表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/178

王との闘い

偉い人達には面子って大事なんです。

『時にクラフタよ』


アルテア様の出した試練の谷攻略の証で有る門をくぐろうとした俺にアルテア様が声をかけてくる。


「何でしょうかアルテア?」


『うむ、門をくぐる前にお主に言わねばならんことがある』


「はぁ」


なんだろ、試練を攻略した件に対して注意事項でもあるのかな、他言無用とか。


『お主が奪った皆の武具を返してもらえんかのう』


ですよねー、そういえば奪った武具は全部タールとジョッキに持たせてたわ。


「すみません、すぐ返します」


『まったく全員命より大切な戦士の証を奪われるとは情けない』


アルテア様は歴代の王様達のふがいなさにご立腹のようで。


『いやいやアルテア様、アレは初見で回避するのは不可能ですぞ』


『然り、いかにアルテア様といえどアレは回避できますまい』


『うむ』


『確かに』


やめてー煽らないでー、絶対面倒なことになるから。


『ふっ、ふふふふふふふ』


アルテア様が低い声で笑い出す、一歩遅かったか。


『面白い!お主達が其処まで言うのなら我がその力試して見せよう』


あちゃー


『アルテア様、その前に我等の武具を回収しても宜しいでしょうか?』


『うむ、許可する』


自分達で話題を振っておきながらマイペースな死体様達です事。


歴代王のアンデッド達がタールとジョッキから武具を回収していく姿を見てふと疑問を口にする。


「そういえばその武具の持ち主の方々は思いっきり粉々に砕いたはずなんですがなんで元に戻っているんですか?」


『うむ?お主知らんのか?試練の谷に召喚された歴代の王は試練が終了するまで何度でも復活するのだそ』


「何度でもですか」


『うむ、何度でもだ』


早々に試練を終わらせて正解だったな、下手してたら多少ダメージを与えても即回復するアンデッド集団に追い詰められてたわけだ。


『アルテア様、回収終わりました』


『よし!それでは始めるぞ』


ヤル気満々だなぁ、こりゃ逃げれそうもない。


「やらなくちゃダメですか?」


『安心せい、負けてもちゃんと合格にしてやるでな』


ああ、それは安心だ。


『では行くぞ!!』


アルテア様が腕を振るとその手には黒金色に輝く槍が握られていた。


『これこそは我が愛槍、狂槍フォルリィア!!狂気の精霊の力を宿した魔槍よ!』


何かヤバそうなの来たー!!!!


『ふははははははは』


槍を手にした途端アルテア様がやばい感じにテンション上がり始めた。


『少年、フォルリィアを手にしたアルテア様は時間が経つにつれ凶暴になっていく』


『であるから、やばいと思ったら即降参するといいぞ』


『ちっとは頑張ってくれんと我等の立つ瀬もないので気張れよー』


王様達は完全に観戦モードで昨晩の宴会の2次会モードだ、地獄に落ちろ。

王様達の軽い空気とは裏腹に凄まじい勢いでアルテア様が魔槍を片手に突撃してくる。

迎撃すべく構えを取ろうとするも既に魔槍の先端はこちらの懐まで迫っていた。


「早っ!」


ブリッジせんばかりの勢いで仰け反って避けるが突き込まれた魔槍はいつの間にか引き込まれていた。

驚くべき速度で再び突き込まれえる魔槍を横に捻って避けるが槍が連続で突き込まれてくる。


バックステップで避けるも飛んでいる自分を槍が追撃してくる、七天夜杖で防御するも体が地面に落ちる前に魔槍で突かれ続けているので満足な迎撃が出来ない。

七天夜杖で守りきれない箇所から血が吹き出てくる。


『おお、アルテア様の浮遊突撃は何時見ても見ごたえがあるのう』


『さよう、迂闊に受けると体を浮かされている間中、攻撃を受け続ける事になるからのう』


『おお怖い怖い』


観客ウゼー!!

だがこっちも攻撃されてばかりじゃない、


「ストームウォール!!」


風の魔法壁を発生させて攻撃を弾きその隙に体勢を立て直す。

魔法壁を迂回してきた所を狙い撃つ!!


『甘いわぁぁぁあぁぁ!!』


その瞬間風の魔法壁が魔槍の一閃でかき消された。

んな馬鹿な!!!


『出た!狂槍フォルリィアの力!狂気の精霊の力で格下の使い手の魔法を霧散させる力は健在じゃわい!!!』

『しかも槍の能力なので使い手は一切消耗しないと来たものだ』


解説役多すぎね?

しっかし魔法無効化とか卑怯くさいわー?


「ファイヤダガー!拡散!術式強化!」


スキルを2重掛けして3本の火の短刀を作り出し更に


「操作!」


スキルで自在に動くようになった火の短刀を動かしながら七天夜杖をツインソードモードに変形させて突撃する。

火の短刀を左右後方から、正面を七天夜杖で突撃!

4方からの攻撃裁ききれるか!?


「喰らえ!」


『甘いと言っておるわぁぁぁぁ!!』


後ろも見ずに槍を全周囲に振り回すと触れた瞬間に魔法がかき消されてしまった。

ちょっ刀身以外も無効化対象ですかー!

こんな簡単に無効化されるとか、この世界ってもしかして魔法の地位低くね?

