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はじめてのチュー?

『チューするのだ!』


 この世で最強といわれる魔物の王ドラゴン。

 その王であるドラゴンカイザーは間違いなくそう言った。


「「「「チュー!」」」」

「チュー!」

「チュー!!」

「チュー!!!」

「チュー!!!!」


 なぜかリズミカルに一部のドラゴン達がチューコールを始める。

 人語を喋れないらしいドラゴン達も同じリズムで鳴き始める 

 何だこれ!?

 どうして言いか分からずエメラルダに説明を求めると、エメラルダは顔を俯かせて体を震わせていた。


「あのー、エメラルダさん?」


「ひっ!ひゃい! 何!?」


 こっちが驚くくらい動揺を見せるエメラルダ。

 今までのエメラルダとは別人の様だ。


「ああ、いや、これは一体どう言う事なのかなーと」


「ええええぇ、いえ、その、ド、ドラゴンにとってはね、チューというのは互いの因子を混ぜ合わせる行為なの。基本ドラゴンは単体で子を成す事の出来る存在なんだけど、他のドラゴンの因子を混ぜ合わせる事で子であるドラゴンは両親の因子を受け継いだより強力な個体として生まれる訳。例えば火のドラゴンが氷のドラゴンと因子を混ぜ合わせたら、生まれる子は火と氷の二つの力を持ったドラゴンになるの」


 つまり確実に親の良い所取りの子供が生まれる訳か。

 そりゃドラゴンが最強種族と言われる訳だ。


「それで、竜人である皇家もドラゴンの特性を持っているのよ。ドラゴンほど確実じゃないけど、高い確率で両親の因子を受け継ぐわ」


 なるほど、格下といえどドラゴンを倒せる人間(?)である俺の力を自分の庇護する皇家に混ぜ、皇家の力を増したい訳だ。


「だからドラゴンと竜人にとってチューとは神聖で大切なものなのよ!」


 道理でエメラルダが動揺するわけだ。

 ドラゴン達にとってチューとは人間以上に重要な事の様だ。

 ……あれ?


「そういえばエメラルダとは以前キスしなかったか?」


 というのも、以前彼女達に刻まれた奴隷の証である呪印を消した時、皆からお礼のキスを貰ったからだ。

 エメラルダがビクリと体を震わせる。

 額からタラリと汗を流して視線が泳ぐ。なんだかいたずらがバレた子供みたいな態度だ。


「え、ええとね。あの時はその…………ご、ごめんなさい!! 私だけしてませんでした!!」 

「え? そうだったの?」


「本当にごめんなさい! さっきも言ったとおり私達竜人にとってチューはとっても大切な物なの、だ

からその……ごめんなさい」


 まぁ、そんな理由があるのなら仕方が無い。

 なにしろ34人だもんなぁ。いちいち誰がしてくれたかなんて覚えていないよ。


「チュー!」

「チュー!!」

「チュー!!!」


 などと話している間もドラゴン達のチューコールは続く。

 決して小学生のノリといってはいけない、仮にも相手はドラゴンなのだから。もう一度言うドラゴンなのだから……


『さぁ! チューするのだ!!』


 ドラゴンカイザーが俺達にチューを要求する。

 うーん、チューくらいならイイカナ?

 なんとなく流れに流されている気もするが。

 俺は目の前にいるエメラルダを見て……考えを改めた。

 エメラルダの顔は青ざめていた。ソレは恥ずかしがっている様にはとても見えない。

 どちらかと言えば……


「やめだ、無し無し。チューは無しだ」


 突然拒否をした俺に目を丸くするエメラルダ。


「え? 何で?」


「嫌なんだろ?」


「あ……」


 俺が本当にチューをする気が無いと悟ったエメラルダはへたり込んで大きく息を吐く。


『何故チューせんのだ? 我の加護を得たくは無いのか?』


 ドラゴンカイザーが不機嫌そうに問いかけてくる。


「だってコイツ、好きな男がいるじゃん」


 俺の言葉にニヤリと笑うドラゴンカイザー。


『よくわかったな』


 何がよく分かったな、だ。これ見よがしにヒントを出してきた癖に。

 ドラゴンカイザーがエメラルダに対して言った言葉、帝国の民ではなく、たった一人の為にと。

 これはつまりエメラルダの恋人が敵に捕まっているか支配されている事を指していたのだろう。


「あ、あの……私……」


 俺を見るエメラルダの姿は、これまでのエメラルダと同一人物とは思えない程弱々しく、それでいて強く救いを求める眼差しをしていた。

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