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栄転?左遷?

微妙な褒美が一番困ります。

その日王都はお祭り状態だった。

いや本当にお祭りだったのだ。

数日間に渡り王都の人々を悩ませた霧が晴れ更には元獣と呼ばれる神聖な魔物が人々の前に姿を現したのだ、騒ぎにならないわけが無い。


そんな王都の街のメインストリートを俺達は歩いていた、

俺、フィリッカにアルマ、そしてミヤと話題のキャッスルトータスは人々の好奇の視線を浴びながら王城へと進んで行く。

みんな服装はいつもの私服ではなくフィリッカにアルマは式典用のドレス、ミヤは貴族と対応する際に支給されたらしい礼服を着ていた。

そして俺は冒険者風の格好でコーディネイトしている、ただしその服装は貧相な皮鎧などでは無く稀少で高級な素材を使用した一級品だ。

デザインもミヤに用意してもらった古代魔法文明時代の有名衣装デザインをフィリッカとアルマに選んで貰い作られている。

見る人が見れば解る装備一式は俺の冒険者としての箔を高めるために必要なのだとか。


なにしろ俺は傷を負い深い霧を発生させたキャッスルトータスの子供を保護した英雄と言う事になっている。

そうすることでキャッスルトータスを王城で保護する名目が立つのだとか。

なんか四元獣は神聖な存在だから国家が所有すると周辺国家が大喜びで政治的な攻撃材料にするらしい。

それでアルマの病気を治した功績で貴族に出世した俺を使って保護の名目に説得力を持たせたようだ。


「アレが噂の少年貴族様か、ホントに子供なんだな」


「不治の病の第二王女様の病気を治したんだろ?」


「じゃあフィリッカ様のお隣にいらっしゃるのが第二王女のアルマ様なのか?」


「病気で一切表に出られなかった方があんな元気そうにしているのはなんでなんだよ?」


「だから病気を治したんだってば」


「あんな子供がどうやってそんな病気を治すんだよ」


「かなり腕のいい薬師様らしいぞ」


「マジかよ!?」


よく聞こえてますよ。

アルマの病気を治した人間と大っぴらに宣言するする理由も有るのかな?


