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番外編 左利きの日

先日は左利きの日だったので番外編です。

ええ、間に合いませんでした。日付変更3分前に書いて間に合う訳がないですよね!

 8月13日は左利きの日である。

 うん、異世界では何の関係も無いけどね。

 

「クラフタ様は左利きなのにとても器用に道具を使われるのですね」


 アルマがハサミを使って紙を切っている俺の手を見る。


「ん? そうか? 昔からこうだから気にした事も無かったけど」


「でも、先日クラフタ様の真似をして左手でハサミを使ったら後で手が痛くなってしまったのです」


 アルマに言われて手を見ると、親指の外側に跡が付いている。


「ああ、普通のハサミは右手用だからな。左利きの人間が使うと部品が干渉するんだよ」


 高級なハサミや古いハサミは使い手が使いやすいように作られてるから、最大公約数の右手用に最適化されてるんだよな。

 もっとも、いまはどちらの利き手でも使える様にフリースタイルな道具が増えてきたけどね。

 しかしそうか、左利き用の道具を作るというのはアリかも知れないな。

 特注で頼むのは非常に高く付くが、俺が作るぶんには材料費だけで済むしな!


「よしっ! 一つ作ってみるか」


 ◆


 と、いう訳で、工房にやって来た俺は早速左利き用のハサミを作る事にした。


 まず素材だが、普段使いの道具だから硬さは追及する事は無いな。だから重い地の属性石は不要。同様に攻撃に適した火の属性石もパスだな。残るは風と水の属性石だが、水の属性石の特性は回復魔法等の治療がメインだ。やはりここは軽さを得ることの出来る風の属性石が良いだろう。刃物に使うと切れ味も良くなるしな。


 俺は風の属性石を用意する。

 コイツを砕いて粉末にして、メインの素材は鉄だと錆びるのが嫌だからステンレスみたいに錆びにくい素材がいいよな。やはりミスリルを使うか? ミスリルは鍛える際に魔力を込める事で紫の色が付く。込めた魔力によって硬度と色の鮮やかさが増すミスリルは、見た目で質が一目瞭然なので良品が欲しい時は色鮮やかなミスリル製の道具を買えばよいと言うくらいだ。

 ちなみに地球ではミスリル=アルミ説がある。

 風の属性石の粉末を混ぜたミスリルは軽くて硬いのでますますアルミっぽくなる。

 師匠から貰った簡易鍛冶工房を使ってミスリルのインゴットと風の属性石の粉末を溶かす。

 そして溶けたミスリルと風の属性石が混ざった頃を見計らって魔力を込めながらハサミの形状をイメージする。半自動で作ってくれるマジックアイテム超便利。

 暫くするとハサミの刃が回収口から出てくる。

 後はこれを組み合わせて軸を取り付ければ完成なのだが、それだけではつまらない。

 せっかくなのでハサミに魔法プログラムを刻み込む事にしよう。

 何が良いかな?

 やっぱ切れ味アップか? けどそれだけだと扱いを誤ったときに大怪我してしまいそうだ。

 うーん、肉を切らない様な仕込みをするか? ある程度の弾力のあるモノは切れない様にするとか。

 コンニャクとかね。

 あと切れ味が鈍らないようにとハサミが曲がらないように衝撃耐性と熱耐性もつけておくか。メンテナンスフリーって大事だよね!


 ◆


「ミスリルハサミー!!」


 出来上がったハサミを掲げてなつかしの番組のアレみたいに叫ぶ。


「ではレッツ切断!」


 俺は近くにあった紙を切って見る。

 すると一切の抵抗も無く紙が切れた。

 全く切っている感じがしないくらいだ。


「おー! さすが俺!」


 あとはセーフティがちゃんと機能するかだな。


 ◆


 食堂に来た俺は魔法冷蔵庫に入れてあった肉を取り出してテーブルにおき、端っこを切ってみる。

 ぐにゅん。

 一切抵抗も無く紙を切れたハサミだったが、目の前の肉に対しては全く刃が通らなかった。


「よし成功!」


 これで小さな子供が使っても安全なハサミが出来上がったぞ!

 じゃあ取り出した肉を仕舞って部屋に戻るか。

 その時だった。

 肉の塊を持とうとした俺は、うっかり持っていたミスリルハサミを落としてしまったのだ。


「あっ!?」

 

 トスッ


 ミスリルハサミが床にフカブカと突き刺さる。


「うわー」


 我ながら見事な切れ味である。


 ススススッ

 ミスリルハサミが床に沈んでいく。


「ん?」


 そして消えた。


「…………えっ?」


 床を見るが、ミスリルハサミは影も形も無い。

 まさか床を切り裂いてそのまま沈んでしまったというのか!?

 つまりこのままミスリルハサミは床を突き抜けて延々と地面を切り裂いていくのか!?

 ではこのまま切り裂き続ければ星の反対側に出てしまうのか? いやいや、それは無いだろう。そもそも惑星なら中心には マントル層がある。本当に沈み続けているのならいつかは溶岩の海の中に沈んでしまう事だろう。


「うん、心配ないない。……じゃあ……そう言う事だからもっと切れ味の鈍いハサミを作り直すか!」


 数年後、とある溶岩地帯から恐ろしい切れ味のハサミが見付かったというニュースが世間を騒がす事になるのだが、それは別の話である。

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