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光の剣

騎士団のお陰でバギャンと間合いが取れた。

騎士達は4人、ホールの上から飛び降りて攻撃して来た二人と今もホールの上にいる魔法使い2人だ。


確信した、彼等では勝てない、自分が援護しても勝てない。

生存に特化した進化をした肉体が目の前の敵と戦う事を拒否しているのだ。

だがそれが理解出来ない騎士達がバギャンに切りかかる、バギャンは避けようともしない。


「「はぁ!!」」


だがバギャンの鎧は傷一つ付かずそれどころか騎士達の剣が半ばから折れていた。


「なっ!馬鹿な」


「なんという硬い鎧だ」


「ソード転送」


バギャンの声と共に手に剣が現れる。

俺は弾かれるようにスキルを発動した。


「重唱!ストームウォール!!ロックタワー!!」


瞬間、バギャンと騎士達の間に嵐の壁と岩の塔が出来上がる。

だがバギャンが何気なく手にした剣を横薙ぎに振ると二つの壁は豆腐でも切るようにあっさりと切り裂かれ、

その先にいる騎士達の鎧ごと切り裂きその体が大量の血に染まり崩れ落ちる。

術式強化スキルを発動して通常の魔法よりも強化されているにもかかわらずこれかよ。


「大したものだ、普通なら真っ二つになっているんだがな」


バギャンの言うとおり騎士達はかろうじて生きている、だがすぐに治療しないと命は無いな。


「早く傷を癒すが良い」


おいおい治療までさせてくれるのかよ、質問に答えてくれたり親切だな。

正直疑わしいがそれでも信じ無ければ騎士達が死んでしまう、俺は宝物庫からハイポーションを取り出し傷ついた騎士達の元へ向かう。


「危険です男爵!!」


「信用するしかない!!」


かなり深い、骨まで見えるほどの傷だ。

鎧の切断面から直接傷口に薬をかける。

薬は患部にかける方式と飲むことで体内に取り込む方式がある。

患部にかける方式は回復力を一箇所に集中させ飲む方式は全体に効果を及ぼす。

この深い傷にはかける方式のほうが良い、薬のかかった場所が血を流すのをやめ切断面が結合していく。

既に失った血は戻らないがこれで命の危険は無くなった。


「凄い、あれだけ深い傷を一瞬で直すなんて、まるで高位司祭の治癒魔法だ」


術式強化スキルの発動した中級薬調合で作ったハイポーションは更に上位の薬に近い回復力を発揮した。


「二人を連れて退避してください、俺が時間を稼ぎます」


「ですが!!」


「陛下を守るのが貴方達の仕事でしょう!!」


「っ!」


俺の言葉に優先順位を理解した騎士達は仲間を連れて離脱する。

それをただ眺めるバギャン、本当に義理堅い男だ。


「もういいか?」


「ええ、お待たせしました」


「では王の所に案内してもらえるかね?」


「申し訳ありませんが止めさせていただきます」


「残念だ、仕方ないが君を倒して自分で探すとしよう。」


本音を言うなら今すぐ逃げたい、だが城の中には陛下やアルマそれに使用人達非戦闘員がいる。

敵の仲間も暴れている以上幹部クラスを少しでも足止めする必要がある、皆が避難するまで時間を稼がないとな。


宝物庫から緑色をした剣を取り出す、七天魔杖を直すまでのつなぎとして作った剣だ。

地の属性石を使っているので単純に硬くて重い剣だ、さらに中級属性付与のスペルで火の属性石の属性を与えてある。

魔力を流せば短い時間だが刀身に火炎が発生する、正直バギャン相手では心もとないが普通の剣よりましだ。


狙うは接近して生魔吸与で生命力と魔力を奪う、それが一番確実にダメージを与えられる方法だ。

そのためにはある程度動きを封じないといけない、可能なら剣は奪いたい。


『クラフタよ逃げたほうがよいぞ』


精霊石からアルテア様が逃げることを


「そういう訳にも行きませんよアルテア様」


『日が昇っているうちは我も助けてやれんのだぞ』


だがやらねばならない、この男に会えば最悪陛下は殺されるかもしれない。

いきなり襲撃をかけてきたような連中の仲間だ、友好的な話し合いとは行かないだろう。

そうなればアルマが悲しむ、戦う理由としてはそれで十分だ。


「フレイムランサー」


拡散スキルで単発呪文のフレイムランサーを3本発現する。

操作スキルで直進するだけのフレイムランサーに幾何学的な挙動をさせそれに同調するように跳躍スキルで正面に向かって跳躍する。

バギャンに接敵する前に上空に跳躍しつつ自分の通過した向こうからフレイムランサーが遅い来る。


バギャンは落ち着いた様子で1本ずつフレイムランサーを切り裂いていく、魔法を切るあの剣も普通じゃないな。

フレイムランサーに対応しているうちに跳躍で背後に回り込み剛力スキルを使用して力ずくで叩き切る。

だが必殺の一撃は鎧を破壊してわずかにその肉体を傷つけるに留まった。


「私の鎧を破壊するとはその若さで大したものだ、その力に敬意を表し本気でいく」


瞬間、バギャンから放たれた殺気に気圧されて飛び下がる。


「レーザーセーバー」


バギャンの声に呼応するように剣が光を放つ、否!剣が周囲の光を喰らっている!!!

