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帝都強襲

 準備は整った。

 ドゥーロとシュヴェルツェのお陰で帝国の騎士団は帝都から離れ、俺の罠にかかった帝国騎士達は帝都に帰れなくなった。

 異世界人に憑依された騎士達は全員解放し、彼等にはその事を伝えてある。

 といっても、時間との勝負なので説明は必要最小限だ。

 それでも実際に正気に戻った騎士達が居るので、異世界人が本当かどうかはともかく帝国に敵対する存在が居るのは事実と理解してくれた。

 後の細かい説得はエメラルダにやって貰う。

 その位の雑用は本人にしてもらわないとな。

 勿論その会話は盗聴している。エメラルダもそれは承知の上だろう。

 あいつには心を読むスキルがあり、ドラゴンカイザーもまた帝国内で起こる出来事は全て把握しているからだ。


「ドラゴンカイザーか……」


 あの巨大松ぼっくりと遭遇した時、気になる事を言っていたな。

 神言、それはスキルの事だと。 

 あの言葉が確かなら、神言を使ったと語ったドラゴンカイザーはスキル持ちと言う事だ。

 人間以外の存在がスキルを持っている。

 何気に大事だ。

 もしかしたら俺が今まで戦ってきた魔物や、そしてこれから出会う魔物にもスキルがあるかも知れないのだ。

 しかしスキルは元々神が人間に授けた力の筈。 かつてアルマの語った七色の神の神話が正しいならば、だが。

 神話に偽りがあるのか、それともドラゴンカイザーが特別なのか。

 気になるよなぁ。

 そして気になるついでならもう二つ。

 それはシュヴェルツェの住んでいた遺跡の研究空間にあった、『偽装神言魔法 魂魄改竄(試作)』

と書かれた研究資料だ。

 あれがドラゴンカイザーの言っていた神言の事なら古代魔法文明人は自分達の手でスキルを作り出そうとしていたという事になる。

 神が実在する世界で神の力を作り出そうなんて、命知らずがいたもんだ。

 もしかしたら古代魔法文明が滅亡した本当の理由はそれだったりしてな。

 そこら辺も当時から生きていたドラゴンカイザーなら知っているかもしれない。

 っと、思考が脱線した。

 手に入れた資料を調べれば俺の予想通りかどうかも分かるんだが、あいにくとあの資料の文字は表紙の文字以外読めなかった。

 内部の文字が全く理解できなかったのだ。

 俺にはアルケミストクラスが使用できる言語読解というスペルが使える。

 始めは初級だったこのスペルも、今ではレベルが上がったお陰で上級が使えるようになっていた。

 初級言語読解スペルの能力は、『異種族との会話、未知の言語の翻訳を行う。初級は言語の概念のある異種族との会話および魔力、真言の篭らない文字の読解』というものだった。

 それが中級になり魔力の篭った文字を解読出来る様になった。

 そして上級になって真言の篭った文字の解読も出来る様になった。

 神言と真言、その読みは同じ『しんごん』だ。

 だから何か関係があると思ったのだが、結果はごらんの通り。上級言語読解スペルでも翻訳は不可能だった。

 つまりお手上げだ。

 おそらくこの書類の文字はスペルでは解読できない文字なのだろう。

 お手上げである以上この問題は一旦お預け。

 現状の最優先事項に戻るとしよう。


 ◆


 現在、ヴィクツ帝国の帝都には予備戦力しか居ない。

 近衛騎士団に入るには実力不足だと判断された者達と、既に老いて一線から引いた者達だ。

 正直言ってコイツ等は貴族のボンクラ息子ばかりなので、今なら冗談抜きで帝都を崩壊させる事が出来るだろう。

 いや、しないけどさ。

 動物型ゴーレムからの情報で、異世界人に憑依された貴族達の情報は集まっている。

 大抵は高い身分の貴族か、重要な仕事に付いている者を集中的に狙っているが、中には大貴族の部下に取り付いている奴もいた。

 捕獲する順番だが、コレはエメラルダとの約束があるので噂の男の娘マリス君から捕獲する事にする。

 転移装置で逃げられる事を考え、帝都の至る所に転移阻害用のジャマーを用意しておいた。

 こいつは動物型ゴーレムに内臓してあるので、敵にバレてもジャマーを撤去させる前に逃げればいい。

 なお、ジャマーはかつてリリスやイザー達に使った物の改良型だ。

 準備は万端。

 とはいえ、油断は禁物。念の為、戦闘用のゴーレムも準備しておこう。

 更に武装は最新式のフルフェイススーツ。

 今回は真面目なデザインのヘルメットだ。

 アレはアレで割と気に入ってたんだがな。

 傍目には峠を攻めるライダーに見える出で立ちだが、この世界では見慣れない恰好だろう。

 ここに至っては速度が勝敗を決めるので、防御力向上の為にトレードマークの白衣も着ていく。

 何だかんだ言ってコイツの性能は圧倒的に高いからな。

 師匠達の技術力は天井知らずだ。

 登れば登るほど師匠達の居る高みが遠ざかって行く。

 まぁいつか追いつくけどな。


「じゃ、行くか」


 ◆


 動物型ゴーレムの案内で、帝城に忍び込む。

 念の為『領域』や『気配遮断』スキルを始めとした補助スキルを発動させておく。

 スキルと魔法具の併用効果で巡回の警備達も俺の存在に気付かない。

 っつてもこのやる気の無さを見るに、スキルを使わなくても見つからない気がするが。

 さすが腐敗してるだけある。スパイ入り放題だろ絶対。 

 少し歩くと、マリスが居るらしい区画にやって来る。

 この辺りには、マリスをおかしくしたエメラルダの婚約者達がたむろしているらしい。

 特に用も無いのに帝城に入れるのは腐敗もあるがリーダーがエメラルダの婚約者だからだ。

 つまり次期皇帝の伴侶。

 そりゃ追い返すなんて無理だわな。

 っと、そこで『領域』スキルが生命反応を示す。

 そっと隠れながら近づくと、お目当ての人物らしき美少女を発見した。

 若草色のドレスを身に纏い、上品なアクセサリを身につけている。

 正直エメラルダから特徴を聞いていなければ女と勘違いしていた所だ。

 早速俺は後ろから近づきマリスの捕獲を試みる。


 殺気。


 とっさに横っ飛びで回避。

 己の首があった場所を光速で通り過ぎる物体。

 それが何か確認する事も無く更に横に跳躍。

 銀色の閃光と漆黒の蛇が襲い掛かってくる。

 七天夜杖を双剣モードにして受け流しながら距離をとる。

 三つの攻撃を回避した俺はマリスから大きく離れざるを得なかった。

 

「避けたか、更に腕を上げたな。いや、実戦経験を積んだと言うべきか」


「お見事、当てたと思ったのですがな」


「避けられた……」


「っ!? お前等は……」


 俺を襲った三度の攻撃の主達が物陰から現れる。

 俺はそいつ等を俺は知っていた。

 バギャン、黒紳士、レット、かつて戦った事のある男達だ。

 そしてマリスが前に出て来る。


「初めまして、クラフタ=クレイ=マエ……」


「久しいな少年!」


「約束通り帝都で待っていましたよ」


「目撃者、今度こそ殺す……」


「少年よ、主の命が惜しくば我等ルード三頭竜を倒すが良い!!」


「邪魔だお前達」


「「「あうっ!」」」


 マリスの挨拶をさえぎったバギャン達が後ろから蹴られた。

 うーん? 宿敵? っぽかったのになぁ……

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