未来への道しるべ
当事者達は流されるばかりだったりする。
ラストの会話が入ってなかったので追加修正いたしました。
結局、陛下は本当に俺達の結婚式を行った。
新興貴族が王女様と婚約とか婚約をすっ飛ばして結婚とか15の成人を待たずして結婚とか色々突っ込みたいところはあるけど結婚する事になった、というか結婚した。
さすがに最近の王都はお祭り騒ぎが多かったので今回は控えめな式になるかと思ったがその考えは甘かった。
王族の結婚式とあって大量の出店は出るは記念コインは発売されるわと利に聡い商人たちはこぞって商売を始め気の早い奴等は子供の性別はどっちかと賭けをしている。
まぁ俺は見世物になってそれ所じゃなかったんだけどね。
今にして思うとこの結婚式はアルマを助けた頃から既に準備されていたような気がする、というのも早いのだ。
普通こういったイベントはもっと時間をかけて準備をするモノ、現代日本でもそれなりの準備期間を要する。
けど通信インフラも怪しいこの世界でコレだけ早く急遽決定した王女の結婚式が順調に開催されると言うのは明らかにありえない。
絶対準備してたな。
大勢の人々に祝われ俺達の結婚式は無事終わった、もっとも城下では今も祭りが行われている。
式は終わり今はアルマの部屋で一緒にゆっくりしている、さすがに10歳なので初夜とはいかないがそれでも微妙な空気ではある。
本来の俺は20歳ソレが10歳の女の子と結婚とは、ここが日本でなくて本当に良かった。
「……」
「……」
やっべ、気まずい。
10歳の女の子と結婚してどんな会話したらいいんだよ。
正直経験値が足らなすぎていい話題が思いつかない。
「あの…クラフタ様」
「あ、ああ」
俺が悶々としていたらアルマのほうから声をかけてきた。
「私達…結婚したんですよね…」
「ああ…」
しまったー!思いっきり会話をぶった切っちまったー!!「ああ…」じゃねぇよ俺!!!
「クラフタ様は私との結婚お嫌でしたか?」
「い。いやそんなことは無い!断じてない!!」
「でも結婚式が終わってからずっと難しい顔をされていましたし、私のような子供には魅力を感じないのかと」
「そんなことは無い!アルマはすごく可愛いし大人になったらすごい美人になるよ!!」
コレは偽らざる感想だ、初めて会ったときとは違い今は活力に満ちている。
それにときどきこっちがドキッとさせられるリアクションをとることもあるくらいだ。
「よかった…」
アルマがほっとして息を吐く、ほらこういう表情が凄くエロいんだ、艶っぽいというか何というか。
とにかく姉のほうは妹を見習うべきだ。
「アルマのほうこそ俺でよかったのか?自分で言うのもなんだが俺は何処の馬の骨とも知れない人間だぞ」
「私がクラフタ様を不満に思う理由なんてある訳がありません、だって貴方は私の…」
トントン
アルマが言いかけた所でドアがノックされる。
「クラフタ様、陛下がお呼びです」
ラヴィリアがなぜかドアを開けず扉越しに報告してくる。
気を使ってるのかな、夫婦とはいえ10歳ですよ?
「わかった、すぐ行く」
何処で待っていると聞こうと思ったがその必要は無かった。
ドアを開けると陛下がそこにいたからだ。
とっさに陛下に臣下の礼をとる。
「よい、今宵は義理の息子に会いに来たのだ。アルマ、すまぬがそなたの夫を暫く借りるぞ」
「夫・・・っ!は、はい父様!」
夫と言うワードに反応したアルマはほほを赤らめてその言葉をかみ締めるように身をよじった。
何この生き物超可愛い。
「ついて参れクラフタ」
「はい」
陛下の言葉に従いついて行く。
陛下の歩みは謁見の間では無く城の上層に向かっていた。
何処へ行くのか聞きたいところだが事の他陛下の顔が真剣だったので黙ってついて行く。
暫く歩くと一つの部屋の前にたどり着く。
「入るが良い」
そこは一言で言えば私室だった、秘密の会合をする密室でもなければ国家機密の研究を行う研究室でもなかった。
「余の部屋に入ることの出来る者は限られておる、光栄に思うが良いぞ」
本当に只の私室でした。
だが陛下が棚においてある置物を触ると周囲の空気が変わった。
「この部屋には結界により外部と隔絶する仕掛けがある、これで聞き耳を立てられることも無い。
良いかクラフタよ、コレより話す事は国家機密である。他言無用であるぞ。」
秘密の会合で国家機密でした。
「我が王家の者には代々予知の力を授かって生まれてくる者が多い」
「予知ですか?」
「うむ、力の大小、予知の仕方は異なるがな」
うーむ、予知能力か。なんとなく見えてきたぞ。
「ゆえにわが国の真の王位継承権とはより強い予知能力を持つか強い予知能力を持つものを伴侶に迎えるかの2択なのだ」
「では陛下も」
「うむ、余は白昼夢と言う形で未来を垣間見ることが出来る。クラフタよおぬしの事も予知で見えたぞ」
なるほど、コレまでの迅速すぎる決断や行動は予知能力あっての事か。
たしかに未来が見えるなら周りから見て突拍子の無い行動でも確信があるからこそか。
「予知の力は絶対ではない、変革をもたらす因子が関わる事によって変動することもあるのだ」
「因子ですか」
「お前だクラフタよ」
俺ですか!?
