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死者の軍団

シャトリアの王都は尋常ならざる集団に蹂躙されていた。


高さ20mはあろうかという鎧の巨人、鏡のような鎧を着た騎士達、やたらと装飾過剰な服と杖の少女達、全身がカラフルな原色の衣装の集団。

はっきり行って異常な光景である、全ての集団が統一した意思で動いているわけでなくそれぞれの集団で行動がバラバラだ。

たとえば巨人は手にした巨大な剣や槍で建物を破壊したり踏み潰している。

鏡の鎧達は目に付く相手と1対1で戦い、装飾過多な服装の少女たちは魔法とおぼしき力で人々を行動不能にしている、ただし行動不能にされた人達は口からよだれをたらしているが。

カラフルな集団は1人に対して集団で暴行を行っている。


「異常すぎる」


思わずストレートな感想が口を付いて出てしまう。

これはアレだよな、シャトリアの召喚した異世界人と考えるべきか?

鏡の鎧達は恐らくバギャンの仲間で、他の連中は更に別の世界から召喚されたのか?


襲われてるのは利用しようと欲をかいたら逆に利用されて侵略されたって所か。

ふーむ、どうしたものか。

それにしてもうるさいな、連中が発しているのかキンキンした音が周りに響いて凄く耳障りだ。

やけにイラつく。


「まさか我等の故郷がこのような目に遭おうとは・・・」


「俺達の故郷が・・・・・・」


ルジャ伯爵達アンデッドは複雑な気分のようだ、特にルジャ伯爵は騙されて戦死したので思う所があるのだろう。


「んじゃ行きますか?」


「何?」


「何処へ行くんですか?」


俺の言葉の意味が理解出来なかった連中が聞き返してくる。

しょうがないのでもっとストレートに聞いて本心をさらけ出させよう。

それにこれはチャンスでもある、俺がこの国に受けいられる為に。


「無辜の民を助けに行くんですよ」


「「「っ!」」」


「俺は行きますけど皆さんは如何しますか?」


「もちろん行くぞ!!民を守るは貴族の務め!!」


即座にルジャ伯爵が答える、流石貴族。

ルジャ伯爵に呼応して他の貴族アンデッドが歓声を上げる。

実は下級貴族のアンデッドもそこそこの数いたりする、ルジャ伯爵の派閥だった為に政敵にまとめて陥れられたらしい。


「皆の者!我等は既にこの世の者にあらず、だが故郷を愛する心に一切の陰り無し!

牙無き民を救うは戦士の役目、志を同じくする同志は私に続け!!!」


「「「オオオオオおおおぅぅぅぅぅ!!!!!!!」」」


飛翔船に乗ったアンデッド達がいっせいに雄叫びを上げ動き出し、


そして止まった。


「マエスタ侯爵、降ろして貰えないか?」


この船、空飛んでますからねー。


「現地に到着したら高度を下げますので飛び降りてください、

迎撃班と救助班を分けて民間人の保護を最優先にお願いします。

なお、敵には相当に強力な武器、技術を持っている者がいますので、

対応は複数でお願いします」


「承知した、戦闘とは強力な装備と突出した個人だけで行うモノでは無い事を教えてやるとしよう」


俺は宝物庫から大星剣メテオラと風の魔法で音を広げるバッジ型拡声器を取り出し胸元に取り付けてから戦場にむかって叫んだ。


「そこまでだ!!悪党ども!!

我が名はクラフタ=クレイ=マエスタ!!!

ルジウス王国が侯爵なり!!

義によってシャトリアの地を蹂躙する貴様等侵略者共を打ち滅ぼしに来た!!

そして見よ!!!わが背後に控えし者達こそ、シャトリアの平和を守る為に冥府より蘇りし勇者『死霊騎士団』!!

