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治療再開

本格的な治療が始まります。

「明日から本格的な治療に入ろうと思います」


魔力欠乏症の治療の為アルマの診察を終えた俺はアルマにそう告げた。


「本格的…ですか?」


アルマが期待と不安がない交ぜになった表情で聞いてくる。


「今日まで経過を見てきたけど特別具合が悪くなるようなことも無かったしステータスにも異常は出ていない。

日常生活に支障が無いくらいに体力も回復している。陛下の許可を取ったら治療を始める予定だよ」


白髪に近かった銀髪も今では美しいつやを取り戻し儚げな印象のアルマを彩っている。


「もう始まってしまうんですね」


「どちらかと言うと結構ゆっくりとした治療だったけどね、何しろ前例が無い治療法だったからね」


薬を仕舞うと改めてアルマに向き直る。


「さてアルマ、君に再度確認したいことがあります」


「は、はい」


「君の病気、魔力欠乏症は未だかつて誰も完治した事の無い不治の病だ

症状の差はあれ最終的には一人の例外もなく体内の魔力が枯渇して死んでいった。

けれど俺の師匠の発見した治療法で君は日常生活に不自由しなくなるほど回復した」


俺の言葉にアルマは無言で頷く、さてここからが本題だ。


「しかし君の治療は前例がない分危険を伴う、かなり苦しい思いもするだろう。

苦しいだけならまだ良い、だが最悪の場合…」


「君は死ぬだろう」


俺はアルマに冷徹に事実を告げる。


「今のままでも薬を飲み続ければおそらく死ぬことは無いだろう、危険を冒す必要は無いんだ」


一拍の間を置き訪ねる。


「治療をしないと言う選択肢も君には有る」


そこで言葉は完全に途切れる。

あとはアルマの決断次第だ。


アルマは瞑想するように目をつぶりジッとしている。


「クラフタ様」


「なんだい?」


「薬を飲んでいれば確実に安全が保障されるのですか?」


アルマが聞いてくる。


「絶対の保障は出来ません、アルマ様のご病気は未だ完治した者の居ない病です。

それゆえ薬によって症状を緩和したことで今後どのような変化が訪れるか解らないのです」


「危険を覚悟の上で完治する保証の無い治療を行うか症状を緩和させ現状を維持するですか」


「そうなります」


「クラフタ様」


「はい、何でしょうか」


いつかの会話を再現しながらアルマが言葉をつむぐ。


「私の心はあの日から変わらず…」


アルマは目を開き俺に告げた。


「私の治療をしてください」


「この身の及ぶ限り全力を尽くすことをお約束いたします」




こうしてアルマの意思を受けとった俺は陛下とバクスターさんに治療の開始を行うことを報告した。


「とうとう始まるのか」


「俺達は何をすれば良い?」


「特に何も、治療に必要なものは揃っていますから」


「なぁ少年、後学の為に俺も現場に…」


「申し訳ありませんが秘伝ですので」


「バクスターよ、クラフタを困らせるでない」


「申し訳ありません陛下」


知的好奇心が顔を出したバクスターさんを陛下がたしなめる、

陛下的にはへそを曲げて中止されたらどうするんだと言うニュアンスだが。


「頼むぞ」


俺が執務室を出るとき陛下は小さく呟いたのを俺の耳は聞いていた。




部屋に戻ってアルマの治療の準備…と行きたい所だが正直治療に必要なのはドレインのスキルだけだ、

後はせいぜいマジックポーション位だろう。


必要なものを用意したらもう準備は終わりだ、明日は全力で治療に挑むため万全の体制で挑まないと名。

俺は机の中から1冊の本を取り出し読み始める。

この本はミヤが師匠達から頼まれて用意した教科書だ。

本来俺が学ぶ筈だった知識を俺が自分で学べるように用意してくれたのだ。

次に師匠に会うときにがっかりされないように俺は勉強するのだった。



翌日


「それでは治療を始めます」


「はい!」


アルマが強い口調で答える、緊張しているようだ。


「ラヴィリアさん」


「はい」


「申し訳ありませんがこの治療法は師より受け継いだ秘伝ですので席を外していただきたいのですが?」


「で、ですが…」


「ラヴィリア、クラフタ様を信じて」


侍女としてアルマの傍を離れるわけには行かないのだろう、ラヴィリアをアルマがなだめる。

まぁプロ意識が強いのは良いことだ。


