説明タイム
「つまり、ルジオス王国を襲った襲撃者が帝国の内部に入り込んでいるっていうのね」
ドリヴィック達を無力化した後、俺はエメラルダにドリヴィック達を操っていた黒幕、バギャン達異世界人の事を教えていた。
ちなみに、ドリヴィックを助けにやって来た騎士達はエメラルダの鶴の一声であっさりと解散した。
ついでにグレイ達も部屋の外で待機させてある。
権力者ってやっぱり強いね。
話を戻すが、このまま黒幕の事を教えずに連中とやり合っても、いずれはバギャン達の事を知る事になるだろう。それに、俺が隠してもエメラルダがスキルを使って俺の心を読めば結局ばれてしまう事に変わりは無い。
だから俺は素直に教えることを選んだ。
まぁ、全てバカ正直に教える事はせず、一部ぼかしたけどね。
教えたのは王宮が襲われた事と、連中は自分達を異世界人だと言った事の二つだ。
異世界人である事をバラしたのは、連中の正体を教えておかないと人の精神を乗っ取る魔法具を大量に持っている理由を上手く説明できないと思ったからだ。
この世界において魔法具とは失われた超技術だ。
仮に現代人が魔法具を作り出せたとしてもその性能は非常に低く、安定性にも欠けていた。
そんなロストテクノロジーを大量に所持している組織がこの世界に潜伏していると分かったら大騒動になる。
その点異世界人なら驚異的な技術力を持っていようがエメラルダも納得できると思ったのだ。
ルジオス王国は俺達日本人と国交を結んでいる為、異世界人に対する知識があった。
そしてシャトリアもそうだ。どうもある程度の大国なら異世界と交流を結ぶことのできる何らかの魔法具負を持っているらしい。
だとしたら広大な国土と歴史を持つ帝国が知らない筈も無いだろう。
なんと言うか、未知の存在ならそんな道具を持っていても納得してくれるんじゃないかなーっと。
「そう言う事。この黒い魔法具を身に着けると中に封じられている魂に肉体を乗っ取られるみたいだ。『主役症候群』なんていう病気が流行ったのも、そう言うキャラクターになりきっていると思われていれば元の性格と変わっていても気付かれにくいと考えたんだろうな」
ドリヴィック達を操っていた魔法具はそのすべてが違う形をしていた。
それは指輪だったり、首飾りだったり、ピアスだったり、時には鎧そのものでもあった。
同じデザインばかりだとその魔法具を警戒されたら身に着けて貰えず乗っ取れなくなるからだろうな。
つまり偽装だ。
そしてそんな連中が今の帝都には大量に存在していて、あまつさえ国の中枢である貴族達にまで根付いているというのだから気が重い話だ。
分かっている限りでも騎士団の四割が支配され、大臣達と王族も手が廻っているらしい。
普通に考えれば乗っ取られているだけでなく、乗っ取られていない『協力者』もいるだろうな。
行政は滅茶苦茶だなこりゃ。
そう考えると、エメラルダが誘拐され水晶の像にされたのも、スキルで心を読まれるのを恐れたからだろう。
精神を乗っ取るにしてもエメラルダは仮にも次期皇帝。そんな彼女が変な物にハマっているおかしくなった振りをすれば、それはそれで問題になる。対外的にも帝国の権威を下げ、支配する国としての価値を下げてしまうからだ。
水晶の像にしたのも、自分達が完全に国を支配した後で利用する為だったのではないだろうか。
更に言えば、あの時グライトの町で出会った黒紳士と名乗る男はエメラルダ達の監視役だったのでは?
彼女達を俺に奪われてしまった為、やむを得ず残った水晶像の少女達だけでもと回収しに来たのだろう。
さすがに俺と遭遇したのは偶然だと思うが。
となれば奪われた水晶像の少女達も彼等にとって都合の悪い存在なのかもしれない。
スキルか、立場か。どちらにしろ救いだす事には代わり無いが。
◆
「そう言う事だったのね。でもそう考えれば納得もいくわ。いくらなんでもアレは異常だったものね」
現代の日本においても厨二病患者はアレなのだから、そういった存在に免疫の無いこの世界の住人にとってはさぞ驚きだった事だろう。
そうして黒幕達について話をしていると、不意にドアがノックされた。
「どうぞ」
エメラルダが許可を出すと、グレイが入ってくる。
「殿下、ドリヴィック団長が目を覚まされました」
「様子は?」
エメラルダが聞きたいのは今のドリヴィックが正気かどうかと言う事だろう。
「は! 目を覚まされた団長は無事以前の団長に戻っておりました!」
グレイの報告に顔をほころばせるエメラルダ。
「それはなによりね。ドリヴィックには聞きたい事もあるからお見舞いがてら私から出向きましょう」
「おお、それは団長もお喜びになられます」
俺も気になるしちょっと覗きに行くか。
◆
俺とエメラルダはグレイに案内されドリヴィック達が運び込まれた医務室にやって来た。
「ドリヴィック気分はどうかしら?」
「殿下!?」
エメラルダの姿を見たドリヴィックとその部下達が一斉に立ち上がり敬礼をしようとするも、先の戦闘の後遺症で全員が立ち上がれずに倒れてしまう。
ちょっとやりすぎたみたいだ。
「そのままでかまいません。それにしても大変でしたねドリヴィック」
エメラルダが労うとドリヴィックは首を横に振って否定する」
「とんでもありません! 私が賊に操られた所為で殿下にとんだご無礼を働いたと聞き及んでおります! この不始末、命を持って償うよりほかありません!!」
ドリヴィックと部下達はベッドの上で土下座のような姿勢をとって額を布団にこすりつける。
異世界にも土下座に相当するものがあるみたいだ。
「落ち着きなさいドリヴィック、今貴方に死なれたら私の身が危うくなります」
「……それはどういう意味でございますか殿下?」
顔をあげずにドリヴィックがエメラルダに問いかける。
「グレイより聞き及んでいませんか? 私は賊に誘拐され奴隷の身に落とされる所だったと」
「何ですと! て、帝国の次期皇帝である殿下を奴隷に!?」
「ええ……」
エメラルダはドリヴィック達に自分がどれだけ危機的な状況かを伝え、彼等に協力を要請する。
「承知いたしました。我ら第一騎士団、正当なる後継者である殿下の為ならば帝国が相手であろうとも立ち向かう所存です!」
「ありがとうドリヴィック。貴方達の力頼りにさせて貰いますよ」
「「「「「「「「ははぁ!!!」」」」」」」」
なお、この会話は全員が尻を上げ額をベッドにこすりつけた土下座ポーズのままで行なわれた事を追記しておく。




