仲間を探そう
仲間を探すの巻
冒険支度金と貨幣についての設定を修正いたしました。
「まずは仲間集めからだ」
おっちゃんはそういって俺を促す
確かにアルケミスト一人で冒険はムリゲーすぎる。
最低でも前衛は必要だ、可能なら魔法職も仲間に入れたい。
「仲間って酒場にでも行くんですか?」
「この時間なら食堂に知り合いがいる、そいつらを誘っていこう」
「その人たちも俺達と同じ異世界人何ですか?」
「その辺は出会ってからのお楽しみって事で」
そういってはぐらかすおっちゃんについて協会の建物を出ようとする俺の所にユノさんがあわててやってきた。
「待ってくださいクラフタさん、これを持って行ってください。」
そういってユノさんは何かの入った布袋を渡してくる、布なのがファンタジーらしくてちょっぴりワクワクする。
「ステータスカードと冒険支度金の銀貨20枚です。
ステータスカードは身分証にもなりますので無くさないようにお願いいたします、
無くすと再発行に銅貨10枚支払うことになります。
また初回からこの世界への永住を希望する方には賃貸住居の斡旋と追加支度金として金貨40枚が貸し出されます。
賃貸住居は家具は一式揃っていますが調理器具、食器と布団は個人でご購入ください。
ペットは厳禁です。
追加支度金はこの世界への移住を開始してから半年後に毎月最低銀貨2枚を返済してもらいます、
利息は発生しませんが返済が滞るとペナルティがあります」
「ペナルティって何ですか?」
「それはそのときに分かります」
ユノさんの笑顔が怖かった。
「分かりました、ありがとうございます。」
確か銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚だっけ、で銅貨が日本円で100円相当と。
更にその上に金貨10枚で赤金貨1枚、赤金貨10枚で緑金貨1枚 緑金貨10枚で白金貨1枚
物価の差もあるだろうけど一般人には金貨より上のお金は縁が無いだろうな。
ユノさんも色金貨は大商人や貴族でないとまず見ることはないって言ってたし。
ちなみに色金貨とは特殊な鉱石を生成した貨幣でメッキ塗装されたコインと思えばいい。
「それとこの世界のお金は製造時に魔法的な処理が施されておりますので偽造は不可能です、気をつけてください。」
「分かりました。」
偽金に気をつけろって事か、いや錬金術で贋金を作るなって事か?どっちだろう。
「それと登録されたばかりの方にはあちらのコーナーで装備の貸し出しも行っております、銅貨1枚を保証金に各種装備を1ヶ月間レンタルできます。
返却時に損傷が大きければ修理金の支払い義務が発生します、修理金を支払えない場合は分割支払いで月最低銅貨10枚返済していただきます。
返済は他の町の協会でも可能です、返済金の情報はステータスカードに記録されますので踏み倒しは不可能です。」
「分かりました、おっちゃんちょっと見て言っても良いですか?」
「そーだった、俺も始めてきたときは斧を借りていったんだった。で、ぶっ壊しちまったんだよな」
はっはっはっと豪快に笑うおっちゃん。
それは笑うところなのか?
あまり変な装備は借りないほうが良いようだ、しかしおっちゃんに斧っていかにも蛮族って感じだな似合いすぎる。
さっそく装備コーナーに行ってみる
一言で言うとそこは
「異世界」だった
剣に槍、杖、ローブに皮鎧、プレートメイル
いかにもな装備たちは自分がファンタジーの世界に来たと実感させる。
「魔法使いならやはり杖だろうな」
「そうですね発動体が魔力の消費を抑え術の威力を高めてくれるのでお勧めです」
おっちゃんの言葉をユノさんが補足する。
「うーん、でも錬金術って冒険の間に使うような術じゃないですよね、どっちかというと街中で使うもののような」
「そうなると弓か槍か」
「回復薬などをその場で作れるので杖を持って完全支援に当たるのも有りですね」
両極端な意見を言うのは最後は自分で決めろって事だろうな。
冒険中は槍で補助戦力となるか、杖で戦闘終了後に活躍する完全援護型かどっちにするかな。
弓は仲間に当たりそうなので却下で。
「なぁ兄ちゃん、まずは仲間を集めてから考えねぇか?」
「え?」
俺が悩んでいるとおっちゃんがそう提案してくる。
「仲間と相談して決めるのもありだと思うのよ俺は」
「仲間とですか」
たしかに、俺が仲間を探すと考えるんじゃなくて別のパーティーが仲間を探していると考えるのなら相手の求めるものを理解しておくのも正しい判断か。