ルジウス王より賜わりしこの大星剣メテオラと我と共に戦うシャトリアの守護英霊達を恐れぬのならばかかって来い!!!!」


『『『オオオオオオオオオオオゥゥゥ!!!!』』』


アンデッド軍団の雄たけびが上がる。


そう、俺は陛下より大星剣メテオラを俺の武器として使う許可を得ていた。

実際にはまた盗まれたら国の威信に関わるので誰か信用できる者に預けてしまいたいという小物貴族共の本音と折角取り戻した神器に所有者がいないのは対外的に格好がつかないからだったりする。


そして俺は神器を取り戻した本人なので預けるにはぴったりの人材だったわけだ。

そういうわけで俺は陛下から永世貸与許可なるものを頂いた。

これにより我がマエスタ侯爵家が没落しない限り大星剣メテオラは子孫に受けつがれる事になるらしい。

神器を継承する一族なんでサボらなければ子孫の代まで繁栄を約束するよと言うことらしい。

恐らくアルマとオレの子を別の王族と結婚させて神器の守人一族を王族内に確立させたいんじゃないかと思う。

そうすることで王族の権勢を維持するのだろう。


っと話が横道にそれた。


オレの啖呵に舐められてたまるかと巨人の騎士の一人が動く。


検索スキルで相手のステータスを確認する


『ギラード

機械人形

耐久値1000/1000

電力500/500

一般的な機械人形兵士』


ん?巨人じゃなくてロボットだったのか、それにしては随分滑らかな動きだなぁ。

地球のロボット工学者に見せてやりたい。

ともあれアレならデモンストレーションの相手として申し分ない。


「アレは俺が倒します」


そういって後のことはミヤに任せ空中機動スキルを発動し空を駆ける。

指揮をするためミヤとの通信用イヤリングを起動させてアンデッド達を出撃させたら戦域を離脱するように命令する、クザたちにはミヤ経由で指示が行くだろう。



大星剣メテオラ、国宝であり神器

オリハルコンで出来た刀身はスキルを無効化するために検索スキルでこの剣の性能を見ることが出来ない。


だが過去の文献から、神器は力ある言葉『神言』を唱えることで特別な力を発揮できるらしい。


俺は大星剣メテオラの『神言』を発する。


「流れよ、星の刃」


次の瞬間メテオラの周りに星が生まれる、星が生まれるたびに魔力が削れて行く。

大星剣メテオラの能力は斬撃能力を持った星を生み出すこと。

魔力を込めるたびに新しい星が生まれ、込める魔力によって星の大きさと硬さが変わってくる。

星は使用者の意思によってある程度動くが星の数が増えすぎると操作しきれなくなるので注意が必要だ。


剣を振りかぶると星も追従する、操作しなければ星は刀身付近に集まる。

星を刀身の先に一列に並べ巨大な剣に見立てる。


「切る!!!」


星の一つに切断スキルをかけて敵の頭上から叩き込む。

ギラードと言う名の巨大な機械人形は斬撃を避けようと回避運動に入るが、

オレの操作で星が動きギラードの頭上をねらい続ける。

星が近づきとうとうギラードは避け続けることが出来なくなり切断スキルをかけた星が頭部に食い込みそのまま胴体を直進して股間に抜ける。

結果、巨人の唐竹割りが完成した、左右に分断され半身で倒れ込むギラード。


戦場から歓声が上がる、王都を守っていたシャトリアの騎士達だろう。


コレで敵はうかつに手を出せなくなった。

敵が俺に集中すればそれだけ救助に力を入れることができる。

破壊したギラードを宝物庫に回収しながらそう考えていたら

ミヤから死霊騎士団を地上に下ろしたとの報告が入った。


雄叫びを上げながら自身の死を恐れず突っ込むアンデッド達、

バギャンの仲間達が応戦するが何発喰らっても突っ込んでくるアンデッドは相性が悪い様だ、何人もの鏡の騎士達がアンデッド達に倒されていく


とギラードの残り半分が上手く入らない、途中で引っ掛かったかな?

もう一回入れ直したら入ったのでいいか、デカイしこんなこともあるんだな。


俺はそのとき油断していたらしい、突然背中に激痛が走る、

背後からオレに攻撃してきた奴がいたようだ。

俺は反転しながら下がり不意打ちをしてきた奴の姿を見る。


正しくは奴等だった。

侵略者達はお互いに争うことなく遠距離から攻撃をしながら俺に向かってくる、やはり連中は同盟を結んでいるようだ。

機械人形をあわせて50といったところか、他は死霊兵団のアンデッド達に向かっている。


全員がいっせいに来たら流石に死ぬな。

だから一気に無力化しよう。


「レギオンホール!」


毎度おなじみ落とし穴魔法を発動する。

落とし穴は回避しようとする鏡の騎士やカラフルな集団を追尾し何人も落とし穴何埋めていく、穴に落ちた後は自動で隙間が埋まるので自力での脱出は困難だ。

宝物庫から新作の「麻痺手榴弾」を取り出そうとするが何故か出てこない。


「あれ?」


袋をもぞもぞしていると空を飛んで落とし穴に落ちなかった装飾過多の衣装を纏った少女達が接近してくる。

おいおい、魔法使いの間合いにしては近過ぎんだろ、それとも短射程高威力の魔法でも使うつもりか?


