イージガン平原
日が沈み世界が闇に包まれた夜に俺達はイージガン平原に来ていた。
『クラフタよ、ここは一筋縄ではいかん危険な土地ぞ』
周囲を警戒しながら注意を呼びかけるのはルジオス王国初代国王アルテア=パミント=ルジオス様だ
今日は久々に精霊石から出てきている。
「そういえば精霊石って言うからにはこの石精霊が入っているんですか?」
『うむ!我の時代から王家を見守る精霊が宿っておる、我はその精霊の家で部屋を借りているようなものだな』
どうやら中は賃貸アパートらしい。
『我が王の中の王だから許されたのだ!!』
[違います]
瞬間俺達の脳裏に鈴の音のような声が響く。
『お主が喋るとは珍しいのう』
「アルテア様、今の声・・・」
『うむ、我が精霊石に宿る精霊の声じゃ』
何か有益な話が聞けるかと期待したんだが精霊石の精霊はそれ以降一言も喋らなかった。
アルテア様の話だと気難しいのでめったに喋らないとか。
そんな気難しいのからツッコミを喰らう人も相当だよなあ。
『それよりも彼等が目覚めたよ』
『おーいるいる、アンデッドの見本市だな』
『数万の彷徨えるアンデッドの集団ですからね』
クアドリカ師匠の言葉で周囲に意識を向ける。
今日は師匠達にも来てもらっているのだ、後で師匠の存在が必要になってくるからね。
イージガン平原を見ると何処から現れたのか大量のアンデッド達が集まっていた。
コレが噂に聞く戦死したアンデッド達か。
「んじゃ行きますか」
「クラフタ様頑張ってください」
『クー君危なくなったらすぐ戻って来るのよ』
久しぶりにヴィクトリカ姉さんにもご足労願っている。
俺は一人大量のアンデッドの待つイージガン平原に向かって歩いて行く。
『人間だ』
『子供だ』
『人間か?』
『仲間か?』
『生きている者の匂いがするぞ』
アンデッド達が俺を観察している、生者ならば問答無用で仲間にするべく引き擦り込むのだがアンデッド寄りの半不死の俺の気配から同胞の匂いがするので対応に困っているらしい。
大変好都合だ。
「イージガン平原で彷徨う全てのアンデッド達よ、話がある」
『バカな事を、人と共に在る者がなにを世迷言を』
『我等はこの地に魂を縛られし死者の群れ、貴様もここから出られ無くしてやろう』
久々の生者の気配にアンデッド達が興奮して襲い掛かってくる。
だがそれは織り込み済みだ、このときの為に新魔法を作ってきたのだ。
本邦初公開コレが俺のオリジナル魔法
「レギオンホール!!!!」
俺の力ある言葉に術式が反応し魔法を発動させる。
その瞬間イージガン平原からアンデッドが姿を消した。
『クソオォ!!!出せ!!』
『おのれ卑怯者め!!!』
アンデッド達が地面から首だけを出して呻いている。
俺の魔法レギオンホールの効果だ。
レギオンホールは複数の対象を自動的に追尾して落とし穴に落とす魔法だ。
更に落とした対象と穴の隙間を自動的に埋める効果がある。
ピットホールは穴の大きさの設定を間違えると簡単に抜け出される上に高速で動かれると開けた穴が無駄になることになる。
だがレギオンホールはそんな心配も無用だ、魔力消費量がちょっと多いが十分元は取れている。
『弟子がおかしな方向に進んでいる』
『フヒャヒャヒャヒャ!!ホーミング落とし穴!!!落とし穴最強伝説ッぷははハハハハハ!!!』
『僕の教えた事を活用している・・・・・・と言って良いのかなぁコレ?』
師匠達が三者三様の反応を見せる。
「さて、それでは皆さん話し合いをしましょうか」