それいいな。
「分かりました、それで行きましょう」
「よし、じゃあ良くか!」
ユノさんに見送られて俺たちは協会から出る。
おっちゃんの案内にしたがって町を歩いていくが今更ながらにこの世界がファンタジーだと痛感する。
町行く人たちには人間以外の種族がいるし馬車を引いているのは巨大な爬虫類やダチョウ?だ。
露天では見たことも無いような食べ物や品物が売られている。
祭りの縁日の屋台のような食べ物屋の暖簾には見たことも無い文字が書かれている。
そこで俺は初級言語読解のスペルを使って見たくなった、そしたらどうやって使うのかと思うまもなく暖簾の文字が日本語に翻訳される
『ベルベの串焼き』
なるほど、翻訳魔法と言うのは頭の中で文字にルビが振られるような感じだ、ベルベというのが分からないのでそういう名前の食材なのだろう。
この世界のスペルって向こうでも使えるのかな、もしできるなら外国語の翻訳で仕事ができるんじゃ。
「兄ちゃん、ここだ」
おっちゃんの呼び声で思考が現実に帰って来る。
西部劇の酒場って感じではないが見た目はネイティブな感じの外国料理屋のようなイメージだ
「・・・跳ね馬亭・・・か」
店の名前の横に馬っぽい生物のシルエットが描かれている
「兄ちゃん読めるのか!」
「ええまぁ」
「!、そうか魔法か。いいなぁ、俺は金貯めて翻訳の指輪を買ったのによぅ」
そういっておっちゃんは黄色い指輪を見せてくる。
「へぇ、そんな物もあるんですね」
「結構高いぜ、指輪ひとつにつき1言語だし種類もそんなにあるもんじゃねぇ」
ほうほう、となるとこの世界でも翻訳で稼ぐことはできそうだ。
「まぁこんなところで話すのもなんだ入ろうぜ」
「ええ」
おっちゃんに促されて店の中に入る。
店の中は意外に明るかった。
蛍光灯とは言わないがランタンのようなものが天井から下げられ店内を照らしている。
火の揺らぎが無いのでおそらく魔法の明かりなのだろう。
俺がきょろきょろと店内を見ているとおっちゃんがお目当ての人物を見つけたのか声をかける。
「おう、いたいた。おいお前ら」
おっちゃんに声をかけられたテーブルの客達がこちらを見る、正しくはおっちゃんをだが。
「今日は遅いですねマックスさん」
そういうのはいかにも魔法使いの格好をした高校生くらいの男子だった。
とんがり帽子に杖とローブというテンプレ魔法使いスタイルだ。
「おぅ、今日は新入りをつれてきたぜ」
「それは後ろのおのぼりさんの事?」
キョロキョロと周囲を見回していた俺を指しながらお姉ちゃんがおっちゃんに質問する。
俺より少し年上位か茶髪のストレートロングでスタイルは結構良いな。
テーブルに椅子に立てかけた槍に要所を金属で補強した皮鎧に盾、前衛職なのか。
「おぉー、新入り、クラスはクラスは?」
やたらとテンションの高い女の子がこちらを見ている、12、3歳位だが大丈夫なのか?
緑髪のおかっぱ頭で装備は戦士の女の人と色の違う白っぽい皮鎧と弓を持っている狩人かな?
「んー何かな少年、おねぇさんをじっと見つめて。もしかして惚れちゃった?」
「いえまったく」
間髪いれずに反応したら魔法使いと戦士が吹き出していた、笑いのツボ浅いなー。
「ぶーこの子きらーい」
どっちが子供だか。
「おいおいケンカするなよ、これから一緒に冒険するんだからよ」
「ということは後衛職ですね」
魔法使いが聞いてくる、パーティ構成的に回復役が欲しいといった所か。
「おう、なんとアルケミスト様だぜ」
様はいりません。
「アルケミスト・・・」
「レアクラスね」
「おおぅー、レアなの!すごーい!!」
ちびっ子がテーブルに体を乗り出して身を寄せてくる、俺の事嫌いじゃなかったんですかちびっ子さん。
「アルケミスト・・・」
「どうだお前ら、今日勧誘仕立てのピッチピチの新人だぜ」
「やるねマックス!えらい!!」
「はっはー」
「アルケミスト・・・」
さっきからブツブツつぶやいているけど大丈夫かこの魔法使い?
「レアなのは分かったけどアルケミストって回復はできるわけ?」
盛り上がるおっちゃんとちびっ子をよそに戦士が聞いてくる
常識人だ、この人とは仲良くしなくては。
「どうなんだ?」
「知らないで連れてきたの?」
なんというノープラン、大丈夫ですかこのパーティ。
「えーと一応初級薬調合というスペルが使えますので、材料さえあれば回復薬が作れます。」
しょうがないのでフォローするが何で俺が気を使ってんの?