だがオレの予想は遥か彼方に外れていた。

少女達は魔法など使わず全員がオレに殴りかかってきた。


「なんとぉ!!」


慌てて回避するものの避けきれず何発か喰らってしまう。

その一撃はとんでもなく早くて重かった、この体じゃ無ければ死んでいたぞ!

念のためステータスで確認するがまだまだ生命力には余裕があった、今はまだだが。


「観念しなさい!悪の少年ネクロマンサー!!この魔法少女フィジカルカレンが貴方の腐った性根を叩きなおしてあげるわ!!!」


ああ、物理系なんですね。

魔法つかえよ。


「大人しく降参するのならこれ以上痛い目にはあわないわよ」


「そうよ、私達に勝てると思わないことね!」


そうこうしているうちに魔法少女と名乗る集団に囲まれてしまう。


「一応言っておくけど俺は隣の国の人間で、この国にはウチの王様の命令で来た。いわゆる少年親善大使ってやつだ、俺に攻撃すると俺の国と戦争になるけど良いんだな?あとさっきの攻撃は無かったことにしてやるよ」


俺の言葉に少女達が顔を見合わせて相談を始める、今のうちに態勢を立て直したいんだが実戦経験の多そうな奴がこちらの動きを見張っているので何とか説得で対処したいところだ。


「貴方最初に攻撃したじゃない!、つまりこの国の味方なんでしょ!!」


「最初に手を出したのはあの巨人だ、それにあいつらは町を破壊していた、

悪党だけを倒せば良いのなら町を破壊する理由はないだろ。

それともあんた達は民間人も皆殺しにしろって言われたのか?」


「そ、それは・・・っ! 

あいつ等と私達は組織が違うから命令系統も違うのよ!!」


「だから民間人が被害を受けるのを黙って見ていたのか。

大した正義の味方だな。

人を守ろうとした俺を悪というなら上司に叱られるのを恐れて見捨てたお前らはなんていえば良いんだ?」


「そ、それは・・・」


「正義を行うためよ」


動揺していた魔法少女達だったが白い魔法少女の一言で落ち着きを取り戻した。

結構な統率力だな、この集団のリーダーかな。

彼女は全身、髪も肌も衣装も真っ白だ。

だがその桜色の瞳は危険な色を湛えている。


「私達はこの世界の悪を滅ぼす為に派遣された正義の使者、

私達の正義は世界を救うものよ、その為なら少数を切り捨てる事もいとわない。 

大願をかなえるとはそういう決断をするということよ」


魔法少女って言うよりカルトな組織の考え方だな。

見た感じこの白い魔法少女を無力化すれば説得も出来るかも知れない。

早いとこ対処しないと埋めた連中が開放されるかもしれない、

時間は有限だ。


「君達が正義を主張するならこちらは守護を主張するよ、

そして俺は君達に決闘を申し込む、リーダー同士一対一の闘いだ。

負けた方が勝った方に従うって言うのでどうだ?」


「世界の大願のために動く私がそんな矮小なプライドの為に戦うと思って?」


「俺一人に勝てないのなら何も成せないだろう」


「いいでしょう、ルールはどちらかが死ぬまでですか?」


「守護を主張した俺が死を望むわけないだろ。

体が動かなくなってから10秒数えて立ち上がることが出来なければ負けでどう?」


「良いわよ、誰が数えるの?」


「えーっとじゃ君、物理カレンだっけ?」


「フィジカルカレンよ!!」


意味は間違ってないよな。


「君がカウントを頼む」


「いいの?」


「納得して貰う為には不利なほうが良いだろ」


「・・・わかった」


大星剣メテオラを構える俺に対して白い魔法少女は無手で構える。


「そういえば名前は?」


「ソリッドマリア」


名前どおりガチガチに硬そうだな。

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