「我が娘アルマは本来3ヶ月前に死ぬはずだった。
ソレは長く変わらぬ結末、それゆえ余は覚悟を持って接しておったのだ。
だがある日を境に余の見る白昼夢は変わった、アルマが春になっても生きていたのだ。
余は確信した、運命を変革する因子が現れたのだと。
それと時を同じくしてフィリッカが失踪した、あれも自らの持つ力で運命の変革を感じたのであろう。
余の予知もそれを良しとした、アレが変革の因子を連れてくる光景が見えたからだ」
陛下が俺を正面から見据える。
「お主に始めてあった時、余はコレまでにないほどハッキリとした白昼夢を見た、そこには美しく成長した我が娘が幸せそうに笑っておった」
陛下は遠い目をしながら虚空を見つめる、その光景を思い出しているのだろう。
「美しく成長されたのですか」
「うむ、アレの・・・」
陛下が言葉を切ってこちらを見てくる。
「?どうかなされましたか?」
「気になるか?」
「は?」
陛下はにやっと笑いながら聞いてくる。
「アルマの成長した姿が気になるか?」
「っ!・・・・・・・・・・」
不覚!ついうっかり口に出してしまった。
「そうであろうな、何しろ自分の妻であるのだからな」
陛下がニヤニヤと此方を見てくる、なんか弱みを握られた気分だ。
「陛下、話はそれでおしまいですか?」
「む、いやまだだ、ともあれ余はお主が現れたことでアルマだけではないわが国にとって変革をもたらす存在であると理解したのだ」
「俺を貴族にしたことも領地を与えた事もアルマを婚約者にしたことも婚約を飛ばして結婚させたこともですか?」
「む、むぅ、いやな婚儀に関してはそれだけでも無いのだ」
歯切れの悪い返事だ、あの人等絡みか。
「試練の谷の守護者の方々ですか?」
「うむ、お主は初代様より精霊石を授かったであろう?」
「はい」
そういって俺は懐に仕舞っていた精霊石のネックレスを取り出す。
「それは初代様の加護の証、言うなれば王にふさわしい存在と認められた証だ」
「でも俺は」
王様なんてノーセンキュー
「うむ、さすがに初代様もそこまでは望んでおらんだろう、それはお主を王族の一員として認める証明であると余は判断した。
それを寄越されては対外的な意味でもお主を認めないわけにはいかん、ゆえに急ぎ婚儀を進めたのだ」
「でも陛下は予知でわかっていたのでは?だからこそこんなに早く結婚式の準備を出来たのではないのですか?」
「予知も完璧ではない、元々は余が見た予知からお主等を婚約者同士にする事でこの国に縛りつけようと考えておったのよ。
その準備もまずは婚約から始める予定だったのだがまさか初代様の加護を得るとは、まぁ準備が無駄にならんでよかった」
結局陛下の予知に踊らされてたって感じだな。
「だが見返りはあったであろう?」
俺の表情から考えていることを読んだ陛下は楽しそうに笑う、だが次の瞬間真剣な表情になる。
「クラフタよ、お前をここに呼んだのはただ王家の秘密を明かすためではない、
この話は王国における最高機密、つまり王族のみに伝えられる内容だからだ。
それを外部に漏らせば命は無いぞ」
「では何故俺に?」
幾ら姫と結婚したからといっても俺自身は王族の血筋ではない、何を意図してこんな話をしてきたのか。
「よいかクラフタよ、予知の力は王家の者に宿る」
あ、そういうことか。
「つまりアルマも予知の力に目覚めるやも知れんと言うことだ」
アルマは王族、つまり予知の力を持っている可能性が高い。
「力の発現には個人差がある、ゆえにアルマの力が目覚めた時はその言葉真摯に受け止めよ」
「はっ」
