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地下通路の決戦

「ミヤ、調べて欲しい事がある」


 マリス達を追って地下通路に入る前に、ミヤにある調べ物を頼む。

 これが上手くいけば彼等に対する大きなアドバンテージになるからだ。

 あいつ等が自分達の現状を教えたのは、俺が同情して攻撃の手が鈍る事を期待したからなのかもしれない。それとも自分達の現状を誰かに聞かせたかったのか。

 いや、考えても仕方ないか。

 少なくとも、マリスの言葉から彼等を止める事が出来るかもしれない情報が手に入ったのは事実なのだから。

 俺は足の速い動物型ゴーレム達を先行させ、地下通路へと入っていった。


 ◆ 


 先行したゴーレム達が行き止まりや罠の情報を俺に送ってくる。

 その情報をもとに俺はマリス達がいるであろう場所へと一直線に向かっていった。

 そして暫く進んでいるうちにマリス達を発見したとの報告が入る。

 俺のゴーレムは喋れないが、通信機能はある。その機能でマリス達の声を拾ったのだ。


『何でこんな時に……』


『老……劣……』


 マリス達に見つからない様に離れた距離から見張っている為、音声は途切れ途切れだ。

 何かが老朽化した事で移動が妨げられているらしい。


 そして漸くマリス達の後姿を確認する。

 見ればマリス達の前には大きな扉があり、少しだけ扉が開いていた。

 恐らく老朽化であの扉が途中で止まってしまったのだろう。

 小型のゴーレムが扉を開こうと引っ張っている。


 俺は再び睡眠薬の入ったスタングレネードを投げつける。

 しかし警戒されていたのか、黒紳士がスタングレネードを跳ね返した。

 俺に向かって打ち返されたスタングレネードが閃光と共に麻痺薬、目潰し、睡眠薬を撒き散らす。

 だが俺のスーツはグレネードの一切を無効化する。

 睡眠薬の煙の向こうから複数のナイフと先端が尖った細長い金属柱が襲ってきた。

 だがその攻撃も俺のスーツには聞かない。

 上級防御魔法のプログラムが刻み込まれたスーツの前ではこの程度の攻撃などダメージにもならない。


「無駄だ。大人しく投降しろ」


 だがここでガコンと言う音がして少しだけ扉が開く。


「開いた、行ける」


「二人共。先へ。レット、姫様を頼む」


「分かった」


 レットを促した黒紳士が俺の前に立ちふさがる。


「退いてもらおうか」


「悪いがこの先へは行かせん。我等ルード、いやバキュラーゼ全ての民の悲願を叶える為にも」


 黒紳士は決死の覚悟だ。

 以前あった時と違い余裕がない。それは姫と呼んでいたマリスがいるからなのだろうか。


「そういえばアンタ、前にあった時俺に予告状を付けただろ」


 それは黒紳士に一杯食わされた時の事だ。


「あの金糸鳥を頂くって言うのは、金糸鳥の刺繍をされた服を着る事の出来る人間、つまり貴族を頂くって意味で、それはすなわち帝国を頂くという予告だったのか?」


 マリスの話を聞いた俺は黒紳士の予告状の意味を自分なりに推測してみた。

 すると黒紳士はハチパチと手を叩き始めた。


「グッド、さすがは探偵だ。素晴らしい洞察力だよ。そしてソレを思い出したのなら、コレも思い出したまえ」


 そういって黒紳士が差し出した手には黒いヘルメットが乗っていた。


「っ!?」


 俺はあわてて自分の顔に触れる。

ない! ヘルメットが無い!


「コレで忌々しい薬も使えまい。ついでだ。そのスーツも頂こうか」


 黒紳士がもう片手を差し出すと、今度は俺のゴーレムスーツが握られていたではないか。

 俺が下を向くと、そこにはゴーレムスーツは無く、中の服だけが見えていた。


「コレでこちらの攻撃も防げまい?」


 黒紳士が高らかな笑い声を上げる。

 厄介な能力だ。

 けどお陰で分かった事がある。

 アイツのスキルは高速移動とかでは無いという事だ。

 以前黒紳士にヘルメットを奪われた事から、俺はスーツにセキュリティをかけた。

 正しい手順を取らねば脱げないように。

 だというのに黒紳士は一瞬で俺からヘルメットとスーツを奪った。

 つまり……


「お前のその力は転移系の能力のようだな」


 コレが俺の結論だ。

 コイツの能力アポーツのような自分の手元に物を引き寄せる効果を持っているのだろう。

 それがスキルか、魔法具なのかは分からないが。


「ふふふふっ、ふはははははははははっ、よくぞ見破った。その通りである!! 我が能力こそは『交換』!! 一定範囲内の自分が認識しているモノを交換する能力。その力で君の装備と交換したのだ!!」


