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治療開始

妹姫参上そして治療開始

フィリッカと二人城の通路を歩く。

フィリッカの歩幅が気持ち早い気がするのは気の所為では無いだろう。

無言で歩き続ける。

しばらく歩いた後フィリッカの足が止まる、どうやら到着したようだ。

少し躊躇い、しかし意を決してノックをする。


数瞬の間の後、扉が開く。


「どなたでしょうか?」


そう言って姿を見せたのは可憐な少女などでは無く妙齢の女性だった。

年のころは30代くらいの青い髪のメイドだった。

もう10年若ければなー。


「御久し振りねラヴィリア」

「フィリッカ様!?」

「アルマの見舞いに来たの、会わせてくれる?」

「はい、それはもう。アルマ様もお喜びになられます。アルマ様!フィリッカ様ですよ!!」


ラヴィリアと呼ばれたメイドは嬉しそうに部屋の中に居るであろうフィリッカの妹に声をかける。


「姉様が?帰ってこられたのですか?」


か細い声の返事が返ってくる、その声は姿を見ずとも相当に憔悴しているのが判るほどだ。


「ええ、久しぶりねアルマ」


返事をしつつ入るフィリッカに続いて俺も入る。

部屋の中に入るとさまざまな薬の匂いが鼻を突く、正直換気をした方が良い。

部屋には幾つもの薬箱が乗せられたテーブルと大きなベッドがある。


そのベッドにの上に一人の少女が横たわっていた。

この少女がフィリッカの妹のアルマなのだろう。

とても長い髪は銀というよりも白に近い色をしている、肌も抜けるような白い肌だ。

ただしソレは美しいという意味ではなく病弱な意味でだが。

瞳の色はフィリッカと同じエメラルド色をしている。


「あ、あのフィリッカ様この方は?」


俺に気付いたラヴィリアがフィリッカに聞いてくる。


「私の友人よ、アルマに会わせるために連れてきたの」

「は、はぁ」

「アルマ、私の友人のクラフタよ」

「初めましてアルマ様、クラフタ=クレイ=マエスタと申します」

「初めましてクラフタ様。アルマ=ハツカ=ルジオスです。このような姿で申し訳ありません」


アルマはベッドに横たわり顔だけをこちらに向けていた。

おそらく体を動かすのが辛いのだろう。


「アルマ、彼はとても優秀なアルケミストなのよ」

「まぁ、私と同じくらいのお歳なのに凄いのですね」

「師匠が厳しかったんですよ」


「アルマ、彼が貴方の病気を治してくれるわ」


唐突にフィリッカが告げる。


「えっ?」


ホントにえっ?だよなぁ。


「クラフタ君は貴方の病気を治すために連れてきたのよ」

「この方が私の病気を?」


何でコイツはいつも要点しか述べないんだろう。

よく考えたらさっきのアクシデントもちゃんと説明してたら上手く回避できたんじゃないだろうか。


「フィリッカ様、幾らなんでも冗談が過ぎます」


ほら突っ込み入った。

だがいい加減面倒なのでこのまま突っ切る、もう同じパターンは飽き飽きであるからして。


「フィリッカそっちは任せた」

「任された!!」

「フィリッカ様!!」

「いいから任せなさい、クラフタ君早くやっちゃって!!」


なんか悪役みたいなんですが。

