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殺到

保存前にデータが吹っ飛びました(泣)

マエスタ領の領主になって10日ほど経ったある日の朝、クスジンの街は驚くほどの人がごった返していた。


「マエスタ男爵様、是非私を家臣に雇ってください!」


「いや私こそ!!」


「私こそが!!」


「男爵様!どうか私の息子の病気を治す薬を作ってください!」


「お父さんの怪我を治してください」


「男爵様!!」


代官の館の前には大量の人が詰め掛けていた。

俺に仕官をしたい人たち、俺に病気を治してもらいたい人達と様々だ。

あ、俺の屋敷はまだ無いんで代官の屋敷で寝泊りしています。


「コレほっといたら暴徒確定だよな」


「今の時点で暴徒同然です男爵様、お早い対処が必要かと」


俺の呟きにこの町で雇った使用人Aのグアジュが応える。


「突っ返して帰るとも思えんし宿も足りんとなると野宿だろうけど病人もいるしなぁ」


「仕事を求めてきていますから宿代を払えるかも怪しいですな」


『で、如何するのじゃ?』


「そうですね、働ける連中は水路製作の人足なり畑の開墾でもやってもらいますか」


『なかなかにドライじゃな』


「働かざるもの食うべからずですよ」


「男爵様、どなたとお話されていらっしゃるのですか」


「え?だれって・・・・」


この場にいるのは俺とグアジュと書類仕事をしている数人の使用人だが女はミヤしかいない。

そしてミヤはこんな声じゃない。


『ここじゃ、ここ、おぬしの首の下を見よ』


自分の首の下を見ると底には精霊石のペンダントが掛かっていた。


「ま、まさか・・・」


『そう!そのまさか!!ルジオス王国初代皇帝アルテア=パミント=ルジオスである!!!!」


おいおい。


「なんでアルテア様が・・・?」


『言ったであろう?「我等歴代ルジオス王がお前の味方になろうではないか!!」とな』


あれマジセリフだったんですね。


『まぁ昼は我、手が出せんのでアドバイスだけな』


アンデッド設定生きてるんですね。


「えっと、魔法具で遠くの人と会話してるんです」


ということにしておこう、流石にアンデッドになった初代国王と会話してるとか言えんわ、国家機密的に。


「なるほど、そのような魔法具までお持ちとは流石男爵様」


「希少なものなので口外しないようにお願いしますね」


「畏まりました」


じゃあ説得に行きますか。

大変面倒だが人がごった返す館の前にやって来る。


「マエスタ男爵、私を家臣に雇ってください!」


「私を雇ってください!!」


「私を!!」


「マエスタ男爵様!家族の病気治す薬をどうか!」


「男爵様!!」



「皆さん!!」


俺は声を大きく張り上げる。


「うるさいぞガキ!!」


「忙しいんだ!あっちに行っていろ!!」


行っていいのか?

まったく、俺がどういう存在か調べて無いのか?