剣に光を奪われることで周囲の空間が闇に飲まれていく。

暗闇となった世界で光を放つのはバギャンの鎧を彩る宝石と光り輝く剣レーザーセーバー、そして仮面の奥の燃える炎のような目の輝きだけだった。


バギャンがこちらに飛び込みながらレーザーセーバーを振りかぶってくる、だが避けられる。

不思議とその太刀筋には騎士達を切り裂いた異常な怖さが無かった、確かに当たれば唯ではすまないのだが何とか避けられるのだ。

恐らくこの剣を維持する為に意識を集中しているのだろう、本末転倒だ、コレなら普通に戦った方が怖かった。


回避が出来るのなら反撃だ、バギャンの正面に立った俺は援護用にゴーレムを作ろうとした。

だがその瞬間、急に体が動かなくなった


「っ!!」


指一本動かすことができない、何かのスキルか?


「バギャンブレイク!!!!」


大振りの一撃が向かってくる、避けなければいけない、だが体が動かない、刃が皮膚に食い込む、体が光に切り裂かれていく。

声が出せない、呪文が使えない。

やばいやばいやばい


『物理防御』


苦し紛れに使った防御スキルの効果があったのかかろうじて攻撃が止まる。

まさか50しかダメージを無効化できないスキルが役に立つとは。


バギャンが剣を引くと俺の体も地に崩れ落ちる。


血が大量に溢れる、生存に特化した肉体だからこそ生きていられるが早く治療しないと今度は俺が死ぬ。

兎に角ここはバギャンが去るのを待つしかない。


「しかたない、自分で王を探すしかないか」


「その必要はありませんよバギャン様」


「バリシャーか」


「この娘を使いましょう」


バリシャーと呼ばれた男の腕には、意識を失ったアルマが捕まっていた。

護衛のゴーレムがいない、あの男に破壊されたのか?


「バリシャー貴様・・・」


バギャンが殺気を放つ。


「おっと、待ってくださいよバギャン様。我々の目的はこの国の王から壁の情報を得ることでしょう?」


「それでその少女に何の関係がある」


「この娘は王の娘、お姫様ですよ。つまり人質としてうってつけというわけです」


「むぅ・・・む!」



俺は立ち上がっていた、自分でも良く動けたものだと思う。


「アルマを放せ」


「君、この娘の知り合い?だったら王様の場所を教えてくれないかな?」


「アルマを放せ」


足元もおぼつかない有様でバリシャーに向かう。


「ち、聞こえてないか。バギャン様ダメですよ、手加減してくれなきゃ」


「・・・・・・」


なおも歩く、剣は落とした、武器は無い、魔法を使えばアルマを巻き込む、だが進まない理由など無い。

アルマを助ける、それだけに集中する。


「死にかけのガキに用はないんだよ、死にな」


バリシャーの前に数十の赤い紅弾が現れる、あれで俺を貫く気か。

しかし


『何処を狙っている?』


「なに!」


バルシャーが後ろを振り向く、だがそこには誰も居ない。

音を飛ばすフェザーボイスの魔法に惑わされたバリシャーは慌てて視線を戻す。

だが遅い、俺はすでに跳躍スキルでバリシャーの懐に飛び込んでいる、アルマを掴む腕を剛力で力いっぱい掴む。


「ぐぁぁぁぁぁ!!!」


「アルマを返してもらう」


バリシャーの腕を砕きアルマを抱き寄せる。


「キサマァァァァ!」


背中に激しい痛みが走る、紅弾が俺の背中に向かって放たれる。

だが無視だ!ロックタワーの魔法で足元の地面を隆起させ自ら上空に飛ばされる。

直後紅弾に破壊され倒れるロックタワー、かまわない跳躍スキルを連続で使いこの場から離れる。

だが紅弾はいまだ俺に向かってくる、ストームウォールの防壁もやすやすと貫かれる。


再度跳躍スキルを使おうとするも飛ぶことができない、しまった使用回数切れだ。

再びバルシャーから紅弾が飛んでくる、ロックタワーの魔法で作った岩壁も砕かれる迫る紅弾。

俺はせめてアルマを守ろうとその小さな体を抱きしめる。


しかしその攻撃は俺達には届かなかった。


「危ないところだったな」


聞き覚えのある声、顔を上げた俺の前にいたのは


「おじさん参上だぜ!!」


「おっちゃん!!」


我等がトラブルメーカー、マックスのおっちゃんだった。

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