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快適な空の旅を

飛行ユニットは地形効果を受けないのがウリです。

フィリッカに言われるがままに結局レノン達を置いて来てしまった。


「良いのよ、どの道時間が無いんだから一緒に行く理由も無いわ、説得してる時間も惜しいしね」


確かにレノンは人の話を聞かないと言うか頭が固い、説得には時間がかかるだろう。

それに彼女達を乗せるスペースはフュ-ゲル号には無い、俺を入れて2.3人が限界だ。


「まぁそうだけど、お前絶対後で怒られるぞ。」

「そこで君の出番よクラフタ君」

「なんでさ?」

「君レノンの剣を直したでしょう」

「正しくは作り直しただけどな。」

「それでもよ、彼女バカみたいに騎士である事に誇りを持っているのよ、だから自分から決闘を挑んで負けたにも拘らず命を奪わず更には家宝の剣を直してくれた貴方に恩義があるのよ。」


それはむしろ生き恥をさらす羽目になったとか言われそうなんだが。


「あの剣は家督を継ぐものが代々受け継いて来た業物だそうよ、つまりアレを折られた事が知られたらは家そのものの恥と言うわけよ。

向こうから決闘を挑んで負けたのだから自業自得だけど貴方のおかげで一族の誇りを失わずにすんだのよ。」


だから俺がとりなせば説教がなくならないにしても軽くなるだろうと言うわけか。

ぜってぇフォローしてやんねぇ。


フィリッカからの説明が終わりそのまま会話が途切れ黙々と王都に進路を進める。


「しっかし便利よねー」

「何が?」

「この飛翔機よ、道を無視して進めるなんて便利すぎじゃない?

