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冒険の準備

冒険には準備が必要です。

パーティを組んで3日が経った。


さすがに仕事があるのでそのまますぐ冒険とは行かなかったので土曜日の夜に打ち合わせをして日曜日の早朝に冒険をすることになった。

社会人ですから。

もちろん平日に何もしない手は無いので仕事から帰宅したら即向こうに転移し準備を行う。


まずレンタル装備を借りる、装備方針はパーティを結成したときに固まったので魔法に専念できるように杖を借りる。

防具は柔皮の鎧、戦闘には出ないがまだLv1なのと現場では何が起こるか分からないことから防御力を優先する。

ちなみにカインのローブは防御力は期待できないが魔法を使用した際に放出拡散される魔力を逃がしづらくする効果があるのだとか。

といっても10の魔力を放出したら0.1くらい残るかといった感じらしいので長丁場でも無いとあまり実感できないらしい。

でもお高いらしい。


あとは薬の素材を探して薬をいくつかストックしておく。

町の外に出ると魔物が現れ危険な為、現状はおっちゃんに紹介してもらった道具屋に頼んで薬の材料を卸してもらっている。

といってもお金が無いので完成した薬をいくつか代金代わりに提供することになっている。

ゆくゆくは本格的に薬を置いてもらおう。


ちなみに同じ薬でも飲み薬と丸薬の2種類を選べる物があり飲み薬は効果が高く即効性、丸薬は長持ちする。

店で置くのはやはり丸薬が多い、飲み薬は薬によって消費期限が変わるので注意が必要だ。

現在は丸薬を作り冒険の日の前日あたりに飲み薬を用意する、あと飲み薬を作る際は容器が必須だ。


ただ薬を作るのもつまらないので道具屋経由で用途が限定された薬を求めている人を探してもらって小遣い稼ぎをしている。

というのもこの町には高度な薬を作れる薬師がいないらしく、薬がほしい人は2週間に1度行商がくるのを待つか徒歩で数日かかる町に行かないといけないらしい。

そんな時におっちゃん経由で紹介されたアルケミストの俺は町にとって喉から手が出るほど欲しい人材だったわけだ。

道具屋のほうから話を持ちかけて来たのでこちらも二つ返事で受けてしまった、ちなみに依頼1件につき銅貨1枚の手数料がかかる。

まぁコネが無いし実績0だから仕方が無いんだけどね、いずれは道具屋を仲介せず直接依頼されるようになるだろう。


そんなわけで今日も作った薬を道具屋に持っていって代金を受け取る。


「今日の薬持って来ましたよー」

「お疲れさーん」


ねぎらいの声をかけるのは2代目店主のロイだ。

先代は腰をやったのでロイに店を譲ったということらしい。


「オヤッサンの腰の薬に子供の虫歯薬を3つ、おばあちゃんの風邪薬に鍛冶場の火傷薬を5つです。」

「はい確認しましたよっと、クーさんの薬は良く効くって好評だよ。」

「そりゃありがたいですね」


これはスキルの中級術式強化の恩恵だろう、スペルによって作った薬はスキルによってより高い効能を発揮しているようだ。

ロイから代金を受け取りつつ世間話に興じる。


「親父もクーさんの薬のおかげで腰が楽になったから仕事に戻るなんていってるよ」

「そりゃ結構なことで」

「あんまりはしゃぐとまた腰をやらかしちまうんじゃないかねぇ」

「クセになると怖いですね」

「ああ」


余談だがこの世界、地球には存在しない薬がある。

たとえば飲むと直る虫歯薬があるのだが恐ろしいことにこの薬、複数回使用すると完治する。

それも欠けた歯ごと、どうなってるんだこの世界。

そんなわけでこっちの世界で薬を買って治療する人も結構いるとか。


「クーさん今度冒険に出るんだって?」

「ええ、成りたての新人なんでまずは緩い所から慣らしていきますよ。」

「でもマックスさんの所だからねぇ、大丈夫かねぇ」


なんか不吉なことを言い出した。


「なんかあるんですか?」

「ほらあの人なんていうか大雑把だからけっこうやらかすんだよね」


知っています。


「みたいですね」

「そういえばクーさんもマックスさんと同じニホンジンなんでしょう」

「ええ」


この世界、アルケルティアでは俺達異世界人の存在は秘密となっている。

俺たちはニホンという遠い国から来た異国の人間という設定だ。


まだ異世界である日本との交流は試験段階で本格的な交流の前のテストケースとして俺達スカウトされた人間が来ている。

その性質上こちらの世界に来るには秘匿義務を守る事ができこの世界に害をもたらさないことが重要視されるのだが一部のスカウトが大変いい加減なので上の人たち、というか事務の人たちが大変困っているらしい。

誰の所為とは言わないが。

さらに困ったことにそういう人が連れてきた人材に限ってこの世界に有益なクラスやスキルであったり、優秀な冒険者になる事があるので大変扱いづらいとか。


おかげで俺が来たときはまたおっちゃんがやらかした!ということで職員の皆さんがおっちゃんの説教に気をとられてこうした基本知識を教わり損ねたのだ、後日協会から使いが来て説明を受けたのだが。


ちなみにこちらの世界に初めて来た日に日本に戻ったら速攻役所で書類を書かされた、向こうの世界で素性が知れるとまずいが国としては関係者の素性を知りたいのは当然だ。

書類の関しては向こうで得た収入を此方の世界で換金するために必要なものでもあったので素直に書いた。


まずアルケルティアで得た物は日本には持ち込み禁止、逆も然り。

これは疫病とかの病気の満ちこみ対策、そして異世界の道具が原因で騒動が起きない様にする為。

基本アルケルティアで得たものはアルケルティアに置いて来る、貸し倉庫を借りたり裕福な冒険者の中には向こうで家を買う人もいるそうな。

またお金に変えたい場合はその時のレートに合わせて換金できる。

その際に支払われるお金は特殊なボランティアでのバイト代扱いになる。

中には完全にアルケルティアで生きていくことを決めた人たちもいて、

そんな人たちは国に死亡届を出すか協会に会費を払って公務員扱いにしてもらうことができる。

公務員扱いについては冒険者が事故や怪我、年齢が原因で冒険ができなくなったりやはり故郷が恋しくなった時に帰れるようにするための保険だ。

逆に死亡届を出した人は転移のリングを没収され日本に帰れなくなる。

俺はどうするかまだ決めていないので副業状態だ。


「クーさんはいつまでこの町にいるつもりなんだい?」


ロイの質問で意識が現実に戻ってくる。


「まだ来たばかりなんで2,3ヶ月はいますよ。それ以降はその時になってから考えます。」

「ウチとしちゃあこのまま定住して欲しいもんだね、薬を作れる人はどこの町でも

引っ張りだこだからね」

「そんなに少ないんですか?」

「ああ、薬師系のスキルは絶対数が少ないんだ、回復魔法では傷は直せるが病気は治せない。

それで薬師に弟子入りして丁稚として簡単な薬の調合を教わり数年立ったら村に帰って簡単な薬を調合する薬師になるんだ」

「なるほど」


クラスとしての薬師じゃないからあまり高度な薬は作れそうも無いな、そういった薬を作るには専門的な機材も要るし裕福な家でもないとまず用意できないだろう。


「じゃあそろそろお暇しますよ」

「またよろしく」


その後受け取った報酬で冒険に必要な品をいくつか購入して俺は帰路についた。

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