尋問
改めて麻痺薬で麻痺して落とし穴に嵌っているバギャンを見る。
その身は鎧に包まれているが空気は通すようだ、というか鎧じゃなくてパワードスーツじゃないかこれ?
バギャンの舌に麻痺治しを塗る、コレで喋るだけなら出来るはずだ。
「さて、色々応えてもらおうか」
「・・・・・・わずかな間に見違えるような変わりようだな」
そう呟くとバギャンは仮面越しに視線をアルマに向けた様な気がした。
「恋は少年を成長させるか、ククッ」
「恋ではなく愛だ!」
「そ、そうか・・・?」
若干引かれた、なぜだ?
「俺達は結婚しているしな」
「な!何!??結婚だと!?」
貴族なら若くして結婚してもおかしくは無いだろ?
「こ、この世界ではそうなの・・・か?」
「俺達が特別愛し合っているからだ」
後ろでアルマが身悶えしているのが感じ取れる。
「進んでいるんだな・・・・異世界は・・・」
「で、お前達の狙いは何だ?」
「バリシャーが言っていただろう?資源が欲しいからだ」
「本当に資源だけか?」
「・・・・・・」
黙秘か、幹部級のこの男が知らないはずは無いんだがどうしたもんか。
切り口を変えよう。
「お前の使ったレーザーセーバーってのはスキルか?」
「いや違う」
「スキルを使えない?じゃあ魔法?」
「科学だ」
「科学・・・」
つまりあの武器はSF的な超科学の産物と言うわけか。
「科学とは魔法が魔力を扱うように雷の力を使う技術を言う」
なるほど、地球の科学技術を進歩させた感じか。
だとしてもレーザーの剣とかドンだけ進歩してんだか。
「お前はスキルを使えるか?」
「さて、どうかな?たとえ使えても教える必要は無いだろう?」
流石に切り札は教えてくれんか、・・・・・・あれ使ってみるか。
さっき敵から奪ったスキャンの能力だ。
よし、早速使ってみよう。
名前:バギャン=イエトー
Lv60
クラス:メタルナイト
種族:異世界人(人間:上位貴種)
スキル
・固定
能力値
生命力:1000/1000
魔力:500/500
筋力:4
体力:4
知性:5
敏捷:4
運 :3
スキルは『固定』か。
ただ能力値は平均的に高めだけど特別高いわけじゃないよな、となると苦戦の理由はこの鎧か?
「お前のスキルは固定だろう、さっきの戦闘で体が動かなくなったアレだ。
恐らく数十秒動けなくなるというものだな、ただ麻痺のように動けなくするのなら転倒していただろうがそうならなかったということは対象の空間ごと動きを停止させているのか」
「とんでもない洞察力だな」
カンニングペーパー見ながらですが。
かなり便利なので情報を頂いたらこのスキルを頂くことも考慮しよう。
だがバギャンは襲撃者の中では理性的な部類だ、さっきも見逃してくれた。
バギャンにやられて死んだ振りをしていた時も実はバレていた可能性も有る。
聞いたことは結構教えてくれるし進んで敵に回すのもよくないな。
襲ってきた敵だから力を奪ったが、話し合いの出来る相手からも奪ったらアイツと同じになる。
まずは情報収集だ。
「この世界の協力者を教えてもらおうか?」
「言えんな」
いるようだ。
となるとあとカマかけれそうなのは
「シャトリア王国との契約についてでもいいんだが」
バギャンがピクリと動く、お?当たったか?
ウチとの関係がそろそろきな臭いシャトリア王国が裏で異世界人と取引をしている可能性はある、なにしろこの国に俺がいるのならよその国も同じことが出来る可能性が高い。
「・・・・・・」
まぁ黙るわな、けど答えれない時だけ黙秘をするのは半分くらい答えてるようなモンですから。
つまりシャトリア王国とは限らないがそれなりに大きい組織と繋がっている。
「応えてもらえないのなら痛い思いをしてもらいます」
「いや時間切れだ」
バギャンの声に呼応するように上空から雄たけびが聞こえる。
見れば空から青いドラゴンが向かってくる。
ただおかしいのはそのドラゴンは全身が青い鎧で覆われていたことだ。
恐らくアレは鎧ではなく機械、ドラゴン型のロボットだ。
「来いギランドール」
俺はとっさにアルマとおっちゃんを抱えて全力で離脱する。
その直後機械龍は中庭の土ごとバギャンを攫って空の亀裂に突っ込むとそのまま亀裂は消えた。
「あらかじめ帰還時刻を指定してしていたのかな?」
しまった、せめて始末して置けばよかった、ああ読心スキルとかあればなー。
会話に時間をかけすぎた。
「クラフタ様・・・私達助かったのでしょうか?」
「亀裂が消えたって事は帰ったんだろうな」
まったく迷惑な連中だ。
「さて怪我人の治療にいくよ。」
「はい!」
そのとき俺は足元に転がるものに気付く。
銀の剣、バギャンの剣だ。
「お土産ゲットだ」