 『交換』、そんなスキルもあるんだな。

 黒紳士の言葉に頭を払う。すると何かが床に落ちた。

 石だ。俺の頭の上にはほんの小さな石が乗っていた。

 よく見ると床にも落ちている。

 この石で俺の装備を奪った、いや、交換したのか。

 となれば俺が自分の放った網に掛かったのも、黒紳士が自分と俺の位置を交換したからだったのか。


「そしてこの力を使えば君の武器を奪う事などたやすい。君が私に魔法で攻撃すれば私は命中する寸前に君と入れ替わる。どうだね? 完璧な力だろう?」


 確かに厄介だが、だが何で教える?

 戦いを有利に進めたければ教えない方が特だろうに。

 ソレなのに教える意味…………まさか!?


「時間稼ぎか!」


 俺が答えに行き当たった事に満足の笑みを浮かべる黒紳士。


「左様。一秒でも長く少年をここに足止めするのが私の役割りだ。二人があそこにたどり着けば、もはや追いつく事は不可能」


 追いつけない? なんらかの移動手段か。

 飛翔船でも隠してあるのか?

 いや、あれは目立つ、飛翔船を持つ俺なら追うのは難しくないだろう。

 なら他に……


「転移装置!」


「そう、転移装置さえ起動できれば、姫様はこの地を離れ、もはや追いつく事は不可能」


 王都を襲撃した時に使った転移装置はここにあったのか!


「さぁ、戦おうか少年‼」


 黒紳士がマントの中から大量の武器を取り出す。


「『交換』のスキルがあれば武器は無限に取り出せる。エネルギーは全て武器にチャージしてある。つまり私は一切疲労しないと言う事だ。しかも君の攻撃は私に当たらない。どうやって私を攻略するかね?」


 黒紳士は自分から動こうとはしない。

 奴のしたいのは時間稼ぎだ。

 俺の攻撃はヤツには通用しない。だから守りに徹すればマリス達を逃す事が出来る。

 と考えているみたいだが、ヤツは大きな間違いをしている。

 それもかなりシンプルな間違いだ。


「だったらこの攻撃を受けてみろ!!」


「無駄と知りながら挑むか少年!!」


 黒紳士も構える。俺がどんな攻撃を行っても『交換』スキルで対処できると考えているからだろう。

 だからスキルが無意味な攻撃をしてやる!!


「フレイムヘル!」


 それは、かつて俺の命を奪おうとした男が得意とした魔法だった。

 範囲内の全てを焼き尽くす地獄の業火。

 俺はその魔法を、逃げる場所の無い地下通路で解き放った!

 本来は術者が指定した範囲で発動させる為、使い手が危険に晒される事は無い。

 だが、俺はあえてその炎に自分を巻き込んだ。


「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」


 黒紳士の悲鳴が上がる。


「ば、馬鹿な! スキルを発動したのに……何故私が燃えているのだぁぁぁぁ!!!」


 そうさ、黒紳士がスキルで逃げても、逃げた先も燃えていれば逃げた意味がない。

 その為、あえて二人共被害を受ける様に範囲指定をしたのだ。

 お陰で滅茶苦茶熱い! だが不死化の進んだ俺なら耐えられる。

 メッチャ熱いけどな!!


「コレなら逃げる場所なんて無いだろう!!」


「き、貴様、ま、まさかぁぁぁ!?」


 炎に包まれる俺の姿を見て漸く黒紳士が俺の狙いに気付く。


「諸共に死ぬ気かぁぁぁぁぁ!!」


 黒紳士が『交換』スキルで取り出した道具を使い、周囲の炎を消化していく。

 消火器か。だが自分だけ助からせはしない。


「もいっちょフレイムヘル!!!」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 消火した範囲を地獄の業火が覆い尽くす。


「ロックストリーム!!」


 岩の嵐を発動させる新魔法、ロックストリームが俺と黒紳士を岩のミキサーで刻んでゆく!!

