治らない風邪
お待たせしました。かなり久しぶりの更新です。
数日前、異世界から帰還した古代人達の為に開拓した南の島で、空前絶後のパンデミックが発生した。
原因は風邪の初期症状。
俺達は即座に治療を施し、数日以内には島民達も完治すると思われた。
だが……
◇
「げほげほげほっ」
それから数日経った今でも、島民達は皆風邪の症状で苦しんでいた。
「どういう事だ!?」
困惑した俺は、再度検査を行ったが、エウラチカのデータベースからは何度調べても風邪の初期症状と出るばかりだ。
いくら過労や新しい肉体の免疫力が低かろうとも、ここまで症状が続くとは思えない。
仮にもこちとら古代の超医学で治療してるんだぞ!?
困り果てた俺はクアドリカ師匠に再び連絡を取る事とした。
◇
『成る程。治らない風邪か』
俺の報告を受け、クアドリカ師匠が考え込む。
『悪いがこちらでもそんな病気の症例は無いね。そもそもエウラチカに情報が無い以上、それ以降に発生した新しい病気だと考えるのが正解だろう。そして私達が地下に隠れ住む様になるまでルジオス王国とその近辺の国ではそんな病気の流行は無かった。となればその病気はその島特有の風土病だろうね』
「風土病……」
なんてこった。確かにゴーレム達の調査では病原菌の有無までは調べていなかった。
水の安全性、植物や魔物の脅威度は調べていたが、もしかしたら食料に病原菌が付着していた可能性もある。
病原菌を保有した魔物が草木と触れる事で薪などに細菌が付着したのかもしれない。
『なんにせよ、まずする事は原因の究明だね。原因が判明すれば治療法も見つかるかもしれない』
「はい!」
そうだな。今は悔やむよりも行動するべきだ!
『ああそれと、君達は原因が判明して治療法が確立するまで帰ってきちゃだめだからね。こちらの大陸に病が広がってしまう危険があるから』
……そ、そうだったぁぁぁぁぁぁぁ!!
所詮風邪の初期症状と考えてついつい防疫服を脱いじまったんだったー!
このままアクアモルトの町に戻ったら、間違いなくパンデミックが拡散してしまう。
何よりもマズイのは……
「クラフタ様ー、診察終わりましたー!」
アルマが新しい病気に感染してしまった可能性があるという事だ。
今のアルマは俺と同じく防疫服を着ていない。
一応対策としてマスクはつけているが、未知の病気だった場合マスクなんて気休めでしかないだろう。
「どうしましたか?」
「あ、いや、その……」
魔力欠乏症は完治したものの、アルマは薄幸の美少女を地で行く病弱少女だった。
そんなアルマが新しい病気に罹ってしまったと知られたら、アルマを溺愛している陛下になんと言われるか!
そりゃあ武力の上では俺の方が圧倒的に上ですよ! 古代魔法文明の力があれば現代人なんてそれこそ原始人だっつーの。
でもね、相手は嫁の父親なんだよ。さすがに戦うとか無理。
「皆さん風邪が長引いていますねー。やっぱりお師匠様のおっしゃった通り皆さん新しい身体で免疫力が低いんでしょうね」
「あ、ああ。そうだな」
一体なんと説明したものか。
「父様がいらっしゃる前に皆さんが完治すると良いのですが」
「……へ?」
今何か不穏な発言が飛んだような気が。
「あっ、まだ言っていませんでしたか? 先日、お父様から通信がありまして。一週間後に視察を兼ねてアクアモルトの町にいらっしゃるそうですよ」
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
こうして、俺の絶望と恐怖に満ちた1週間が始まるのであった。