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ドラゴンカイザー

設定ミスでアリアと馬車も龍の巣に入っていたので修正しました。

 俺の前に現れたドラゴンは言った、『我が名はドラゴンカイザー』と……

 しかし目の前にいるのは巨大な松ぼっくりだ。

 いや、良く見ると羽が生えている、小さいのが。

 更に良く見ると手と足が生えている、小さいのが。

 両端をみると尻尾と頭が生えている、小さいのが。


「ドラゴンなのか!!!」


 目の前に広がるドラゴンという単語を冒涜する存在に驚愕を隠せない俺!

 どうしようもないほど納得の出来ない感情に襲われ目の前の存在をドラゴンと認められない俺!


「ドラゴンなのか!?」


 周囲のドラゴンが頷く。どっちの意味で頷いたんだ?

 だがこの威圧感は本物だ。誠に遺憾ながら威圧感だけは本物だ、威圧感だけは。


『威圧感だけではないぞ。この翼、鱗、爪、どれをとってもドラゴンであろう』


 吐き出したくなる程に強烈な意思の奔流、このまま魂が破壊されてもおかしくないと信じてしまいそうな程の圧力。

 だが俺は、地球人は、日本人は、目の前の存在をドラゴンとして認める事だけはなんとしても抵抗しなければならない!!


「太りすぎだろう手前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


『…………』


 言ってしまった。周囲のドラゴン達すらもが転がるのをやめて俺達を見ている。

 マズイ、相手は龍の王……の筈。俺達はコイツに頼んでエメラルダを皇帝にして欲しいと頼まなければいけなかったのに、つい勢いで突っ込みを入れてしまった。

 目の前のドラゴンカイザー? の無言の姿が不気味さを煽る。


『太っているのではない。豊満なのだ』


「それはデブの理論だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 後の事など知った事かと言葉が勝手に出てしまう。だが仕方ないのだ、だって俺は日本人なんだから、これをドラゴンと認めたらなんだか悔しいじゃないか!


『太ると言う事は他者よりも栄養を多く摂取できる者、つまりはより高き位に居る者だと言う事だ』


 た、確かに古代の地球でもデブは豊かさの象徴とされていた。そう考えれば正しいのか? いや! 騙されるな俺!!


『くくくくく、しかしよく喋る。我が神言を受けて心が麻痺しないのは賞賛に値するぞ』


 神言? どっかで聞いた事がある気がするんだが?


「あんた何を知ってるんだ? それに師匠達の事も知っているのか?」


 俺の質問にドラゴンカイザーはくくくと笑いながら答える。 


『知っているとも。アレ等とは旧知の仲だからな』


 やっぱり師匠達と知り合いなのか。

 ドラゴンと古代魔法文明には何らかの関係があったって事か?

 もしかして師匠達は只の研究バカでは無い?

 なにか俺の教えられていない計画が進行しているのか?

 俺を巻き込む形で?


『まぁソレは今知らなければならぬ事ではあるまい。お前達が来た理由は別にあるのであろう?』


 そうだった! あまりにアレな出会いでついつい本題を忘れる所だった。


「おい、エメラルダ! ……エメラルダ!?」


 横に居るエメラルダにドラゴンカイザーとの交渉を促そうとしたのだが、なんとエメラルダはカニみたいに口から泡を吐いて気絶していた。 

 しかもスカートは濡れ、御者台は水をこぼしたように濡れていた。

 失禁していたのだ。お漏らし天国だ。


『業が深いな人間よ』


「べ、別に変な感情なんて無いわ! ああもう、起きろエメラルダ!!」


「あ……う……ああ……私……何を?」


 俺が肩を揺するとエメラルダはようやく意識を取り戻した。


「ドラゴンカイザーと交渉しに来たんだろ、早く交渉しろよ」


「……え? ドラゴンカイザー様? どこ? どこにおれらるの?」


 正気に戻った途端ドラゴンカイザーを探し始めるエメラルダ。


「あれだよ、あの丸いの。アレがドラゴンカイザー」


 目の前の松ぼっくりを指差して教えてやるとエメラルダが驚いて固まる。


「あ、アレがドラゴンカイザー様……」


 呆然と呟くエメラルダ。気持ちは分かる、アレが自分達の国祖だと言われても信じる事など出来まい。


「なんて雄大なお姿……」


 そうだろうそうだろう。あんな雄大な姿を見たら誰だって……


「っ雄大!?」


 見ればエメラルダは大粒の涙を流してひざまずき、あまつさえドラゴンカイザーを拝み始めた。

 おしっこ洩らした美少女が泣きながら巨大松ぼっくりを拝んでいる。

 なんだこの光景、なんだこの光景!?