 魔法が発動した瞬間に俺と黒紳士の位置が変わる。反射的に『交換』のスキルを発動したのだろう。


「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 だが俺ごとダメージを受ける様に放ったロックストリームに、黒紳士が悲鳴を上げる。

 正直超絶痛い。

 そして黒紳士が岩の嵐に翻弄されているスキに俺はヤツへと詰め寄った。

 宝物庫から大星剣メテオラを黒紳士に見られない様、体の影に隠して取り出す。

 黒紳士にタックルをかけその体のバランスが崩れる。

 しかし気が付けば姿勢が崩れていたのは俺のほうだった。


「甘いぞ……少年!!」


 上級魔法であるフレイムヘルとロックストリームのダメージを受けながらも、黒紳士は使命感で身を振るわせ俺を押し倒した。


「ぐっ!?」


 突然黒紳士がうめき声を上げる。その視線は己の脇腹に注がれる。

 大星剣メテオラに。

 俺は『看破』スキルを発動。だがステータスは未だアンノウン。

 『隠蔽』スキルは奪えていない。

 黒紳士を突き放し、即座に大星剣メテオラを宝物庫に収納。

 コレを奪われる訳には行かないからだ。

 そして即実験。

 普通のナイフを何本も取り出して黒紳士に投げつける!


「ふははははっ、魔力が切れたか? だがそんな物は無駄だっ!」


 上級魔法を連続で唱えた直後の連続物理攻撃で魔力切れを起こしたと思ったのだろう。

 黒紳士黒紳士は俺の攻撃を避けようともしない。

 そしてナイフが突き刺さった。


「ぐぁぁぁぁ!? 何故だ!? 何故スキルが発動しない!?」


 どうやら上手くいったようだ。

 大星剣メテオラのスキル剥奪能力によって、黒紳士の『交換』スキルを奪う事に。

 俺は再び大星剣メテオラを取り出し、『交換』スキルについて検索する。


『【上級交換】半径500m以内の人、物を入れ替える』


 やっぱり上級だったか。

 コレさえ手に入れれば黒紳士も怖くは無い。

 俺は『交換』スキルを発動させ、ロックストリームで散乱した石と自分を交代する。

 交換するのは黒紳士の真後ろの石だ。

 俺の目の前に黒紳士の背中が見える。


「き、消えた!?」


 目の前で俺が突然消えた事に驚愕する黒紳士。

 俺は軽く大星剣メテオラを振り、黒紳士を切り裂く。


「ぐあぁ!?」


 大星剣メテオラに切り裂かれた黒紳士が真後ろに居る俺の方に振り向く。

 だが既に俺は別の場所にある石と位置を交換したばかりだ。

 黒紳士が俺を見失っている間に『看破』スキルで黒紳士のステータスを確認する。


名前:スタロアス=ダーム

Lv60

クラス:テクニカルスカウト

種族:異世界人


能力値

生命力:655/734

魔力:80/80

筋力:3

体力:3

知性:7

敏捷:5

運 :4


 おお、アンノウン表示が消えたぞ。

 大星剣メテオラで新たに獲得したスキルを確認する。


『【隠匿(使用者限定)】スキル使用者の情報を一部認識できなくする、常時発動』

 

 どうやら黒紳士が所有していたスキルは『交換』と『隠匿』の二つだけだったみたいだな。


「くっ! 何故スキルが発動しないのだ!?」


 未だ黒紳士は俺にスキルを奪われた事に気付いて居ない。


「発動しないんじゃない。もう持っていないんだよ、スタロアス=ダーム」


「な、何故私の名を!?」


 己の名を言い当てられた事に動揺する黒紳士。

 そして彼はハッとした表情で俺の持つ剣を見る。


「貴様、まさか……」


「そうさ、お前のスキルを頂いたんだよ」


 俺は大星剣メテオラを見せびらかすように振る。


「神器かぁぁぁぁぁ!!」


 黒紳士が俺に襲い掛かってくる。狙うは大星剣メテオラだ。

 だが俺は慌てず『交換』スキルで周囲に散らばる石と位置を交換して、大星剣メテオラに収納されていた『交換』スキルを俺の魂にダウンロードする。

 その後は大星剣メテオラを宝物庫にしまい込んだ。

 コレで神器を奪われる危険はなくなった。

 もっとも、神器は認められた所有者以外は使えないんだが。


「おぉぉぉぉぉ!!」


 周囲を見回し俺を発見した黒紳士が再び俺に向かってくる。

 自慢のスキルを失った事で黒紳士には焦りの色が見えていた。

 せっかくだ、更に焦ってもらおう。


 俺は『領域』スキルのレーダーに映る、レットの反応と自分の位置を『交換』した。


 ◆


「もう直ぐです。もう直ぐ転移装置にたどり着きます。アレさえ起動すればスタロアスもスキルを使って私達に合流する事でしょう」


 俺とレットが入れ替わった事にも気付かずマリスがレットに語りかける。


「残念だがそれは無理だ」


 俺の声に驚いたマリスがこちらを振り向く。

 振り向いたマリスに即効性の強力睡眠薬を飲ませる。

 無理やり薬を流し込まれたマリスが口内で気化した強力睡眠薬を吸い込み即座に倒れる。


 結末は、非常にあっさりとしたものとなったのだった。 


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