下の街道を見て御覧なさいよ、歩きやすい場所を道にしている所為で曲がりくねったり勾配があったり、ほら道の向こうには山があるでしょ。

そういったものを全て無視して飛べるんだもの、やっぱり貴方は反則よ」


ズルイと目で訴えてくるフィリッカ


「そういう修行をして来たからね」


1ヶ月ほど。


「でも規格外すぎない?正直王都の研究者の作るものよりも凄いわよコレ。」

「作るものが一部に特化しているからね」

「最先端の研究者って大概そうよ」


むぅ、妙に絡んでくるな。


「ねぇ」

「ん?」

「治せる?」


一瞬何をと聞きかけたがやめた、こいつが聞くのだから妹の事以外に無いだろう。

なるほど、急にはしゃいだり拗ねたりしたのは不安だったからか。

レノン達を置き去りにしたのも焦りからくる判断か。


「前にも言ったけど保障は出来ないから」

「判ってるけどお願い」


人の命が懸かっているからいい加減なことはいえない、だから俺は別の事を聞いた。


「王都までどれくらいかかるか判るか?」

「え?そうね、さっきの町まで1月ちょっとかかってたから今の速度で逆算すると山超えもあるし休憩を入れて1週間くらいかしら。」

「山は普通に飛び越えればいいだろ」

「高い山だし低い渓谷は風が強いのよ、空を飛ぶ魔物がいる領域もあるし迂回しなきゃ」


結構でかい山脈だし迂回するのは面倒だな、コレは突っ切るのが吉だなぁ。


「いや突っ切ろう、山の上を飛び越える」


そういって宝物庫から強靭薬と酔止めを取出しフィリッカに渡す。


「何コレ?」

「高高度を飛ぶのは体に負担が掛かる、そのための薬だ」

「んー分かった」


一気に薬をあおるフィリッカ。

思い切りが良いなぁこいつ、少しは疑えよ。

薬を飲んだフィリッカに酸素マスクを渡す。


「マスク?コレも必要なものなの?」

「高山なんかの高い所は酸素が少ない、だから呼吸が上手くできずに高山病にかかる。こいつを着けていれば低酸素にも対応できる。」


慣れていないからか不器用にマスクを装着するフィリッカ。

光の少ない場所でも光合成をする深い地下森林地帯の植物を素材に使ったマスクだ、葉っぱだけでも二酸化炭素と僅かな光だけで酸素を精製するため酸素マスクとして最適だ。

まぁ密閉性はあんまり無いから作った後でガスマスクや水中用の酸素ボンベにはならない事に気付いたんだが高山を超えるには丁度良い。


「ベルトはちゃんと飛翔機と繋がってるか?」

「大丈夫!」

「山が近づいてきたら山脈の気流に巻き込まれるまえに上に上がる」

「わかった!!」

「トイレは大丈夫か?上は冷えるぞ」

「殴って良い?」


善意で聞いたのに。



そうこう言っている内に山が近づいてきたので少しずつ高度を上げていく。

高度が上がるにつれて風も強くなってくる。


「大丈夫か?」

「大丈夫ー!」


風が強いので自然声が大きくなる、風の結界とか付けとけばよかった。

実戦で使って始めて分かる欠点だなぁ、後でメモしておこう。


「ねぇ、いつまで上がるの?」

「もっと上まで、山脈より上に行く」

「で、でも」

「何かあるのか?」

「あるわよ!あれよあれ!!」


フィリッカが空を指差す。


「何も無いぞ?」

「あるじゃない、雲よ雲!!このままじゃ当たっちゃうわよ」

「雲?」


フィリッカの指差す先には巨大な雲が広がっていた。

ああ、そうか雲が何で出来てるのか知らないのか。

だから当たったら危ないと思ってるんだな。

俺の中のいたずら心が顔を出す。


「んじゃ、雲に触れてみるか」

「え?」


飛翔機を上昇させる、どんどん雲が近づいてくる。


「ちょ、ちょっとぶつかる、ぶつかるわよ!!」


このままだと高速で雲にぶつかって危ないと考えているのだろう。

だがそのまま雲に突き進む。


「キャァァァァァァァ!!!」


だがフィリッカの心配をよそに飛翔機は雲の中に吸い込まれていく。


「・・・・・え?・・・・」

「雲の中に到着でございまーす」

「・・・・・・・・」


無言になるフィリッカ。


「知ってたの?」

「うん」

「死刑」


一言つぶやいて後ろから首を絞めてくるフィリッカ、コイツ本気だ!!。

だが俺はそんな事などどうでも良くなる驚愕の事態に遭遇することになった。


「っ!」



胸が当たっているだと!!

まだ子供と思っていたが密着することでその感触が意外と大きい事に驚く。

コレは成長すれば大変素晴らしいことになる!!

予想外の収穫に心の中でガッツポーズをとる。

いや、僕ロリコンじゃないよ。今の僕は子供だから彼女は僕にとって同年代。

ノーロリコン、イエス同年代。OK?


そろそろ苦しいので飛翔機をわざと揺らしフィリッカを驚かす。


「キャッ!!」


あわてて手すりにつかまるフィリッカ。


機体を水平にして更に上に向かって上昇する。


「大気中にかたまって浮かぶ水滴または氷の粒のことを雲と言うんだ、つまり雲に当たっても痛くないって訳さ」

「それをなぜ教えてくれなかったのかと言いたい訳よ」

「そのほうが面白そうだったから」

「うん死刑」

「あまい」


2度は食らわん、襲い掛かるフィリッカをかわし脇に挟んで身動きできないようにする。


「なっ、ちょっ」

「フィリッカは霧を見たことはある?」

「え、うん。旅の途中湖の町で見たわ、朝起きたら町中真っ白で凄く驚いたわ。」

「それと同じ物だよ、空の上なら雲、地上なら霧と言うんだ」

「霧と同じなの」

「そう」

「ちょっと冷たいわね」

「細かい水滴だからね、このままだと寒いからもっと上に出ようか。」

「うん」


フィリッカは初めて入った雲が名残惜しそうだったがこのままでは風邪を引いてしまう、上空は気温も低いから油断は出来ない。

雲が薄くなって空が明るくなってきた。


「雲の上に出るぞ、上はもっと凄いぞ!!」

「もっと!?」




ザパァーンという音も出ず静かに雲海の上に出る。

一面に広がるその光景に俺達は驚いていた。


「っ、本当に凄い。雲の上ってこんなに綺麗なのね」


太陽の光を一心に浴び白い雲は海のように世界に広がっていた。

確かに綺麗だ、だが。


「それに綺麗なお城、まるで物語の中みたい」


フィリッカが言う。

そう、俺達の目の前には巨大な城が建っていた。



「んなバカな」

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