「ドラゴンカイザー様、偉大なる国祖様。私はヴィクツ帝国第5皇女エメラルダ=ジェイ=ヴィクツと申します。この度はドラゴンカイザー様にお願いの儀があって参りました次第でございます」


 ひれ伏しながらエメラルダがドラゴンカイザーに名乗る。


『知っておる』


 再び、ドラゴンカイザーの物理的圧力さえ伴った声が響いた。


「ひっ!」


 再び気絶こそしなかったものの再度失禁をしてスカートと床を更に濡らすエメラルダ。


『我が前に言葉は不要。人の思考など水のせせらぎと同じよ。意味を考えるまでも無く理解できる。帝国で起こる全ての出来事を我らは理解しておる。もう一度言うぞ、全て理解しておる』 


 その言葉にエメラルダが震える。自分達のふがいなさにドラゴンカイザーが怒っていると思ったのだろうか?

 しかし何故二回言った?

 けど説明する必要が無いのは楽だ。あとはエメラルダを皇帝として認めて貰うだけだ。


『否、それは認められぬ。その娘に資格は無い』


 エメラルダがビクリと震える。無理も無い、まさか神祖であり王家の守護者であるドラゴンカイザーに話もせずに断られるとは思っても居なかっただろうから。

 しかし国家の危機に随分と冷たい。


『理由はそなた自身が良く知っておろう。王座に就きたければ自らの力で就くがよい』


 にべも無いって感じだな。響く声には一切の情が無い。本心で手伝う気が無いのだろう。


「で、ですがこのままでは帝国は異世界の住人に侵略されてしまいます。わ、私は次期皇帝として帝国民達を守らなければなりません」


 おお言った。なかなか言うじゃないかエメラルダの奴。相手が国を興した神祖だというのに一歩も引く様子が無い。


『帝国民達の為だと? 違うであろう、お主が護りたいのはたった一人の人間であろう?』


 エメラルダがビクリと体を震わせる、顔は青ざめ、小刻みに震えだす。

 たった一人の人間?


「おい、エメラルダどうしたんだ?」


 だが俺の質問にエメラルダは答えない、いや聞えていないのか?


『それがお前に資格がないという理由だ』


 先程までのドラゴンカイザーの声と違い、その声音には硬い物が含まれていた。

 ドラゴンカイザーは何を知っているんだ?


『だが何事にも例外と言うモノはある』


 ドラゴンカイザーの言葉にエメラルダが顔を上げる。

 本人は気付いていないだろうが、その顔は涙と鼻水と涎でグチャグチャなっており、せっかくの美貌が台無しだ。


『ドラゴンは強者を好む。我が眷属を打ち倒したる雛形よ。汝は王たる資格を持つ』


雛形ってさっきも言ってたけどもしかして俺の事か? けど眷属って? 俺、この国に来てドラゴンと戦ったことなんて無いぞ。

 俺がドラゴンと戦った場所はずっと遠くの……


『然り、我はあらゆる我が眷属の事を理解しておる。汝に討ち果たされた眷属の事もな』


 あ、ヤバい。これまずい流れじゃね?

 もしかしなくてもランドドラゴンやストームドラゴンを倒した事だよな


『安心するが良い。ドラゴンは強者を好む。戦って勝利したのならそれは誇るべき事だ。そこにわだかまりは無い』


 どうやら同胞を殺された仕返しをされる心配は無いっぽい。


『雛形よ、そなたには王の器がある。ゆえにこの国の王となる事を許す』


 ちょっとまてぇぇぇぇぇ!!

 いきなりそんな事を言われても、いやエメラルダにも言われたけどさ。


『だがこの国の人間達は納得せぬだろう。故に血を交わらせる必要がる』


 つまりエメラルダと結婚しろって事か。

 ここに来てまたその話に戻る訳か。


『そこな我が眷属の末の娘と…………』


 わずか一瞬のドラゴンカイザーの沈黙に空気が凍る。


『チューするのだ』


………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?

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