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ゴーレムの町

左利きだったから異世界に連れて行かれた5巻が発売決定です!

発売日は3月10日予定です!

なんと今回とんでもない書き下ろしページ数ですよ!


また、ゲームの仕事と書籍化作業が忙しかった為、執筆の時間が取れませんでしたが、作業が一段落したのでまた連載を再開します。


また新連載「勇者のその後~地球に帰れなくなったので自分の為に異世界を住み良くしました~」も執筆中です。

 異世界人の移民用に見繕った島にゴーレムを送ってからはや数週間。

 俺はいつもの様に偽装工房に向かい、セルティアス達と共に経過報告を聞いていた。


「ミヤ、始めてくれ」


「はい」


 ミヤがプロジェクターの魔法具を操作すると、町の光景が映し出された。


「これが移住先予定であるマエスタ島(仮名)の平原地帯に作られた町、クレイの町(仮名)です」


「まった、マエスタ島(仮名)とかクレイの町(仮名)って何だ?」


 いやホントなんだよ?


「いえ、いつまでも移住先予定地の島とか町では混乱しますし、いずれ島に移住して他国と接触した場合、明確に町の名前がないと困るかと思いまして」


 いやいや、その島はルジオス王国とは無関係って事にする予定なんだから。

 あからさまに分かりやすい名前をつけちゃだめでしょ。


「名前を付けるのは良いが、もっと背後関係の分かりづらい名前にしてくれ」


「かしこまりました。ではミラフト島とクラヤの町という事で」


 それ、俺とミヤの名前を混ぜただけだよな。まぁ分かりにくくなったけどさ。


「まるで私達の子供のようですね」


 ミヤが頬を赤らめながら身をくねらせる。


「マエスタ侯爵の生体管理端末は愉快なメンタリティを獲得しておりますな」


 スタロアスがハハハと笑うと、会議室の中が和やかな雰囲気に包まれる。

 イヤホント変な成長しちゃって。

 初めて出会った時とは大違いだよ。


「では報告にもどります」


 そして何事も無かったかのように流れを修正しやがった。


「クラヤの町は異世界人の方々の1/3が入植できる様、少々大型の町としました。ここを島の中心地とし、海辺と森の近く、そして平原の離れた場所にも町を作る予定です」


 まぁ一つの町に異世界人全員が暮らすのは難しいからな。


「町をつつむ城壁は地の属性石と火の属性石を混ぜ魔法式を刻んだ特硬コンクリートで作られており、物理攻撃およびブレスに強くなっております。また内側には階段を設置してありまして、城壁を物見やぐらとして使用する事も可能です。さらに城壁の上部には魔法具砲を搭載し、コアを交換する事で各種属性の魔法攻撃を放つ事で様々な魔物に対応可能です」


 いきなり過剰火力来た。


「それ、将来的に他国の人間に見られたら不味くないか?」


 この世界の住人がオーバーテクノロジーの塊に包まれた町とファーストコンタクトなんぞとったら、間違いなく危機感に襲われる事だろう。


「ですので、魔法具砲は一見して武器とは分からない形にしてあります」


 そういってミヤがプロジェクター魔法具を操作すると、空中に槍を構えた彫像が映し出された。


「これが魔法具砲のデザインとなります。台座が稼動する事で横160度、上90度、下20度までの稼動を実現しました」


 成る程、彫像ならインテリアとしておかしくないしパッっと見は分からないだろう。

 ガン見してもわからんが。


「大抵の魔物はこれで対応可能です。これ以上の魔物になると、強力な魔法具やゴーレムの出番ですね」


 まぁ、そこまで強力な魔物なんて早々でないだろう。

 それに異世界人達の魔法具技術なら大抵の魔物は敵になるまい。


「そして町の中ですが、この島から一番近い国に似せたデザインの住居を作っておきました。一軒あたり六人家族が住めるサイズが平均です。現在は限りなく人型に作ったゴーレム達が町を作りながら暮らしています」


 再びミヤがプロジェクター魔法具を操作すると、この町で暮らすゴーレム達の姿が映し出された。

 人間と同じ肌色の皮膚、髪の毛が生え服を着て、サイズもスレンダーから肥満、男、女、子供、老人と様々だ。


「人間の特徴を可能な限り似せる事で、魔物達の反応をうかがっております。今のところ町中で暮らす限りは魔物達もこれと言って行動は起こしませんでした。一部の魔物が城壁を攻撃して来ましたが、壁を破壊する事は出来ずに帰っていきました」


 成る程、それなら平地に住むのは問題なさそうだ。


「日常生活を行うゴーレム達の擬似表皮に付着した細菌を検査しましたが、危険な病原菌は無く、現在の我々の医療知識で十分対応できるものです」


 この辺異世界人達は特に真面目に聞いていた。

 自分達が異世界に逃げ出した原因は病気が原因だったからな。


「これならば、クラヤの町には先発で人を送っても問題なさそうですね」


 と、ここでセルティアスが口を開く。


「ゴーレム達だけでは分からない事もあるでしょう。希望者を募って試験的に移住を開始しましょう」


 まだ完全に島の調査は終わっていないのだが、この辺り俺だけの意思で移住計画をしている訳ではないので、彼女達の意見も無視できないものとなる。


「時期尚早ではありませんかな?」


 予想通り異世界人達もセルティアスの勇み足ではないかと声を上げた。


「いえ、そう言うわけには行きません。もともと我らはマエスタ侯爵の善意でこの町に住まわせていただいております。ですが肉体へのダウンロードが終わった民は増え続け、マエスタ領を様々な面で圧迫しているのが現状です」


 意外と状況を理解していたんだな。

 確かに増える異世界人達が暮らす家の建設などの対処にこちらも忙殺されていたが、それらは異世界人がいなくなったら空き家として売りに出すだけだ。

 長期的な計画だった開発計画のスケジュールをちょっと早めたに過ぎない。

 大工達は悲鳴を上げていた訳だが。


「ですので、出来うる限り早く移住を完了させるべきです。民の命を救って頂いたばかりではなく、一時的とはいえ、住む場所まで与えていただき、更には移住先まで人様に任せきりではなんとも情けない。私達で出来る事は私達でするべきです!」


 ゴーレムに全てを任せては種として衰退するといったセルティアスらしい意見だ。

 異世界人達もその言葉にハッとなって顔を引き締める。


「そうですな、確かに我々に出来る事は我々でするべきでした。我らはマエスタ侯爵に甘えすぎていたようだ」


 わー、どっかの帝国の姫とは大違いですよ。


「マエスタ侯爵、計画を変える様で申し訳ありませんが、我々の一部をクラヤの町に移住させてはいただけませんか?」


 まぁ、本人達が望むのなら良いんでないかね?


「分かりました。ではその様に対処いたしましょう。ミヤ」


 俺の声にミヤが頭を下げて承諾の意を示す。


「では、これより異世界人の先行移住計画を行う事とする!」

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