「アルケミストって魔法で薬が作れるんだー」
「魔法使いの呪文は古代に作られた汎用プログラムです。プログラムに組み込まれた範囲の薬ならば、どのような物でも製作可能なはずです」
魔法使いくんが説明してくれる、ハカセキャラなのか。
なるほどしかし呪文に作り方が書いてあるのか、日本でならCD-Rのような焼き直しの不可能な記録媒体に記録された複数のソフトって感じか。
「どんな薬が作れるわけ?」
「えーと初級なんであんまり期待しないでくださいね、作れるのはポーションにマジックポーション、毒消し、麻痺消し、熱覚まし・・・大体50種類くらいです。」
「結構作れるのね」
「材料さえあればですが」
「なるほど・・・」
戦士のお姉さんはこちらの言葉に納得がいったらしく考え込んでいる。
「いーんじゃない回復役になるし」
「便利な薬が作り放題・・・やはりレアクラスか・・・」
魔法使いの声が低い、レアクラスにトラウマでもあるのか?
「カっちゃんは平凡なクラスだからレアクラスに劣等感があるんだよ」
「そんな事ありませんっ!!」
あー、他人の芝生は青いってやつか。
「いやでも魔法使いって異世界モノなら憧れのクラスじゃないですか、攻撃魔法とか派手そうでカッコイイじゃないですか。」
「ですよね!!」
すっごい食いついてくる魔法使い君、何が彼をここまでさせるのか。
「貴方とは仲良くなれそうです」
ガシッと俺の手を掴んでくる魔法使い君、うん落ち着け。
「よーし、話がまとまったところで自己紹介と行こうか」
美味しい所だけ持っていこうとしてないか?このおっちゃん。
「あっ、御免」
「おっと僕としたことが」
「アタシメリーよろしく」
ちびっ子がさらっと自己紹介してくる、フットワークが軽くて大変よろしい。これは此方も返礼せねば。
「クラフタ=クレイ=マエスタ。クラスはアルケミストです、よろしく。」
「苗字持ちですか、しかもミドルネームまで。やはり貴方とは仲良くなれそうだ、フフフ」
なんか気に入られたな、あまり嬉しくないが。
「僕はカイン、カイン=ブルーバード、マジシャンです」
「カっちゃんだよー」
「カっちゃんじゃありません」
カインか、なんか裏切りそうな名前だなぁ、おれはしょうきにもどった!とか言い出しそうだ。
「あたしはセリカ、レンジャーよ」
「アタシはシャーマンだよ」
おやセリカさんはレンジャーか、ちびっ子のほうはアーチャーか何かと思ったが魔法使い系なのか
「そして俺はマックス!ファイターだ!」
うん知ってました、てかおっちゃんが魔法使いだといっても絶対信じねぇ。
とその前に
「ところで確認したいことがあるんですが」
パーティを組む前に確認しなければ、そのために装備を後回しにしたんだし。
「何?」
「皆さんが俺に望む役割です」
「どーゆうこと?」
メリーがよく分からないといった顔で聞いてくる。
ちょっと説明が足りなかったな、反省。
「つまり万能型か回復専門のどちらを仲間として望んでいるかです」
「なるほど、冒険者としてのスタンスという事ですか」
カっちゃんは分かったようだ。
「カっちゃん説明ー」
「カっちゃんじゃありません、つまり万能型で攻撃から回復まで浅く広くできるか、回復専門で仕事をはっきりと分けるかパーティーメンバーとしてどちらがほしいか確認しているんです」
「自分の事だから好きにすれば良いんじゃないの?」
「それも正論ですが今回はこちらが回復役としての仲間を求めており彼は新人募集でやって来た、いわば雇われる側なのでこちらの意見を聞きたいと考えているわけですよ」
「ふーん、でも攻撃は間に合ってると思うー」
「私も同感、新人って事はLvも1か2くらいじゃないの?だったら戦闘で足を引っ張られるよりも回復専門のほうが良いと思うわ」
「マックスさんは?」
「俺はどっちでも良いぜ、お前はどうなんだカイン?」
「ふーむ」
おっちゃんから逆に意見を聞かれてカインが考え込む、やがて顔を上げると
「僕もセリカさん達と同意見です、別に今回の決断で進むべき方針が固定されるわけではないので今回は回復役に専念してもらうのが良いでしょう」
カインの意見でパーティの意思は固まった感じか、こちらとしても1回の冒険で決めなくて良いと言われるのは気が楽になるしな。
「じゃあ改めてよろしく」
「よろしくな」
「よろしくお願いします」
「よろしくね」
「よろしくー」
こうして冒険の仲間と自分の方向性(仮)が決まった。