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クリスマスディナー

クリスマス番外編です。

「これはまたすごい事になったな」


 俺は目の前に広がる光景にちょっとした冷や汗をたらしていた。


「サンタさんが沢山いますねぇ」


 そう、アルマも言う通り、アクアモルトの町には無数の武装したサンタで溢れかえっていた。

 事の始まりは一ヶ月前にさかのぼる。


 ◆


「そろそろクリスマスだから何か催し物をしたいなぁ」


「そーゆー事ならアリスちゃん特製クリスマス料理よ!」


 などと抜かしながらミニスカサンタ衣装のアリスがやってくる。

 お前魔王だろ。


「この時期になると魔王の血が騒ぐのよ。世界のリア充を滅ぼせって」


 それはお前の願望だ。


「でね、ちょっとこの世界の素材を使ってクリスマス料理を作ってみた訳」


 そういってアリスはテーブルに料理を置いていく。

 七面鳥、ローストビーフ、フライドチキン、フライドポテト、シーザーサラダ、ポテトグラタン、チキンナゲット……鳥多いな。あと油物。

 まぁ揚げ物は安価で簡単に作れるからなぁ。


「コカトリスの丸焼きにフェニックスのフライドチキン、マンドラゴラのフライドポテトにハイポーションのシーザーサラダ。ベヘモスミルクとマッドプラントを使ったポテトグラタンに……」


「待て、待て」


 俺は料理の名前を聞いてアリスを制止する。


「何よ?」


「何だそのクリーチャー全開の料理名は!?」


 いくらなんでもモンスター食材が多すぎだろう。

 確かにこの世界はファンタジーだが、ちゃんと普通の食材も多く存在する。

 好き好んでモンスターなハンターの食事をする意味が分からん。


「それがねぇ、今市場にはモンスター食材ばかり出回ってるからよ」


「モンスター食材が?」


 この町には市場がある。

 まぁ、大抵の町にはあるのだがそれは置いておこう。

 市場では近くの町や村で作った野菜や森で獲れた獣の肉などが売られる。

 で、旅の商人とかもやってくるので、場所代さえ払えば誰でも店を開けるのだ。

 だからモンスター食材を売っているのはそうした旅の人間なのだろうが、それにしては量がおかしい。

 そもそもモンスターを狩る事の出来る人間はそんなに居ないからだ。

 この世界にはモンスターが居る。

 だからソレを狩る騎士や冒険者が居る訳だが、だからといってこの世界の人間全てがモンスターと渡り合えるわけではない。

 地球でだって熊や猪を狩るのは一部の猟師くらいだ。

 たまに警察も出張るが。


「ほら、以前この辺りの地面を掘っていたらダンジョンが出てきたでしょ。そこから食材になるモンスターがわらわら発見されたから、冒険者達が持って帰ってきて市場で売ってるのよ」


「ああ、そう言う事か」


 そういえばあのダンジョンは階層が深いから探索を冒険者達に一任していたんだよな。

 確かに以前も貴重なスパイスになる蝶とか出て来たが、まさか市場を埋めるほどの食材モンスターが居たのか。


「で、あんまりにも食材モンスターが取れるから、ウチでもメニューに入れようと思ったの。そもそもモンスター食材ってのは仕入れが大変だから高価だしね」


 なるほどそう言う事か。

 確かに貴重な食材を利用しない手はないもんな。


「という訳で出来上がったのがこれらの料理でっす!」


 ズラリと並べられるモンスター料理。


「で、これをどうしろと?」


「食べて」


 そう来たか。


「店に出す前に試食して欲しいのよ。クラフタ君なら毒消しとか簡単に用意出来るでしょ?」


「だったら他の連中に食わせろよ。俺は領主だぞ」


 間違いなく毒見だコレ。


「食べさせたわよ。死にはしなかったから危険はないわ。でもちょっと気になる事があったからサンプルが多く欲しいのよ」


 サンプルと言い切りやがったぞコイツ。


「気になるってのはどう言う事なんだ?」


「うん、なんかね妙に元気になるの。急に叫びだして走っていったり、突然近くにある物を持ち上げたりしたのよ」


 なんかヤバイ料理なんじゃねぇのソレ?


「だからって人を実験台にしようとするなよ。それにそんな事なら……」


 俺はテーブルの上の料理をスキルで鑑定する。

 別に食べなくてもどんなモノかを調べれば良いだけなのだから。


「……ん?」


「どうしたの?」


「これは……」


『コカトリスの丸焼き:魔王の作った超高級料理。美味しいだけでなく、石化耐性とハイポーション相当の生命力回復効果がある』


『フェニックスのフライドチキン:魔王の作った超高級料理。美味しいだけでなく、火炎耐性と火属性を付与した攻撃力上昇効果が見込める』


『マンドラゴラの……』


「……」


 本当の意味での薬膳料理が出来あがっとる。


「ねぇ、分かったの?」


「アリス」


「うん、何々?」


「これを弁当にして大量生産しろ。そんでダンジョン前で販売な」


 俺は冒険者用の食料兼薬としてアリスのクリスマス料理を売る事にした。

 ついでにサンタルックの軽い防御効果のある魔法具も作って販売したらめっちゃ売れた。

 この世界では魔法具はロストテクノロジーだっての忘れてたわ。

 当然、このサンタ衣装の情報を聞きつけて冒険者達が町に大挙してやってきた。

 お陰でアクアモルトの町は一躍サンタの町になってしまった訳だ。


 余談だが、周囲の追及を避ける為に、サンタ衣装はダンジョンから発掘されたという事にしてある。

 あれが魔法具とは気付かなかったという言い訳付きで。

 そんな苦しい言い訳誰が信じるんだって?

 もちろん手に入れた装備を手放したくない大勢の人間達がだよ。

 まぁ、俺としては十分に儲ける事が出来たから問題ないんだけどね。


「ところで、いつまでコレを作ればいいのかしら?」


 厨房からアリスが顔を出して聞いてくる。


「もう暫く頼むわ。売れるうちに売っておかないとな」


「も、もう油の匂いは嗅ぎたくない……」


 フラフラとアリスが厨房に戻っていく。

 こうやって酷使しておけば二度と他人を実験台にしようなんて思わんだろう。

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