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メリークリスマス(タイトルに偽りあり)

クリスマス番外編です。

本編は年明けに再開の予定です。

「シングルヘールシングルヘールかっねがーないー、きょっうはーねたまっしーク、リ、ス、マスーHEY!!」

 夜の街を上半身裸の男達が正拳突きをしながらジョギングしている。

 異世界人であってもモテない男達のする事は同じらしい。

 去年は夜通し壁を殴っていたみたいだが、壁殴流の長が指先一つで壁を破壊する奥義を編み出してしまった為今年から正拳ジョギングに変更したみたいだ。

 全く知りたくなかった事実だが。


 まぁそんな痛々しい光景は同でもいい。

 なぜなら俺にはしなければいけない事が有るからだ。

 それは嫁さんと楽しいクリスマス!

 ……ではなく、


 それは『クリスマス』を口実に観光客に金を落として貰う事だ!!


 ……なんだね? その白い目は?

 いいかい? これは重要な事なんだよ。

 俺は領主としてマエスタ領を繁栄させる義務がある。

 だから異世界にクリスマスを浸透させ、年に一度の贅沢と称して豪勢な食事やクリスマスプレゼントの為に大金を落としてもらう必要があるのだ。

 その為に街の至る所にクリスマスネオンやクリスマスツリーを作り、「異国の祭りを行なうよ」と出入りの商人達を使って大々的に広告を行なった。

 おかげで国内だけにとどまらず異国からの観光客も増えてきている。

 更に金持ちや食道楽を動かす為に魔王アリスの特殊スキル『料理:魔王級』を遺憾なく発揮して貰い、クリスマス限定メニューを立ち上げた。

 もっとも、貴重な食材をふんだんに使った料理なので材料費がかさみ非常に高価で数も少ないメニューになってしまったのだが。

 具体的に言うとちょっとした豪邸が買える価格だ。

 異世界には我々の常識を超越したレア食材が多く眠っている。

 例えば100年に一度しか姿を現さない幻の魚や危険な魔物だらけの秘境の奥に生息する歩く野菜などだ。

 中には車が買えるレベルで取引される食材もあるらしい。

 そんな訳だからレア食材目当てに食材専門に特化した冒険者も居るのだとか。

 そしてそんなレア食材をふんだんに使った料理を開発したとアリスから言われた直後に領収書を渡された俺の気持ちを察して頂きたい。

 真っ白な紙の中に淡々とボッタクリバーもビックリの価格が並んでいた日にゃクリスマスフェアを行なって金儲けをしたくなっても仕方が無いってもんだ。

 という訳で、かなり強気の料金設定にしたにもかかわらずあっという間に魔王亭のクリスマスディナーの予約は一杯になってしまった。アリスの魔王級スキルがあったとはいえ、恐るべし食道楽共。


 ◆


「おとーさーん、僕『でらっくす魔剣ストームヴリンガー』が欲しいー!!」

「そう言うのはサンタさんにお願いしなさい」

 小さな男の子が店のショーケースに飾ってあるおもちゃの魔剣を見ながら父親にねだっている。

 こういう光景は何処の世界でも同じらしい。

「でもサンタさんって外国の人なんでしょ? 違う国まで来てくれるの?」

「ははは、サンタさんは良い子の祈りを魔力に変えて魔法のソリを飛ばすんだ。だから異国の子供の所にだって来てくれるさ」

「ホント!?」

「お前が一年間いい子にして居たらな。良い子の祈りが足らないと魔力が足りなくてサンタさんは帰ってしまうからな」

「大丈夫だよ! 僕良い子にしてたから!!」

「そうかそうか」

 ちなみに全部俺が考えたでっち上げだ。

 そして大人達(商人)はそこの所をちゃんと察してくれている。

 彼等は瞬く間にサンタの存在を広めクリスマスを人々の認知する所とした。

 そして老若男女を問わず金を消費させる為におもちゃや食事にアクセサリ、果ては武具とあらゆる分野でクリスマス仕様の高級品の販売を始めた。

 この世界において初めて娯楽と高額な買い物が一体化した瞬間であった。

 まぁぶっちゃけ全部俺の所為なんだが。

 商人達にクリスマスの概要を伝え、そこから発生する各種業界の利益をプレゼンした所為だったりする。

 実際に企画して販売するのは商人達。そして俺はショバ代と税の二重取りで大もうけ。

 未開拓の市場での事実上の独占販売。

 いずれ後続が追いつくまでの栄華。

 くくっ、それまでせいぜい設けさせて貰おう。

 いやー、異世界で商売ってのも良いもんだねぇ。


 なお、サンタのフリをして夜中に嫁さんにプレゼントを配りに行ったらあっさりばれた模様。

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