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いざ帝国へ!……

お待たせしました。左利き帝国編再開です。

投稿の曜日、時間共に不定期になりますが、なるべく更新頻度はあげていくつもりです。

 シュヴェルツェが住んでいた遺跡の調査を終えた後、俺達は一度グライトの町に戻りレドウに別れの挨拶をする事にした。


「そうか、もう行ってしまうんだね」


短い付き合いだったにもかかわらずレドウは俺達との別れを惜しんでくれているみたいだ。


「ええ、ちょっと用事ができましてね」


「もっとこの町に滞在して欲しかったけど仕方ないか。貴族街でも怪盗と名乗る泥棒に水晶細工が盗まれたとかで大騒ぎだし、むしろ面倒事に巻き込まれない為にも早く出た方が良いね」


「そういえばレドウさんも水晶細工を盗まれたのにあまり慌てた様子がありませんね」


黒紳士と名乗る怪盗は多くの水晶細工を盗んでいった。

一部の倉庫に入りきらなかった細工物やあらかじめ受け取り手が決まっていた物以外は根こそぎ盗まれていたのだ。

 つまりレドウの細工物も同様に盗まれたと言う事だ。


「いや、僕は今回の祭りでトリを務めた事で細工物の仕事が多く入ったからそれほど困っては居ないんだ。中には前金を出してくれた依頼主も居たからね」


 成る程、名を上げたい細工師であるレドウとしては目的を果たしているから盗まれた物に未練は無いって訳か。


「まぁ、貴族相手のオークションで稼ぐつもりだった細工師達は残念だったろうね。……それにムド達も。本当にひどい話だよ、いくら性格が悪いからって殺しをしてまで人の財産を奪うなんてさ!!」


 憤慨するレドウ。どうもムド達の死は強盗の仕業と言う事で決着したらしい。

 タイミングよく怪盗が現れた事も関係しているらしいが恐らくは闇ギルドの手が入ったのだろう。

 ムド達の死の原因を探る為に屋敷を捜査されると自分達との関係も明らかになってしまう危険があるのだから。

 幸い王が死んで上の人達が浮き足立っているこの国では、役人達も自分の身と食い扶持を守る為に賄賂の受け取り放題なのだそうだ。

 と言うのも、今回放った偵察用の動物ゴーレム達が賄賂を受け取ってムドの屋敷の捜査をなぁなぁに済ませる役人達を目撃していたからだ。

 まぁだからどうと言うものでもないが。賄賂は良くないが所詮他人の国、ゴーレム達が目撃したからといって何かする義理も無いのだ。


「では我々はこれで」


「またこの町に来たら是非ウチによってよ。その時は最高の水晶細工を用意するからさ!」


「ええ、期待していますよ」


 こうして俺達はヴィクツ帝国へと向かうのだった。



 こうして俺達はヴィクツ帝国へと向かうのだった……が!

 ちょっと問題が発生していた。

 それと言うのが……


「貴方達は最低の豚です!! 貴方達の存在価値はご主人様のお役に立つ豚になる事だけです!!」


「「「「「「「はいお姉様!!」」」」」」」


「貴方達は何の役にも立たない豚です!! ですが私の教育によって少しはましな豚に成るでしょう!!」


「「「「「「「ありがとうございますお姉様!!」」」」」」」


「お礼を言ってどうしますか!!」


 ミヤが先頭の少女を平手で叩く。


「ああっ!!」


 叩かれた少女はよろけてその場に倒れ込んでしまう。


「ご主人様の役に立とうという者が只の豚に毛が生えた程度の成長で満足してどうします!!」


「も、申し訳ありませんお姉様……」


「分かればよいのです、さぁ、立ちなさい。私が貴方達を最高級のブランド豚に教育して差し上げます」


 そう言って倒れた少女に手を差し伸べるミヤ。


「ああ、お姉様……私などの為にお手を差し出してくださるなんて」


 感激のあまり涙を流す少女。


「あの娘。なんてうらやましい……」


「ああ、私もお姉様に頬を叩かれたい」


 なんか周りの少女達が羨ましそうに二人を眺めている。


「さぁ! 共に行きましょう! ブランド豚への道を!!」


「「「「「「「はい!!」」」」」」」


 メイド教育という名の洗脳が目の前で行なわれていた。

 遺跡に入る前にミヤの提案した高速教育プログラムによって、俺の救った少女達がハイペースでメイドと言う名の何かに変貌していた。

 先日、遺跡から帰ってきた俺を待っていたのはこの異常な光景だった。


「そうです! その姿勢を維持してグラスの水をこぼさないように歩くのです!!」


何の訓練だそれ?


