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ポッキーゲーム

今回は番外編です。


いつも感想を及び、誤字脱字の指摘をして頂きありがとうございます。


追伸:新連載「魔王さまのスマホダンジョン~課金する?~」を投稿しました!

魔王が現代地球に現れ、課金ダンジョンを運営して荒稼ぎするお話です!

「今日はポッキーの日よ!!!!」


 わが領地に生息する魔王が何が言い出した。


「ポッキーの日とはなんですか?」


 純真なアルマは、魔王アリスの思いつきに純粋な興味から乗ってしまう。


「ふふふ、良い質問ね。ポッキーとは、棒の形をした甘いお菓子の事を言うの。そして11月11日は棒が並んでいる様に見えるから、その日はポッキーの日と言うのよ!」


「……はい?」


 したり顔でポッキーの日を説明したアリスだったが、異世界人であるアルマにはピンと来なかったらしい。


「何故11月11日が棒なのですか?」


「え? いやだって1ってこう書くじゃない」


 そう言って紙にアラビア数字を書き込むアリス。


「1はこう書くのでは?」


 そういってアルマが書いた1は俺達の知っている1とは似ても似つかない形の文字だった。


「何コレ?」


「1ですが」


「え?」


「……ああ、そういう事か!」


 困惑した空気の中、俺は漸くアルマが理解出来ない理由を理解した。


「つまりアルマは日本人に馴染みのあるアラビア数字が理解できないんだ!」


「……あ、ああぁぁぁぁぁ!!!?」


 ようやくその事に思い至ったのか、アリスが膝を突いて慟哭する。

 いや、何故そこまで悲しみを表現する?


「なんて事! ポッキーの日にちなんで恋人同士で楽しむポッキーゲーム用に大量に売りさばこうとした私の野望が! 野望が!!」


 そんな事考えとったのか。


「ポッキーゲームって何ですか? ポッキーと言うのはお菓子なんですよね?」


 それがいけなかった。

 アルマはアリスの洩らしたポッキーゲームという言葉に興味を示してしまった。

 案の定アリスは立ち直ってポッキーゲームについてアルマに説明を始める。


「ふふん、いい質問だわ。まずコレがポッキー。そしてコレをクラフタ君にくわえさせる」


「フムフムです」


俺にくわえさせるという部分にアルマが過剰に反応する。


「そして、相手もくわえる」


 そう言ってアリスがポッキーの反対側を咥えた。


「ポッキーゲームって言うのは、此処からお互いにポッキーを食べていき、最後にはそのまま熱烈にキスをして愛し合うゲームなのよ!」


「なんと!」


いや待てそれはおかしい。


「では私が見本を見せます。よーいスタート!」


「ちょまっ!」


 しかし俺の制止を無視してアリスは猛烈な勢いでチョコを食べ始めた。

 俺は慌てて逃げようとするが、アリスは俺の体に抱きついてそのまま猛烈且つ熱烈に貪るように俺の唇を奪う。あっこら馬鹿、舌を入れようとするな。


「はわわわわわっ」


 アルマが両手で顔を隠すが、思いっきり指の隙間からガン見している。


「いい加減にしろ!」


 俺は無理やりアリスを引き剥がすと、アリスの脳天にチョップを叩き込む。


「ブギュッ!」


 ヒロイン枠が言ってはいけない潰れた蛙の如き悲鳴が響く。


「……と、まぁこの様に、シャイな恋人同士でも大手を振ってキスが出来るイベントなのよ」


 まだ言うか。

 俺はもう一発チョップを叩き込もうとしたのだが。


「素晴らしいです!!!」


 なぜかアルマが興奮した様子でアリスに駆け寄っていく。


「素晴らしいです!」


 もう一回繰り返した。


「とても素晴らしいイベントです! 是非とも流行らせましょう!!」


 ええー!?


「ふふふ、さすが、分かる女は違うわね」


 アルマとアリスががっしりと手を組む。 

 そして俺のほうを見る。


「では奥さんも旦那様とポッキーゲームをしましょうか。見るだけでなく、体験する事も大事だものね」


「はい!」


「……おおぅ」


 結局、俺はアルマともポッキーゲームをするのだった。


 ◆


 後日、アリスプロデュースのポッキーの日が開催され、俺とアルマがそのプレゼンをさせられる事となってしまった。

 菓子としてならともかく、こんなイベントを実行するヤツがいるのだろうかと危惧したのだが、意外や意外、ポッキーは奥様方を中心に大売れした。


「皆イベントにかこつけてイチャつきたいのよ」


 両手を焦げ茶色いの菓子塗れにした魔王が知った風な口を聞く。


「ふははははははっ! これからもポッキーを売りさばくわよぉぉぉぉ!!」


 欲望に塗れた雄たけびを上げるアリスだったが、彼女は気付いていない。

 所詮ポッキーはたった一日のイベント。

 かき入れ時が過ぎれば即座に閑古鳥がなく一過性の祭りだと言う事に。

 あんなにポッキーを作って。絶対在庫が余って後悔するぞ。


「ご主人様」


 などと冷ややかな目でアリスを見ていると、ミヤとドゥーロがやって来た。


「どうしたミヤ?」


 二人はモジモジしながら俺を見ていたが、意を決したのか、後ろ手に隠していたものを突き出す。


「私達ともポッキーゲームをして下さい!」


「して欲しいのー」


 なんとミヤ達が差し出してきたのは、アリスのポッキーだった。

 まさかこの2人までこんなイベントにのっかるとは。


「……宜しいでしょうか?」

 

 あーあー、顔を真っ赤にしちゃって。

 まったくしょうがない。


「一回だけだぞー」


 流石に何時も俺の為に働いてくれるミヤ達をないがしろにするわけにはいかないもんな。


「ありがとうございますご主人様! 皆さんOKだそうです!」


 ん? 皆さん?


「えーっと、ほらゲームだし」


「え、ええ。ゲームですからね」


 ミヤに呼びかけられ、物陰から現れたのはなんとフィリッカとレノンだった。


「いやその、たまたま遊びに来たらなんか面白そうな事してたから。ものはためしと買ってみたのよ」


「フィ、フィリッカ様に同じく」


「「「私達も宜しいでしょうか?」」」


 見ればフィリッカ達だけではなく帝国とのいざこざで新しく雇ったメイド達や、護衛の元魔法少女までポッキーを抱えていた。

 待て待て待て、コレを全員相手にするのか?

 流石にそれはアルマさんがおこでしょう?


「……」


 しかし頼みの綱のアルマさんは、新らしいポッキーを抱えて待機していた。

 そのチョコの色は新商品ですかねー?

 

 その日、俺は夕飯を食べる気が起きなくなるほどポッキーゲームをした。

 甘い物の食べすぎには注意である。

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