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教皇との食事

七石神殿から高位司祭の位を授かる儀式はあっさりと終わった。

ラノベの様にライバルが表れたり俺を落としいれようとする悪党も出てこず、実にあっさりとしたものだった。


教皇が頭に銀色の粉をかけて聖書の一説のような言葉を話して終わりだった。


儀式が終わって城に帰ろうとした俺を司祭とおぼしきおじさんが呼び止める。

なんでも教皇が俺と食事を希望しているらしい。

希望と言うが命令と一緒だよね、なんたって一宗教の最高責任者の言葉なんだから。

むしろ本番はこれから始まるようだ。



おじいさん、教皇という人物を言葉で表すとその一言に尽きた。

好々爺とかナイスミドルとかそういうモノでなく本当に只のおじいさんだった。

背も低く筋肉があるようにも見えない、今にも豪奢な衣装に潰されそうだ。

プルプルしながら教皇は挨拶をしてきた。


「初めましてマエスタ侯爵殿、私は教皇ブラハンと申します」


しわしわの顔を笑顔で歪めながら手を差し出し握手を求めてきた。


「クラフタ=クレイ=マエスタと申します教皇様」


落ち着いて握手に応じる。

正直、手を折ってしまいそうで怖い。


「さぁ、どうぞお腹いっぱい食べていってください」


「頂きます」


教皇に勧められ食事に手をつける。


「おや、マエスタ侯爵殿は神の愛し児なのですね」


「神の愛し児?」


何かの宗教的な言い回しか?


「左利きの子供のことですよ、神に愛された子の魂は生まれる前に神と手を繋いで過ごします。

ゆえに神の愛し児は手を繋いでいない左手の方が器用になるのです」


へー初めて聞いた。

言い伝えとか俗説といったところかな?


「はは、左利きの子供は少ないですからな。

この話をする機会も少なく、今では神殿の者達でも知らぬ者の方が多いくらいです」


「それはもったいない、こういった話は失伝しないように本にして後世に残すべきです」


「ほう、本ですか?」


「ええ、古い言い伝えは学術的に貴重な資料です、是非残すべきでしょう」


俺の言葉に教皇は面白そうに笑う。


「本ですか、それは面白い。ならば是非私も貴方のお話を聞かせていただきたい。

貴方がイージガン平原の彷徨える死者達を開放した話をお聞かせ下さい」


興奮する教皇の求めるままに俺は自分の冒険譚を聞かせた。

どうやってアンデッド達を説得したのか、彼等とこれから如何するつもりなのか。

教皇は俺の話に満足したらしく古い言い伝えを本に纏めたら俺にも一冊くれると約束してくれた。

こういった民話や説話の類は好きなので教皇の申し出は大変ありがたい話だ。

それにアンデッド達の共存についても理解を示してくれた、やはりこの世界ではアンデッドに対して理解があるようだ。

不死者は抹殺じゃー!!とかいわれなくて良かった。



教皇との食事が終わり王城に戻った俺を待っていたのはオクタン伯爵とトライア伯爵だった。


「やぁマエスタ侯爵、陞爵おめでとう」


「有難うございます」


「君に呼び出しがかかっているよ」


「俺に?」


「まぁ私、いや私達も呼ばれているんだがね」


「シュトリア王国の異世界転移技術についてだろうね」


思わぬ情報源のお陰でシュトリアがバキュラーゼと繋がっているのは確実となった。

連中の技術力がどれほどか分からないが本格的に使われたら相当な脅威だ。

そうなれば攻撃手段の限られる空から大量の異世界の兵隊がやって来る。

対策のしようが無い上に何処に現れるかも分からない。

厄介なことこの上ない話だ。


謁見の間には多くの貴族達がいた、彼等も呼ばれたのだろう。

暫く待って人が揃うと陛下がやって来る。

俺達が臣下の礼を取ると宰相のサラマさんが書類を手に話し始める。

イージガン平原の死者達の故郷への受け入れ要請から始まって当たり障りの無い話を経て先の異世界人襲撃事件の話に移る。


「先の異世界人襲撃事件だが、この件はわが国だけでなく周辺の複数の国家が我々と同じように異世界人から襲撃を受けていたことが分かった」


宰相の話に皆が動揺する。

これが本当ならシャトリアは周辺国家全てにケンカを売った事になる。

実際にはケンカどころか戦争だが。


「襲撃してきたのはバキュラーゼですか?」


「いや、どうも違うらしい、ランバイアは鎧を纏った巨人の群れ。ラメサは魔法を扱う幼い少女達、ザムバはカラフルな全身タイツの集団に襲われたらしい。


実際に見たわけでは無いが容易に光景が想像できる。

というかシャトリアの犯行じゃないのか?

少なくともバキュラ-ゼには魔法少女なんて居そうに無い。

それとも複数の世界と交流を結んでいるのか?


結局のところ詳細は分からず、各国は辛うじて異世界人を押し返したとの事らしい。

襲撃時期は俺達が襲われたときと同じだそうだ。


暗いニュースばかりで気が滅入るがましなニュースとして他国へのアンデッドの帰還が許可された。

遺産の譲渡や危険な遺跡の捜索を対価とした甲斐があったというものだ。

本音としては彼等が戦力としてつかえないか、と言う希望もあるのだろう。



アンデッドの帰還事業に関しては通信機を用いて国とすりあわせを行ってから出発する。

それまでは領地の開発だ。

新しい街ももうすぐ完成する、街が完成した後にアンデッド達と出発することにしよう。


会議が終わり貴族たちは各々の場所へと帰ってゆく。

俺達も帰るか。

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