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出世街道

イージガン平原の開放に成功した俺は陞爵の儀に参加するため王都に向かっていた。

今回はいつもの飛翔機でも浮島でもなく浮島のドックに死蔵されていた中型の飛翔船を使って移動している。

王都の一件で自重しすぎて全力を出せなくなることの無意味さを学んだので、露出しても問題の無い力は素直に使うことにした。

その船もそうだ、これくらいの船なら遺跡から発掘したといっても問題ないだろう、

今回の件で男爵から伯爵になるから稀少な古代魔道具を他の強欲貴族に狙われる心配が減る。

貴族としての格が上がれば相手も無茶はできなくなるだろう。


今回俺のほかに王都に行くのは妻であるアルマと侍女ラヴィリア、操縦士としてミヤに代官の館で一番若い男女の部下であるクザとストレイアの二人

それに俺に陞爵を伝えにきた使者達3人の合計8人+馬車だ。


アルマとミヤを除く全員が空の旅に驚いている。


「お館様はこのような凄い魔法具を持っていたのですね」


「船が空を飛ぶなんて」


俺の近くでゴーレムやらを間近で見ていたクザとストレイアは驚きよりも好奇心が優先しているようであちこちを見て回っている。

船の上ではする事もないので2人には自由行動を許している。 


「二人にはこれを動かせるようになって貰うから今のうちに色々見ておけよ」


それを聞いた二人の動きが止まる。

だからこその自由行動の許可だ。


「お館様、それはいったい?」


「私達にこの魔道具を動かせと?」


「うん」


「「無理です!!」」


綺麗にハモリながら二人が叫ぶ、けどいつまでもミヤだけにやらせるわけにはいかんしね。

船ぐらい操縦できるようになってもらわんと。


「一番若いお前達を連れてきたのはこういった未知のモノに対して臆することなく接することが出来ると期待したからだ。

心配するな、使い方は教えてやる。俺の期待に答えろ!!」


「「はっはい!!」」


俺に期待されているという言葉が火をつけたのだろう、二人は熱心に飛翔船を見て回っている、王都に付いたら早速ミヤに操縦法をレクチャーさせよう。


「マエスタ男爵様、我々もご一緒させて頂いて宜しかったので?しかも馬車まで」


使者達はどうにも居心地が悪いらしくキョロキョロしている。


「構いませんよ、どうせ王都に行くのなら一緒に言ったほうが早いですからね」


「そう・・・ですね・・・ハハ」


その後、別段トラブルも無く3日もすると王都が見えて来た。

いつも通り王都から飛竜に乗って竜騎士達がやって来る。


「やはりマエスタ男爵でしたか、これも男爵がお作りに?」


「いやいや流石にこれは無理ですよ、コイツは古代遺跡から発掘したものです」


「なるほど古代遺跡から、そういった物があるとは聞いていましたが実物を見ると壮観ですな、空飛ぶ船と言うものは」


ところでコイツは何処に置こう、さすがにこれを置く場所は王城には無いよな。


「では一端マンテッカ橋の傍にある船着場に付けて下さい、上の指示を仰ぎます」


「分かりました」


ミヤに船着場に着陸するように指示を出し竜騎士達に後を任せる、一人は護衛兼監視役として残るらしい。

1時間もすると馬車と三十人近い騎士達が到着する、ずいぶんと多いな。


馬車の中から現れたのはおなじみのワイズだった。


「お久しぶりですマエスタ男爵」


「お久しぶりですワイズ子爵」


「まさか飛翔船を発掘されるとは、男爵はよほどの幸運をお持ちのようだ」


「ええ、本当に運が良かったです」


「それでですな、流石にこの船を王城に持ち込むわけには行きません。

ですので船はここに置いて頂き馬車にて城にご案内いたします。

その間この者達が船をお守りします」


なるほど、船の護衛だったのか、通りで。

この世界の文明レベルを考えれば稀少な古代の道具は盗まれないようにしたいか。


「分かりました、船の護衛はお任せします、ミヤ!お前はクザとストレイアと共に残り二人に操縦方法を教えろ」


「かしこまりましたご主人様」


そうして俺達は数ヶ月ぶりに王城にやって来た。

王城に到着次第、必要な者のみを集めて陞爵の儀が行われる。

事前に手順は聞いていたので式は滞りなく終わった。


本来ならばそれだけで終わりだが俺はそこで更に古代遺跡で発掘したという名目で通信機を10台陛下に進呈する、

通信機は本来陛下も欲しがっていた物、事前に通信で聞いておいたら是非欲しいといってきた。


さらにアルテア様の提案でストームドラゴンの巣の中にあった「秘密」のお宝を放出する。


「クラフタよ、これは・・・」


「ストームドラゴンの巣を捜索した際に発見しました、ルジオス王家の失われた秘宝、神器『大星剣メテオラ』です」


謁見の間にいる貴族達からどよめきが走る。


「なんと!失われた神器が」


「ドラゴンの元にあったのか」


「賊がドラゴンに宝を奪われたということか」


貴族の人達が言っている様に神器を盗んだ奴がドラゴンに襲われたんだろうな、

アルテア様が教えてくれなかったら間違いなく宝物庫の中で死蔵されていただろう。


「む・・・う・・・わが国の失われた神器を取り戻してくれたとなれば伯爵どころではないな、せめて侯爵に陞爵せねば」


「お待ちください陛下!神器の件はあくまでドラゴン退治の副産物、単独の功績ではありませんぞ」


「その通りです、あくまでも今回の陞爵は伯爵ですぞ」


なるほどあいつ等が俺の敵か、さっそく俺の手柄を無かったことにしようとしている。

だがそれは逆効果だ。


「愚か者!!これは失われた国の魂であるぞ!!神器が国にとっていかなる意味を持つか知らぬ訳ではあるまい!!」


神器は神話において神が与えた奇跡の力、人間達は神器の加護によって国を作り上げたとされている。

それゆえに神器を使う儀式や行事は国の威信をかけた一大イベントで神器は普段厳重に保管されてらしい。

だがルジウス王国では200年前に何者かによって神器の一つを奪われ長らく行方不明になっていた、

神聖な神器を失ったことでさぞ周辺国家に叩かれた事だろう。


日本で言えば三種の神器か十種神宝といった所か。

その神器が帰って来たのだ、日本なら大騒ぎだ。


「王の名において宣言する、わが国の神器を取り戻した功績を認めクラフタ=クレイ=マエスタを侯爵とする」


こうして俺は侯爵にまで出世してしまった。

反対派が俺を睨んでいる、だがこの状況で俺に手を出すことは自殺行為だ。

陛下はこれを機に俺を更に出世させるつもりだろう。

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