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虎視眈々と探りあい

ヤツが来た!!

「初めましてマエスタ男爵」


城下町を散策していた俺は目の前に現れた男にいきなり声をかけられた。

俺の人生で二度と会いたくないと思えるその男は。


「僕の名前はカイン、カイン=ブルーバードと申します」


そう、カインだ。俺を殺したカインだ!

俺のスキル上級鑑定を奪い口封じに殺した男だ!!


「そのカインさんが僕に何の御用でしょうか?」

「実は貴方と少々お話をしたいと思いまして」


抜け抜けと、今度は何を考えて近づいてきた?

俺の姿は以前とは違う、名前以外で関連性を創造することは出来ないはずだ。

俺は険しく成りそうな顔を意思の力で抑えて平静を保つ、正直ポーカーフェイスは得意じゃない。


「クラフタ=クレイ=マエスタ、貴方にその名前を与えた人の事でお話があります」


は?


「……」


……


「驚いて声も出ないですか?」


……っは!?


こ、コイツもしかして俺がどっかの子供に自分の名前を与えたと思っているのか。

そういえばこの間ワイズが同じような勘違いしていたな。

むしろワイズが勘違いしてくれたお陰ですぐに思考がまとまったともいえるな、こっそり感謝しておこう。

ふむ、どう答えたもんかな。


「怖がらないで良いですよ、僕はあなたに力を貸している人と会いたいだけなんですから」


こちらの態度に変な勘違いをしたようだが好都合。


「仮に貴方の想像通りだったとして僕に力を貸している人にどんな用があるんですか?」

「どうということもありません、ただお話を伺いたいだけなんです」


いけしゃーしゃーと、どうせ俺だと確認できたら殺すつもりなんだろ?


「いったいどんな話を?」

「それはプライベートな事ですから」

「それでは仮に貴方の想像通りだったとしてもその人物に会わせる訳にはいけませんね」

「なぜですか?」

「その人物はわざわざ僕を表に出して名を上げさせたんでしょう?だったら表に出たくない理由があるのでは?」

「確かに、その可能性はありますね」

「なぜ貴方はその人物に会いたいのですか?」


俺達の舌戦はそこで一端収束した。

正しくはカインが言葉を切ったのだ。

このままでは埒が明かないと思ったんだろう。


「少々焦り過ぎた様ですね、今日のところは引かせてもらいます」

「そうですか」


そういってカインは去っていく。

もちろん素直に帰るつもりはないだろう、使い魔なり何なりを使ってこっちの動きを監視するつもりだろう。

そうなるとミヤと通信することは避けたい。

ヤツが収集しているスキルの中にこちらの秘密に肉薄するものがあるかもしれない。


とはいえこちらも無効に対策する準備が出来ていない、もしあいつに会うことがあったらきっちりお礼参りをする予定ではいたが

それはあくまでセントラルの町付近の積もりだったからだ。

だが奴もすぐには行動しないだろう、こちらも急いで準備をしなければ。

アルマの治療に悪影響が出ては大変だ。


カインを警戒させないように普段どおりの行動を心がける、向こうは何時からこちらを監視していたかわからないからだ。

ついでに錬金術具を売っている店でコレから必要になるであろう素材を不自然にならない程度に買い足していく。


「なぁ男爵様」

「はい?」


珍しく錬金術屋の店主が話しかけてくる、珍しいことが続く日だ。


「昨日若い魔法使いがアンタの事を聞いてきたんだが」

「若い魔法使いですか」

「ああ…やけにあんたの事を聞いてきたよ、本人はさりげない振りで隠しているつもりだったがバレバレだ、何も買っていかなかったしな」


ダメだそりゃ、店で情報収集をするのに買い物をしないとかありえないだろ。

もしかしたらカインは諜報には向いていないのかもしれない。


「こちらの面倒に巻き込んでしまって申し訳ありません。お詫びにこっちの素材とこの素材を大袋で一袋づつお願いします、荷物は王城に」

「まいど」


要約するとまたなんかあったら教えてねという意味だ。


「おそらく男爵様の贔屓にしている店には全て通っていると見えるぜ」

「ありがとうございます」


錬金術屋を後にした俺はいつも通う店を流していく、どうやら店主の言ったとおりほぼ全ての店に通ったようだ。

だがカインはまったく有力な情報は得られなかったようだ。 

一つは俺が貴族でカインは只の冒険者。

一つはお金を定期的に落として行ってくれる常連客とろくに金を落とさない一見さんでは店側のメリットがまったく異なる。

そして最後に俺の正体ついては師匠達とヴィクトリカ姉さんの4人しか知らない、つまり王都には元から有力な情報が初めから無いのである。


王城に戻ったらさっそく準備を始める、カインは裏に居ると思い込んでいる(昔の)俺と真相を聞いている可能性のある子供(今の俺)の口を封じようと考えているはずだ。


事前に用意していた幾つもの魔法薬をチェックしながら今回の作戦のために本当に簡単な簡易ゴーレムの核の製作を行う、そしてミヤに協力を要請する。

こんなときのために用意した連絡用鳥型ゴーレムだ、多少のタイムラグは出るが通信を傍受される心配が無いのが強みだ。

鳥型ゴーレムは夕方になるころにはミヤからの返事を持って返って来た。

準備は出来た、いつでもいける。


さぁ、狩りの始まりだ。


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