ラヴィリアをフィリッカに任せてアルマのそばに行く。


「っ、何をするのですか?」


ほら怯えちゃってるじゃん。


「怖がらなくても良いよ、俺は君を治すためにここに来たんだ」


敬語を止めて素で話すことにする。


「でも私の病気は…」


アルマが顔を伏せて拒絶の意思を見せる。

ずっと治らない病気と言われ続けてきたから信じられないのも無理は無い。

だがわざわざここまで来たのだ、いまさらやめる理由も無い。


宝物庫から薬の入った箱を出しそこから1本の試験管に入った薬を取り出す。


「この薬を飲んで」

「あ、あの、お薬はお医者様の処方していただいた物を飲んでいますので」

「その通りです、そのような怪しげなものを飲んではいけません!」

「い・い・か・らぁー、黙ってなさいぃぃ」

「フィリッカ様!は、離してください」


後ろが凄いことになってる気がするが無視だ、フィリッカの活躍を無駄にするわけにはいかない。


「大丈夫、コレは栄養剤だから、君の足りない魔力を補充するための物だ」

「その、私の体は…魔力が上手く補給できないんです。だから高価なマジックポーションも余り効き目が無いのです」

「心配ない、コレはそういう人用の特別なポーションだから」

「そのようなものがあるのですか?」

「これは魔力欠乏症の人のために考えられたものだから」

「私達のために…」

「ずっと昔から研究されてきたんだ、君達を直すために」

「……」


辛抱強く慎重に会話を続ける。


「アルマ、その子を信じて!!」

「いい加減にしなさいフィリッカ様!!」



「わかりました」


「アルマ!」

「アルマ様!」


ようやく決心してくれたようだ、とはいえここまでは想定通り、コレからが本番だ。


「アルマ様、そのような得体の知れない薬を飲んではいけません」

「ラヴィリア、良いのです。どうせこの身は長くはもたぬ身、それなら一縷の望みにかけるのも一興でしょう」

「そんなことはありません!!」

「自分の体ですよ、それにお喋りな人たちは何処にでも居るものです」

「ッ!!」


どうやらお喋り好きが口を滑らせたのを聞いていたようだ。

不治の病、残されたわずかな時間、後が無いなら一か八かの奇跡に賭ける。

何一つ救いが無い状況ならそんな縋るような考えに行き着くのは当然といえば当然だろう。

アルマは俺から受け取った薬を一息に飲む。


「どうだい?」

「ポカポカしてジワーっと沁み込んでくるような感じです」

「マジックポーションの魔力が乾いた体に染み渡っているんだよ」

「なんだか楽になった気がします」

「生活魔法は使える?」

「はい、使えますが?」

「じゃあステータスを使ってもらえるかな」

「いけません!アルマ様は生活魔法の使用でもお体に障るのです!」

「いいから!!邪魔しない!!」


フィリッカがラヴィリアをコブラツイストで固定している、何でそんな技知ってるんだよ。


「大丈夫だから」

「は、はい。ステータス!」

「君のステータスから生命力と魔力と能力値を教えてくれるかな?」


「はい」


名前:アルマ=ハツカ=ルジオス

Lv1

クラス:プリンセス

種族:人間:上位貴種


スキル

・?

・?

・?


スペル

・?

・?

・?

・?