「承知いたしましたアルマ様」


「外で誰かが入らないように見張っていてください」


「承知いたしましたクラフタ様」


ラヴィリアが外に出ると


「へ、陛下にバクスター様?このようなところで一体何を?」


「「しー声が大きい」」


「も、申し訳ございません」


何やってんのあの人たち。




「じゃあ始めるからコレを付けるね」


そういって目隠しとヘッドホンを取り出す。


「これは?」


「コレを使って目と耳を封じることで魔力の流れにのみ集中してもらう」


本当はどんなスキルを使っているかバレないようにするためです。


「いいかいこの世界の全ての人間の体には全身に魔力を流す管が有ると考えるんだ。」


「管ですか?」


「そうこんな感じでコップを体、管を魔力を全身に行き渡らせる器官と考えるんだ」


「はい」


木をくり抜いたのパイプとコップを2つ出して見せる。

パイプの径はそれぞれ違う。


「こっちが普通の人、こっちが魔力欠乏症の人」


そういってコップの上にパイプを持って行き水を流す、

2本のパイプは内側の径が違うため同じ量をパイプに流し込んでも径の小さいほうのパイプではコップに全て溜まるには時間がかかる。


「でも君たち魔力欠乏症の人たちはこの管が詰まっていたり常人よりも細かったりする、

だから必要な魔力が体中に上手く行き渡らないんだ。」


「はい」


「だからこの管に魔力を多く流し込んで無理やり広げる」


「こ、壊れてしまわないのですか?」


「壊れるかもしれない」


「…」


「今ならまだ」


「いえ、やってください!!」


アルマが俺の言葉をさえぎる。


「私は決めました、決めたんです」


強い眼差しで俺を見る。


「貴方を信じると」


「…判った」


「じゃあ始めるよ、苦しいけど我慢してね。でももうだめだと思う前に言うんだ、1回で治るものじゃないから無理したら体調を整えてまた治療を再開するのに時間が掛かるから」


「はい」


そういってアルマに目隠しとヘッドホンをかぶせる。

なんというかベッドにパジャマ姿で横たわる女の子に目隠しとヘッドホンって言うのは…エロいです。

内心のときめきを隠しながら俺はスキルを発動する。


「ドレイン!!」


「ッ!!」


アルマが苦しそうに呻く.


アルマの魔力を吸いすぎてその身を危険にさらさないよう、細心の注意を払って魔力のみを吸い取りアルマの魔力の質を感じとる、


魔力を感じたらすぐにドレインをやめヘッドホンを外す。


「もう終わりですか?」


辛そうな声だ。


「ステータスで生命力と魔力を確認してもらえるかな?」


「はい」


生命力:8/8

魔力:40/50


「マジックポーションを飲んでステータスを再確認して」


「はい」


生命力:8/8

魔力:50/50


「いま君の魔力の質を調べたんだ、今度は君の魔力の質に合わせて俺の魔力を流し込む」


「クラフタ様の魔力が私の中に…」


なんかトローンとした口調だ、負担が強かったかな。


「きついのなら明日に…」


「大丈夫です!続けてください!!」


「お、おぉう!?」


強い口調で頼まれる、う、うん気合は十分だしいけそうだね。

再びアルマにヘッドホンをしてドレインを使う。


「ドレイン」


魔力を吸い始めるが今度は魔力をアルマに押し流すイメージを取る。

放出系魔法の魔力操作をする要領でこちらに流れ込んでくるアルマの魔力をUターンさせ、

威力を増幅する要領で俺の魔力を上乗せする。


「はぁっ!んんっ!」


 生まれて初めての大量の魔力が流れ込む経験に、アルマが苦しみの声を上げる。


「な、なんだ今の声は!一体中で何が起きているんだ」


「陛下、お静かに!バレてしまいますぞ!」


聞こえてる聞こえてる。


少しずつアルマに流し込む魔力を増やしていく。


「くっぅぅ」


アルマの耐える声が、年頃の少女の声とは思えないほどに苦しげにかすれる。

流石にこれ以上はまずいかと俺は一旦ドレインを止める。

再びヘッドホンを外してアルマに問いかける。


「大丈夫か? 苦しくない?」


「はぁ……はぁ。だ、大丈夫です」


 史上初の魔力欠乏症の治療は、予想以上に患者の体力を奪うらしい。

 これはちょっとやり方を工夫しないといけないな。

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