アルマは俺と一緒にターゼの地に行くことになる、ターゼの地でアルマがその力に目覚めた時、その力を知らなかったら王家の秘密が外部に漏れる危険があるからだろう。
「くれぐれも内密にな」
「はい!」
「うむ」
俺の返事に満足したのか陛下は置物を操作して結界を解除する。
秘密の会話は終わったようだ。
「長話が過ぎたな、そなたの伴侶の元に帰るが良い」
「は、失礼いたしました」
「クラフタよ」
部屋へ戻ろうとしたところで陛下から呼び止められる。
「はい?」
「クラフタよ、アルマの事幸せにするのだぞ・・・・・・」
目がマジだよ、完全に親バカモード入っとるな。
「もちろんで御座います陛下」
その後数回陛下から念を押された俺はようやく解放される。
だがさっさと帰ろうとしている時ほど邪魔が入るもの。
「クラフタ君、ちょっといい?」
今度はフィリッカだった。
フィリッカに連れられて城のバルコニーに連れてこられる。
「ねぇクラフタ君、私前に言ったよね」
「何をですか?」
「アルマの事、他人事だって」
「言いましたっけ?」
そういえばそんな事いってたような。
「私ね、あの子の事良く知らなかったんだ。実の姉妹なのに。
私は生まれてすぐ予・・・素質を認められて王位継承者の一人として教育を受けたわ、
小さい頃からとても厳しくて、生まれた妹が重い病気だってことも後から知ったわ。
そんなだから妹の事も他人としか感じなくて、メイド達がコッソリと妹が病気でもうすぐ死んでしまうって話しているのを聞いた時も特別な感情は沸かなかったの、かわいそうだなって思うくらいで。
そしたらね、その日夢を見たわ、痩せ細って事切れた妹の姿を。
ああ、ホントに死んじゃうんだってただそれだけしか思わなかったの。
薄情だよね」
一気に喋って疲れたのだろう、フィリッカはそれきり黙る。
しかし夢、それがフィリッカの予知か。
「そんなある日見た夢は違ったの、その夢では妹は笑っていたわ、とても幸せそうだった。
気になった、病気でもうすぐ死んじゃうのに何でそんなに幸せそうに笑うんだろうって。
それからの夢の中の妹は何時も誰かと楽しそうにしてるの、うらやましかったわ。
そして不思議だった。」
陛下の言っていた変革が起きた時のこと事か。
「だから私は知りたくなったの、夢の中の妹が楽しそうにしていたわけを。
その
だから城を飛び出したわ、セントラルの街の近くに現れたドラゴンのドラゴンドロップを手に入れれば妹の延命が出来る。
そうすれば何か変わるって思って」
凄いこと考えるな。
「外の世界は驚きの連続だった、王位を継ぐための勉強が全然役にたたなかったの、すっごい危ない目にもあったわ。
でも楽しかった、ワクワクした。お城の外にこんな世界があるなんて思いもしなかった。
それと同じくらい妹が可愛そうだと思えたの、だってあの子はこの世界を知らないんだから、寝たきりのあの子は私が知っていることすら知らない。
それはなんて悲しいんだろうって」
フィリッカは泣いていた
「君にあった時直感したの、君がアルマを笑顔にする人だって」
フィリッカは両手で俺の手を掴んで懇願してきた。。
「お願い、アルマを幸せにしてあげて」
コレまで妹に何もしてやれなかったことが悔やまれるのだろう
彼女の後悔を取り除く為に俺ははっきりと答えた。
「もちろんです」
俺はアルマを幸せにするとフィリッカに約束したのだった。
なお帰りが遅くなってアルマの機嫌が悪くなったのはご愛嬌だ。
アルマさんホントすみませんでした。
コレにて立身出世編は終了、次回より内政編に入ります。




