領主様の一日
一部お食事中の方に不適切な表現が御座いますのでご注意ください。
追伸:『ヒーローの俺が悪の組織に入って復讐する』という小説も始めました。
こっちはのんびり更新ですので気が向いたら覗いてみてください。
マエスタ領の一日が始まる。
朝、目が覚めると妻の寝顔を眺めることから俺の一日は始まる。
頭を撫でると甘える猫のような声を上げるのでとてもホッコリするのでメイドが起こしにくるまで満喫する。
メイドが起こしにくると妻を優しく起こす。
「ふみゅ・・・あ・・・お早う・・ございましゅ・・・」
妻は朝が弱い、ございましゅ頂きました。
妻を起こすと二人で着替えを始める、妻は王族育ちなので着替えも侍女任せだったが俺の要望で一人でも着替えられるようにさせた。
俺が女の子の生着替えをじっくり楽しむためだ・・・
い、いや!そんなことないよ、一通り自分で出来る自立した人間になれる様にだよ。
・・・ともかく、着替えが終わったら朝食を食べる。
妻が「あーん」とかして来るので美味しく頂く、その後こちらからも「あーん」返しをするのが礼儀だ。
新しく雇ったメイド達の表情が引きつっているような気がするが気にしない、古参メイドのラヴィリアは一切表情が変わらない、さすがベテラン。
食後の一服が終わった後は領主の仕事だ、ミヤが持ってきた書類を読んで了承印を押す。
時折浮島の研究所関連の書類が混ざっているがかまわず印を押す。
ミヤの書類仕事の速さと優秀さは流石だ、伊達に数千年書類を作り続けていない。
ミヤのお陰で引継ぎは3日と経たず終わってしまいインザムさん達も驚いていた。
もっとも相手が人間だったから3日も掛かってしまったのであってミヤだけならもっと早く業務の引継ぎが出来ただろう。
そのお陰でインザムさんとその部下は護衛の騎士達と共に王都に帰還していった。
急ぎの書類が終わったら荷物を持って視察に出る。
この街は近くに湖が有るにもかかわらずその水が使いづらい、
それというのも湖に巣くうメガシャークを始めとした水生の魔物の所為だ。
その為この街の水源は井戸がメインだ、湖から流れる川の水を汲みに行くには少し遠い。
だからまずは安定安全な水源を確保する、このままだと畑の水撒きも大変だ。
そこで作業を行ってもらう工員を集めて人口湖を作る。
湖といってもちょっと大きい池といったところだ、そこから街に水路を繋げ最終的に湖から流れる川と合流させる。
その為にも街の工事を一手に引き受けているグアッジュ工房に仕事の依頼を受けてもらう。
「あー、坊・・・領主様の言い分はわかったがよ、あそこはそう簡単にはいかんぜ」
こちらの要望を聞いたグアッジュ工房の親方であるドワーフのグアツからは色よい返事がもらえなかった。
「あの湖にはメガシャークを始め面倒な魔物が住んでやがる、
先代の頃にも同じような話があって工事をしたんだが作業中に何度も魔物が襲ってきやがった」
「護衛は用意します」
「そんだけじゃねぇ。その人口湖だったか?そいつを作るには結構な金が必要になるぜ」
「有る程度はこちらで場を整えますので皆さんには仕上げをお願いします」
「俺等以外の余所者を雇ったのか?」
工房の中が剣呑な空気に包まれる、自分達に仕事を頼みながら外部の手も使おうというのだ、軽んじられていると思ったんだろう。
「いえ、あくまで俺個人の力です、外部の人は使いませんよ」
「そ、そうか?」
こちらの意図がつかめないのだろう、戸惑った様子で返事をするグアツ。
「まぁ、護衛を出してくれるってんならこっちもかまわないがほんとに大丈夫なのか?」
「ええ、相手が水の中から襲ってきても護衛が死ぬようなことはありませんよ」
「そりゃすげぇや」
うん、死ぬことは無い、初めから生きていないんだから。
その後街に引く水路の配線予定図をグアツ達と相談しながら引き、ついでに下水処理についても相談しておく、
初めグアツ達は下水の必要性を理解できて居なかったが下水処理を正しく行えば疫病等の問題が飛躍的に改善されると知ってやる気になってくれた。
やはりファンタジー世界でも伝染病の類は怖いのだ。
何しろこの世界の技術力は中世+魔法の力なので日本と比べて劣っている所はかなり遅れている。
一応トイレはあるが汲み取り式のボットントイレだ、正直臭い。
排泄物を肥溜めに使用する農家も居たため俺が赴任してから禁止させた、というのも肥溜めで正しく発酵処理をさせないと寄生虫の危険性が大きく上がるからだ。
調べてみるとその辺りの科学的根拠を知らない為、発酵が完全で無い状態で使っている農家も居たくらいだ。
そもそも発酵処理を行っても発酵熱に耐えられる寄生虫の卵が残っていた場合はやはり寄生虫の危険がある。
王都に居たころに肥溜めを作物の育成に使用している可能性を考慮していたので
浮島の研究所にあった食料に関する資料から安全性の高い肥料についての研究書類を読んでおいた。