「マッシア!!」


大型作業用ゴーレム、マッシア君を起動させる。


俺はゴーレムの手に乗るとゴーレムに立つ様指示を出す。


「静粛に!!」


押しかけてき連中はイキナリ現れたゴーレムに驚いて四方八方に散りじりになろうとする。

だが逃がさん、領主からは逃げられないのだ。


周辺に待機させていたゴーレム達がいっせいに立ち上がり逃亡を阻止する。

さすがにここで逃げられたら暴徒化待ったなしだ。


「俺がマエスタ領の領主、クラフタ=クレイ=マエスタだ!」


周りが無音になる、次の瞬間。


「マエスタ男爵様、是非私を家臣に雇ってください!」


「いや私こそ!!」


「私こそが!!」


「男爵様!どうか私の息子の病気を治す薬を作ってください!」


「お父さんの怪我を治してください」


「男爵様!!」


我先に叫びだす群衆、うんそれはさっきと言うか朝から聞いた。


「静まれい!!!!」


俺の一喝と共に轟音をあげるゴーレム達、暴徒達は驚きに竦む。

コレで竦む辺り護衛とか無理だよね。


「貴様等の陳情しかと受け取った、されど我が領地に汝等を養う余力は無し!!」


「そんな!」


「黙れ!!」


「ひっ」


俺の言葉を遮ろうとした男を一喝し黙らせる。


「よいか!我が領地に汝等を住まわせる屋根は無い!汝等を生かす食料も無い!!汝等が己が都合のみで我が領地の民の害となるのならば領主の名において汝等を・・・」


俺はゆっくりと、しかしハッキリと断言する。




「処断する!!!!」




暴徒達は言葉を失う、領主としての言葉である、下手な事を言って不興を買ったら本当に殺されるかも知れないと感じたのだろう。


「されど俺も鬼ではない、汝等に道を示そう、それに乗るというのなら我が領地への滞在を許そう、拒否するのならば今すぐ帰れ」


無言で彼等を見る、誰も帰ろうとはしないいや帰れないのだ。

彼等は一縷の希望を俺に見出した、俺に見捨てられたら再びどん底に逆戻りだ。

だから逆らわない。


「働けるものは我が領地の開拓に従事せよ、さすれば寝床と賃金を出してやろう。

薬を求めるものよ、言っておくが俺は医者ではない。治せるものと治せぬものがある。

理解せよ!

それでも汝等が薬を求めるのであれば己の食い扶持は己で稼げ!!さすれば汝等の望みは近づくであろう!!」


叶うとは言っていない、要約すると「お前等働け」である。


おおおおおっと声が響く。


「グアジュ、名簿を作成した後グアツの所に男共を連れて行け」


「承知いたしました」


「ミヤ、病人を集め病名と症状を調べろ」


「承知いたしました」


さて、俺は家を作るか。

町外れにゴーレム達を並べる、水路作業と家を建てるゴーレムと分ける。

水路作業用ゴーレムに指示を飛ばし家を建てる為に残したゴーレムたちに石を集めさせる。


ロックタワーの魔法で石柱を大量に用意する、その後加工の魔法で平坦な石板になるよう切る。

所々ヘコませて切れ込み形状を作る、材料の加工が出来たら早速ゴーレム達に指示を出す。


ゴーレム達は石版を組み合わせて石のログハウスを作り出す。

別のゴーレムは石の長屋を作り出す。

天井板は更に薄くし崩落の危険を取り除く。

日本と違って台風の危険も無いのでこの程度の出来でいいだろう。

はめ込み式の家を作った後は職人に隙間を埋めてもらう。

突貫で簡単な家を大量に作成する。

次は食料だ。


開墾班の所にゴーレムを連れて行くシャベルゴーレムを使ってひたすら開墾をさせ人足になった就職希望者たちには種を植えさせる。

特性栄養剤に浸した種である、流石に品種改良の時間は無かったので今はコレで行く。

肥料も一部の農民に使用させているリン、窒素、カリウムッぽい薬剤を使用させる。

また雑草等を引き抜き混ぜて焼いた草木灰も巻いておく、コレも立派な肥料だ。

新しい畑は肥溜めを使用しないブランド品だ。

ぶっちゃけ俺が肥溜めで育てた飯を食いたくないからだ。


次は水路伝いに様子を見てから湖に到着だ。

ゴーレムに命じてある程度湖の奥までいってから網を投げさせる、ゴーレムなので湖の魔物も怖くない。

幸いゴーレム達は魔物に襲われることは無かった、死ななくても破損はするからな。


『しかしまだ足らんな』


「ですね」


『ふむ、では腕っ節に自身のあるものに魔物狩りをさせれば良い、食料を確保しつつ街道の治安もよくなる』


「なるほど妙案ですね」


『ついでに働きの良い物はお抱えの警備兵にしてやるといえば良い』


なるほど試験をかねてということか、それに街道の魔物を減らすのも重要だ、俺がこの街に来るときも何度か魔物の襲撃があった。

そのときは護衛の騎士達のお陰で事なきを得たが道が安全になればそれだけ人が来やすくなる、交通の便が良くなることも重要な政策だ。


魚を持って街に帰った俺は町に残った連中に魚を預けて昼食の用意をさせる。

その間にミヤから患者の書類を受け取り重傷者からチェックしておく、

しっかり患者の状態までランク分けしてるのでありがたい。


感染症と伝染病の患者を確認したが感染力の高い病気の者はいなかった、

きっとココに来ることなく犠牲者が出ないよう処分されてしまったのだろう。

それでも医者に見捨てられた患者達だけあって一筋縄ではいかない病気の者が多い、全員の治療は時間が掛かるな。


だがメリットもある、この患者達を治療すれば忠誠心のある領民が手にはいる、

そしてオレの薬師としての名声も上がる、決して無駄にはならないだろう。


そう自分を鼓舞してオレは大量の薬作りに励むのだった。

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