「ハイお姉様!!」


 そしてミヤに頬を叩かれた少女はミヤの熱血指導に全力で立ち向かっていく。

 これもアメなのか?

 叩かれた少女の名はエメラルダ=ジェイ=ヴィクツ

 ヴィクツ帝国第5皇女にして次期ヴィクツ帝国皇帝となる事を約束された少女である。

 なんと言う事をしてくれたのでしょう、いやホントに。


「コレはご主人様」


運悪くやたらと良い笑顔のミヤに見つかってしまった。


「メイド達の調教……教育は順調です。早ければ2週間以内に形になるでしょう」


 いま調教って言った。


「随分と早いな」


 つまり国際問題があと二週間で取り返しの付かない状態になってしまうと言う事だ。

 だが中途半端で終わらせればそれはそれで不味い事になる。

 ミヤに任せる前にどんな訓練をするのか聞いておくべきだった……

 正直ちょっとスパルタな社員教育みたいなモンを想像していたのだが、


「クアドリカ様よりご主人様の修行と教育を行なう為に使った高速教育装置の改良型をお借りしてきました。コレによって通常の数十倍の速度で教育が可能です」


 『師匠達の作った教育装置』

 そのワードを聞いた俺の脳裏に嫌な記憶が蘇りそうになる。

 アンデッド化によって肉体が強化された俺を使って師匠達は様々な魔法具の実験を行った。

 その一つが教育装置だ。

 よくSFなんかでヘルメット付きの椅子に座っているだけで大量の知識を学ぶ装置が出てくるが、それのファンタジー版である。古代魔法文明では割とメジャーな装置だったらしく、学生程度の知識ならこれで簡単に覚える事が可能だそうだ。

 但し、知識が複雑かつ大量になると、データの流し込み時間や脳が記憶した知識を理解する為のクールダウンの時間が必要になるなど問題もあった。

 知識を覚えるには子供の頃の方が良いが、未成熟な肉体には負担も大きい。

 なのでこの装置を使うのは最低限の知識にのみ留める事と当時の法律で決まったそうだ。

 そこで質問だ。

 そんな装置の改良型を作ったものの、既にそこには生者はおらず実験台がいない。

 だがそこに、子供でありながら頑丈な肉体を持つうってつけの人材が現れたらどうなるか。

 しかもその人材は自分達の弟子だったら?

 答えは火を見るよりも明らかだ。

 そう、答えは自重しないだ。

 結果的に俺はたった一ヶ月で劇的な知的成長を遂げたが、その直後には筆舌に尽くし難い体験があったことも忘れる事は出来ない。

 それの改良型とな?

 うん、確実に副作用が出るだろうな。


「それ、大丈夫なのか?」


「はい、最高速での教育は常人には負担が多すぎる為、現状では5倍速が限界です。副作用で教育完了後に軽い暗示状態になるとの事でしたので、ご主人様がいかに素晴らしい方かをとっくりと聞かせてあげました」


「暗示はすぐに解くように、解くように!」


 洗脳は良くない、マジで。

 もしかしてミヤがお姉様とか呼ばれているのも暗示の影響なのか?

 おっかなびっくり聞いてみるとミヤは首を横に振った。


「いえ、私の教育で自然とそう呼ぶようになっただけです。教育が終わった後に優しく褒めながら疲れを取るマッサージをしてあげただけですよ」


 ミヤのマッサージという言葉に少女達の顔が赤くなる。


「いったいどんなマッサージをしたんだよ」


「いえいえ、ちょっと疲れが嘘のように吹き飛ぶ魔法具でマッサージしてあげただけです。ただ何故か人間の快楽中枢に対し過剰に刺激を与える効能が付いているのですが」


「それ失敗作だろ!」


「いえ、開発者の方々は『想定外だがむしろ成功だ!』『異議なし!!』っとおっしゃっていましたので成功作かと」


 古代魔法文明人んんんんんんんっ!!


「それ使用禁止!!」


 完全にそれが原因だよ!!

 だが時すでに遅し、すでに少女達はミヤの飴と鞭とマッサージの虜となっており、お姉様の呼び名はそのまま定着してしまったのだった。

 こ、国際問題が……

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