その中に野菜を育てるために必要な3大肥料であるチッソ、リンサン、カリウムと思しき物に付いての記述があったので、
この街に着いてから暇を見て作った肥料を農家与え使い心地を試させている。
畑で処理するはずだった排泄物を処理する為の処理場も簡単に作っておく、ここでも浮島の研究資料が役に立った。
現代日本の浄水施設の概要を参考に塩素などを使った細かいろ過技術は浮島の研究資料で再現する。
こうやって考えると浮島の施設は軍事よりも民間使用の技術のほうがメインだったことが良くわかる。
もっとも完全に運営するにはやはり大量の水が必要なので水路の完成は必須だ。
計画の詳細をある程度詰めた所で細かい人員の運用についてはグアツに任せて帰宅する。
人造湖と水路で使用する道具を用意させ午後からはミヤ経由で師匠達の用意した勉強を行う、教師役はミヤだ。
師匠達は色々やっているらしくあまり連絡がつかない。
個別魔法の習得、薬品作りの実践、魔法プログラムの構築をミヤに教わっていく。
余談だが新しく覚えた魔法のチェックでステータスを確認したらLvが40を超えてアルケミストの中級魔法が使用可能になっていた。
どうやら40Lvが初級と中級の境の様だ。
名前:クラフタ=クレイ=マエスタ
Lv40
クラス:アルケミスト
種族:異世界人(人間半不死:上位貴種)
スキル
・術式強化(使用者限定 中級)
・素材抽出(初級)
・生魔吸与(上級)
・鑑定(物品限定 上級)
・接収(初級)
・剛力(初級)
・物理防御(初級)
・気配遮断(初級)
・空中跳躍(初級)
・拡散(初級)
・操作(初級)
・重唱(初級)
・領域(中級)
・料理(初級)
・収束(中級)
・結界(中級)
スペル
・初級薬調合 :消費魔力2
・初級素材合成:消費魔力3
・初級属性付与:消費魔力5
・初級言語読解:消費魔力1
・中級薬調合 :消費魔力10
・中級素材合成:消費魔力15
・中級属性付与:消費魔力30
・中級言語読解:消費魔力3
・加工 :消費魔力10
・ピットホール :消費魔力3
・ロックタワー :消費魔力13
・フェザーボイス :消費魔力2
・ストームウォール :消費魔力25
・ウォーターボール :消費魔力3
・フリーズボール :消費魔力12
・ファイアダガー :消費魔力3
・フレイムランサー :消費魔力15
・クリエイトゴーレム:消費魔力10
能力値
生命力:1650/1650
魔力:2850/2850
筋力:6
体力:10
知性:7
敏捷:5
運 :8
中級魔法のほか加工と言う魔法が増えていた。
加工魔法は文字通り物質の形状を加工する為のものだ。
なんでも分子の結合を緩めて配列を変えることで形状を変えるらしい。
使用者のイメージの影響をダイレクトに受けるので精密な加工に向かないのが残念なところだがざっくりとした形に変形させることが出来るのでゴーレム作りには非常に便利だ。
・・・最近自分がゴーレム職人になっている気がする。
それと個別魔法で増えているのは宿題で覚えたもので、基本属性はある程度使えるようになって置くようにと言う師匠達の教えがあってのことだ。
もっとも一番使えるのが初級土魔法の落とし穴の魔法と言うのが皮肉だ。
こうして午後は修行と薬作りと領地の繁栄に利用できる技術の習得で過ぎてゆく。
特に薬は領民の生活に重要な役割を果たす、なにしろ即効性の効果が期待できるので丸薬を多く作っておき、病気は回復魔法で治せないので薬を作れる人間の需要がなくなることは無い。
オレが子供なのに領主として受けいれられているのも製薬魔法のお陰なのだろう。
仕事を手伝えない子供達から薬の材料の薬草などを買い取っているのも理由かもしれない、何しろ一家の収入が増えるのだから。
まぁこっちは出来た薬を仕入れよりも高く売れるので損はしていないしもちつもたれつと言った所か
夕方になるとメイドが食事の支度が出来たことを伝えてくる。
夕食を妻と頂きながら今日会ったことを話す、コミュニケーションは重要だ。
食事が終わりまったりした時間を過ごした後は妻と二人で風呂に入る。
この世界一部の貴族以外に風呂と言う概念は薄いがアルマは仮にも王族、風呂はあったほうがいいだろうと思い作った、ここでもゴーレム大活躍だ。
早速加工の魔法を使い風呂を作る、娯楽の為に全身全霊をかける。コレが日本人テイスト。
二人で入る分には魔法でお湯を作るのも朝飯前だしな。
二人で体の洗いっこをした後、湯船で妻を抱っこしながら浸かりイチャイチャする。
たいへん悪くない。
なんというかエロい事をしなくてもお肌の触れ合いというのは大変心地よいのだ。
コレが勝ち組の心境と言う奴か。
風呂を出た後は歯を磨く、磨き残しが無いようにお互いの口の中をチェックし磨き残しを磨いてあげる。
歯磨きが終わったらベッドに入り寝物語をしながら就寝。
こうして俺の一日は終わる。
『あ、あークラフタ君、まだ起きているかな?』
・・・まだ終われないようだ。