カインがグレた理由もわかるわぁ。

とはいえ此処で引くことも出来ないこのまま双刀で切りかかる。

槍を振り切った今ならこちらの攻撃を防ぐことは出来ない。


『遅い!』


魔槍を振り切った姿勢のままほんの少し足首を動かして姿勢を変えるだけでこちらの攻撃を避ける。

なにその不思議体裁き。


「ブロックゴーレム!アルテア様を掴め!」


ゴーレムに指示を飛ばし動きを封じさせる。


『遅い遅い遅い!!』


4体のゴーレムを軽々と避けついでとばかりに魔槍で手足を切り裂きこちらに向かってくる。

哀れブロックゴーレム達は破壊されて芋虫のように地面を這っていた。


「タール!ジョッキ!アルテア様を攻撃!!」


『遅すぎて壊してしまうぞ!!!』


言葉通りタールとジョッキが槍の連撃を浴びて破壊される、そう破壊された。


『脆いの…うぇ!?』


破壊されたタールとジョッキから大量の属性石や魔物の素材があふれ出る。

それに驚いたアルテア様は一瞬動きを止める。


「今だ!」


空中跳躍スキルを使用し溢れた素材を飛び越えて切りかかる。


「くらえぇぇぇ!!」


『その程度の攻撃!!』


即座に迎撃が入るがかまわず双刀を振り切る。

その瞬間「パキン」という甲高い音と共に双刀の片割れの刀身が根元から割れた。


「折れたぁぁぁぁぁぁ!?」


まーたやっちまったぁぁぁぁぁ!!、昨日の戦闘で嫌な音がしたと思ったんだ。

七天夜杖は変形させることで様々な用途に対応するマルチウエポンだがその分機構が複雑で壊れやすいと言う欠点がある。

やっぱり機構を減らすべきかなぁ、ロマン武装の弱点かぁ。


『ふはははははっ残念であったなぁ、その程度の攻撃では我には届かんぞ!」




確かに七天夜杖は折れてしまったが問題はない。

ブロックゴーレムたちはちゃんと役目を果たしてくれたのだから。


後ろから迫ってきたブロックゴーレムにガシっと拘束されるアルテア様。

手足を切り裂かれたブロックゴーレム達は残った部位を他のゴーレムと繋げていびつな人型を維持していた。


『ん?』


間の抜けた顔で自分を掴んだブロックゴーレムを見るアルテア様。

俺は残った双刀の片割れの峰でアルテア様の手を打ち槍を叩き落とす。


『あ痛っ!』


「ピットホール」


アルテア様の足元に小さな、しかし深い穴が開く。

そしてゴーレム達の手が離される

その瞬間、アルテア様は落とし穴に落ちて行った。


『ほぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!!』


勝敗は決した。


「これで満足ですか?」


『まだだ!我はまだ負けては。痛っ!痛い痛い!!』


ランスモードの石突きでつつく。


『こ!コラやめんか!!痛い!地味に痛い!』


「まだ続けますか」


『わ、わかった、我の負けでいいからつつくなぁー』


勝った…戦いはいつも虚しい…


「勝ったぞー!!」


まぁそれはそれとして勝利の雄叫びは上げますけどね。


『おー』


『よくやったぞー』


『よし、俺の勝ちだ!!』


『くっそ!負けた!!』


『いやー酒が美味い』


『はははははは!落ちた落ちた!!』


マジこの連中傍観に徹してたな、つか賭けてんなよ。

しかしヤバかった、まさか此処まで早いとは、普通に落とし穴を掘っていたら避けられるところだったわ。

それにあの魔槍、格下って言葉がどういう意味か知らんが魔法無効化能力はきついよなぁ。


足元に転がった魔槍を鑑定してみる。


『狂槍フォルリィア

狂気の精霊が宿った魔槍で所持者のLv以下の魔法を槍に触れた時点で無効化する。

精神に作用する魔法、範囲魔法は槍を手にしていれば所持者のみ自動的に無効化する。

魔法無効化をしても使用者は生命力、魔力を消耗する事はない。

呪いの武器でもあり強靭な精神力を持たなければ狂気の精霊に精神をのっとられ発狂してしまう』


うーわ、この槍やばいわ、いろんな意味で。


『しかし我を討ち果たすとは天晴れよ!褒めてつかわす』


王様達に引っ張られて落とし穴から抜け出るアルテア様。


「恐縮です」


『しかし子孫を助けたという薬に攻撃魔法、果てはゴーレムか。

まるでクアドリカ達のようじゃな』


「え?師匠達を知ってるんですか?」


『何じゃお主、あやつらの弟子だったのか?』


あ、しまった。


『あやつらは3,400年前の阿呆の所為でこの国から姿を消したと思ったんじゃがのう』


骸骨の一人が恥ずかしそうに頭を掻く、アンタが原因かよ。


『お主あやつらとは何処であったのじゃ?』


むーん、言い逃れがしにくそうな状況だなぁ。


「旅の途中で師事を受けただけですので今何処にいるかはちょっと」


知らないと言っていない。


『それは残念じゃな、久しぶりに会って酒でも酌み交わそうと思っておったのじゃが』


「用件も終わった様なので、僕はコレで」


『まてまて、我等に勝ったのだ。おぬしには褒美をやろう』


「褒美ですか」


『うむ、この精霊石のペンダントをおぬしに授けよう!』


「精霊石!」


『『『『おおおおおぉぉぉ!』』』』


精霊石といえば属性石に文字通り精霊が宿った希少な宝石だ。

単純に宝石の価値も高く武器の素材として使用すれば魔法の武器になる。

おそらく狂槍フォルリィアも精霊石が使われているはずだ。


『アルテア様から精霊石を賜れるとは気に入られたな小僧』


『はっはっはっ、大したもんじゃ』

 

王様達もほめてくれるって事は本気でいいものなんだな。


「ありがとうございますアルテア様」


『それはお主に幸福を授けてくれる、肌身離さず持っておれよ』


「はい!」



こうして俺は王様達に見送られ試練の谷を無事攻略することが出来た。


「あ、ゴーレムと素材忘れてきた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