能力値

生命力:2/8

魔力:5/50

筋力:1

体力:1

知性:5

敏捷:2

運 :2


「ふむ、なるほど。もう一度この薬を飲んでくれるかな。」

「はい」


コクコクと小さく喉を鳴らしてマジックポーションを飲む


「もう一度ステータスを使って生命力と魔力を教えてもらえるかな」

「はい」


その結果


生命力:2/8

魔力:10/50


「うん、順調に回復しているね。どう?苦しさはまだある?」

「いえ!全然苦しくありません!!こんなに体が楽なのは生まれて初めてです!!!」


大はしゃぎで体を起こしながら喋るアルマ。


「姫様、動くとお体に触ります!!」

「大丈夫よラヴィリア、本当に具合が良いの」


予想通りだ、アルマに飲ませたの薬の正体は10倍に希釈したマジックポーションだ。

魔力欠乏症は魔力の通る血管とでもいうべきパイプの出入り口が狭くなっているのが原因、

それゆえに幾ら高級なマジックポーションを飲ませても取り入れることの出来る量には限度がある、

寧ろ魔力の濃度が高いため入り口で大半の魔力が詰まって逆効果になりかねない。

だが魔力を薄めたマジックポーションなら魔力供給のパイプが狭くてもスムーズに通る。

大きな塊と細かい粉をパイプに通すのでは圧倒的に後者のほうがスムーズに入る。

通せる魔力の量に限界があるのだからはじめから量が少なければいいのだ。


実はこの薬、浮島の研究所で書類に判子を押している間にミヤに用意してもらったのだ。

保存性に優れた容器なので通常の飲み薬よりも長く持つのが特徴だ。


「それは良かった、あまり一度に薬を飲むと体に良くないから続きは明日ね」

「ありがとうございますクラフタ様、わたしこんなに体中に魔力が満ちた事生まれて初めてです」

「治療には時間がかかるけどこれからはもう苦しい思いをせずに済むよ」

「はい!!」


お、可愛い。

ありったけの喜びをこめた微笑みを浮かべるアルマ。

病気の症状が緩和されてよほど嬉しいのだろう。

魔力欠乏症、生まれつき魔力の生成が上手くいかず魔力の変わりに生命力を削ってしまう病気だ。

それゆえに結構な苦しみを日常的に感じ続けるらしい、その苦しみから解放されればそれは嬉しいだろう。


「コレが健康なのですね」


涙ぐむアルマ、そこまで喜ばれるとなんかくすぐったいな。

そんなアルマに声をかけようとしたがすさまじい勢いで何かが俺を吹き飛ばす。


「グハッ」

「ア゛ア゛ルマァァァァッ!!!!」

「姉様っ」

「良がっだぁぁぁぁっ…」

「…はい…」


俺を吹っ飛ばした犯人はその勢いのままアルマに抱きついて泣き始めた。

アルマもイキナリの事に驚いたがやがてフィリッカを抱きしめ返すと一緒になって泣き始めた。

良い光景だなー、だがフィリッカ貴様には後でお仕置きだ。


「あ、あの…」

「はい?」

「アルマ様は…」

「薬で病気の症状を緩和させました、効果の弱いものなので日常的に服用しても肉体に負担は掛かりませんよ。

薬を飲んでいる限りは魔力不足で生命力を削られることも無いので苦しみは大幅に軽減されます」

「ほ、本当にそんなことが…」


ラヴィリアは信じられないという顔をしているがアルマの様子を見て真実を受け入れざるを得ないようだ。

アルマの顔色は劇的に良くなってきている、真っ白だった肌に赤みが差してきている事からも具合が良くなっている事がわかる。


「あ、あの…」

「クラフタです」

「クラフタ様…先ほどは大変失礼いたしました。そして、アルマ様をお助けいただき誠にありがとうございます」

「お気になさらず、フィリッカ様のたっての頼みですから」


ラヴィリアは感極まって泣き始めてしまった。

部屋中の女の子が泣いているので大変居心地が悪いです。





「先生にアルマ様のお体が良くなったことをお伝えして参ります」


しばらく経ってようやく落ち着いてきたラヴィリアがそう言ってきた。


「先生?」

「はい、アルマ様の専属医でわが国で最も魔力欠乏症に詳しい御方です」

「へぇー、そんな人が居たんだ」

「大変優秀なお方ですよ、代々王家に使える御用医師の家系ですから」


エリート家系か。

フィリッカがポンコツになっているので俺に後を任せるとラヴィリアは部屋を出て行った。

しっかし、いくら俺がアルマの体調を改善させたとはいえ信用しすぎだろう。

フィリッカといいこの国の人達は一度人を信じると警戒心がスポーンと抜けるんだろうか?

心配になってくるだろうが。



しばらく抱きしめあう二人の様子様子を眺める。

フィリッカがワンワン泣いてアルマが優しく抱きしめながら頭を撫でている。

どっちが姉かわからんなぁ。


だがそんな平和で目の保養な光景を邪魔せんと絶叫が響いてくる、その音はだんだんこちらに近づいて来ているようだ。

厄介事の予感がするので宝物庫から七天夜杖を収納形態で取り出す。

声がはっきりと聞こえるようになりアルマも気付いたようだ、フィリッカはまだ気付いていない。


「アルマが治ったというのは本当かぁぁぁぁぁ!!」

「アルマ様が治ったというのは本当ですかぁぁぁぁぁ!!」


二人のおっさんが叫びながら入ってきた。

やたらと豪奢な衣装のおっさんと無精ヒゲのだらしない白衣のおっさんの二人組だ。


「「お父様!!」」


フィリッカとアルマが揃って声を上げる。

おいまて、お父様ってもしかしてこのおっさんの片割れがこの国の?

俺の視線に二人がうなずく。



「私達の父親でこの国の国王、バラムス=メンテ=ルジオスです」


二人の紹介に豪奢な衣装のおっさんのほうがこっちを見る・




「うむ。余がバラムス=メンテ=ルジオスである!!、アルマの病気を治した少年とはそなたであるな、大儀である!!」


うそーん、フットワ-ク軽すぎだろうこの王様。

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