「しかも今度は伝説の四元獣を連れてきたって言うじゃねぇか」


「怪我をしてたのを保護したって話だが」


「霧の原因もあの元獣らしいじゃない」


「それを助けてあんなになつかれたんだろ?」


「やっぱり貴族になる方は違うなぁ」


言われてる通りこのキャッスルトータスは俺にすこぶる懐いている、それこそペットみたいな状態だ。

餌をやって傷を治してやった程度なのにチョロすぎる。


城に行くにもキャッスルトータスの歩みは遅いのでコイツが城に到着するまでは否が応でも見世物のパンダ状態が続くみたいだ。

それこそ陛下達の望んだとおりに。





キャッスルトータスを保護した翌日の朝、アルマの見舞いに来た陛下に俺はその話をした。

もちろん浮島の事だけは内緒にしてある。


「キャッスル…トータスだと…?」


「はい」


「一体何があって元獣とで出会ったのだ?」


「いろいろありまして、それで怪我の治療が終わるまで城で保護したいのですが宜しいですか?」


「う‥…うむ、だが内容が内容だけに余の一存で決めるのは危険だ、大臣達と神殿の上層部との刷り合わせが必要になる」


ふぅ、と陛下がため息をつく。


「お主もよくよく余を驚かせてくれる」


そういって呆れたようなしぐさをとる陛下だったがその顔は少し楽しげだった。



そうして出来上がったのがこの状況である、皆の意識を俺達に分散させる事でキャッスルトータスの子供の安全を図る予定らしい。

数百年に1度の確率でしか人前に姿を現さないので悪意を持った者達に素材として狙われる危険があるのだ。

だが政治的な意味合いから隠れて保護をするとそれはそれで他国の余計な不信を買うことになる、面倒なことだ。


そして俺達は王城に到着する、キャッスルトータスに合わせたからざっと2時間位掛かったな。

そのまま王城の中に入らず式典広場に向かう、そこは国民も呼んで大きな発表を行うための場所でもある。

キャッスルトータスを城の謁見の間に運ぶには色々手間なので運びやすいこっちの会場を選んだのだ。





式典広場に入るとそこには大勢の人たちが居た、貴族平民を問わず大勢の人たちが俺達を待っていた。


「クラフタ=クレイ=マエスタ男爵、前へ」


進行役に呼ばれ式典用に用意された玉座に座って待っていた陛下の元に向かう。

陛下の前に到着し臣下の礼を取る、フィリッカとアルマは陛下の両脇に移動する。


「クラフタ=クレイ=マエスタよ、良くぞ王都を覆う霧を晴らし元獣の子を保護してくれた。褒めて使わす」


「身に余る光栄にございます」


「そなたにはふさわしい褒美を授けねばなるまいな、ふむ…」


陛下は一端考える素振りを見せて言葉をを再開する。


「クラフタ=クレイ=マエスタよ、そなたにターゼの地を領地として授けることとする、冬が開けた後領主として良く治めるが良い」


「ありがたき幸せ、この身を持って全霊で役目にあたります」


「うむ」




こうして式典は終了し俺はわずか10歳にして領地持ちの貴族になった。


「ところでターゼの地ってどんな所なんですか?」


式典が終了し王城で開かれたささやかな酒宴で皆に祝われているときにふと思った疑問を口にした。


「ターゼの地か、あそこはシャトリア王国との国境が近い事以外にめぼしいものは無いな」


バクスターさんが夢も希望も無い事を言ってくる。


「湖があるわよ」


「山も有るな」


「鉱床という噂もあるな」


オクタン伯爵達渓谷の派閥が言葉を繋ぐ。


「つまり僻地の田舎なんですね」


皆が視線をそらす、思いっきり態度で答えてるよ。


「仕方あるまい、貴公の偉業に見合うだけの褒美を与えねば周辺国が黙ってはおらん、

金銭ではいかにも無粋であるし爵位を上げるだけでも嘗められる、明確な価値が必要なのだ」


とは湖の派閥であるスクエア男爵の言。


「となれば領地を与えるのが順当だが」


「良い土地を与えるとうるさい連中が足を引っ張ろうとしてくるのは目に見えている」


「未開発の土地ではあるが多少は人も住んでいるし水や食料も豊富だ」


「将来性はある土地よね」


「王女を妻に迎えるんだ、それなりの土地で無いとな」


「それだけ聞くと良い土地に聞こえますけど」


頑張って開拓すればいいんじゃね?と思ってしまうんだが。


「確かに将来性はある、だがそれは数十年、数百年後の話だ」


「開拓には時間が掛かるのさ」


当直が終わって祝いに来てくれたクヴァルさんが言う。

ディクセさんは夜勤なので来れないらしい。


その言葉がいまいち理解できなかったがあることを思い出して納得がいった、そうだここは異世界、地球とは違うんだった。

つまり開発のペースも地球よりずっと遅い、

当時エジプトの王様は自分が王に即位した時から自分が埋葬されるピラミッドの建設を始めていたらしい。

それを考えれば皆が微妙な顔をするのもうなずける。


「だがそれは普通の開拓をすればだ」


「陛下は君の期待しているんだよ」


「貴方は優秀なアルケミストだものね」


ああ、そういうことか。

俺が開拓に便利な魔法具を作ることを期待しているのか、

それが使い物になるなら他の領地の開発にも使えるので2度お得というわけだ。 


「春まで余り時間は無い、今のうちに出来ることは全てしておいたほうが良いだろう、我々でよければ相談に乗るぞ」


「お心使いありがとうございます」


だが俺にはそんなことよりも優先しなければならない大問題があった。


ズバリそれは


師匠に何と報告するかだ!!

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