺を魔法を使ったのか空を飛んで追跡してくるんだが、
こちらの肉体の頑強さを利用した無茶な回避運動に無理やり付いて来る。
だがその代償として血を吐き出したり骨が折れたりする子が続出している。
このままだと全滅するぞ、いや黒幕はそれでも構わないんだろうな。
ならこっちも奥の手を使うか。
「シューティングホール!!」
落とし穴の魔法が魔法少女を落とすべく追跡する、しかし彼女達はこちらの落とし穴を警戒し全員が空に逃亡する。
だがそれは甘い、落とし穴が空中の敵を落とせないという理屈はない。
空中に逃亡し安心した魔法少女の直下に位置した落とし穴が突如上昇する。
落とし穴は間欠泉のように盛り上がり上空に居た魔法少女をくわえ込み隙間を埋め凄まじい勢いで地面に戻って魔法少女たちを埋めていく。
「な!何じゃあれは!!」
「全天候型追跡落とし穴魔法シューティングホールです」
「お、落とし・・・穴?・・・」
「はい」
数名の魔法少女が落とし穴を回避し逃走を図るが、落とし穴は生き物のように魔法少女を追いかける。
その姿はさながら巨大な蛇のようだ。
「我にはサンドワームに見えるのう」
自身の肉体が破損することを恐れない挙動で巧みに落とし穴を回避するが次の瞬間別の魔法少女を追っていた落とし穴にぶつかり飲み込まれていく。
前方不注意だな。
数分とたたずに魔法少女達は落とし穴に落ちる事となった。
「落とし穴・・・落とし穴と言うのはもっとこう・・・」
なんかアルテア様の様子がおかしいが今は彼女達の方が優先だな。
とはいえ洗脳を解く薬なんて流石にないしなぁ。
「アルテア様、洗脳を解く良い方法はありませんか?」
「落とし穴・・・おお!?、おお、洗脳か、ふーむ。精神系じゃからの、同系統の術を使う魔法使いに解除して貰うか、何か大きなショックを与えるか」
「ショックですか?」
「うむ、精神に大きな負荷がかかれば完全に解除できずとも正気に返すことはできるであろう」
「ショックねぇ、乳でも揉みますか?」
「後で殺されそうじゃな」
「とにかくやって見ますか」
「何じゃ本当に揉むのか」
「しませんよ」
ショックを与えればいいのだから気付け薬を飲ませてみよう。
ということで近くに居た子に気付け薬を飲ませるが吐き出されてしまう。
何度か飲ませようと試みるが全て吐き出されてしまった、こっちを見て笑ってやがる。
いい度胸だ、薬も無駄遣いしたくないし思い知らせてやる。
俺は気付け薬を口に含むと無理やり唇に押し付け流し込んだ。
吐き出そうとしてくるが鼻をつまんで息を出来なくしてやる。
噛み付こうとしてくるが無駄なことだ、最後には息が出来なくなり気付け薬を飲み込んでいく。
「ゲホ、ゲホ、に、苦ーい!」
正気に戻ったか、他の子にも飲ませよう。
「み、水をちょうだい」
「あとでな」
今は全員を正気に戻すのが先決だ、手当たり次第に魔法少女たちの唇をこじ開けていく。
こうして俺は全員の唇を奪うこととなった。
「ファーストキスだったのにー」
それはスマン事をした。




