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アイ・スクリーム

本業が忙しすぎて帝国編の続きが書けない為、書き溜めておいた短編を掲載させて頂きます。

帝国編が終わりましたら話数調整をして帝国編の後に移動させる予定です。

 それは王都に居た頃の話。


「アイ・スクリームを取りに行くわよ!」


 そんな事を言われて、俺とアルマはフィリッカによって王家の墓所へと連れてこられた。


「アイスクリーム? この寒い季節に?」


 もう秋も終わりだというのに?


「死者が作る料理の事で、冷たさと暖かさが同時に味わえる不思議な食べ物なんですよ」


 アルマが説明してくれるが良く分からん。って言うか死人が料理を作るのか。


「と、言う訳で、御先祖様達から分捕りに行くわよ!!」


 台所でつまみ食いをするノリかよ。

 進むフィリッカ、そこにおどろおどろしい声が響く。


『また今年もやって来おったな、この悪ガキめ!』


『今年こそとっ捕まえてお仕置きをしてやるぁ!!』


 姿は見えずど怒りの感情がはっきりと感じる。うん、おどろおどろしいじゃなくて怒り心頭って感じだ。 御先祖様達は相当に御立腹らしい。


「さぁ二人共!行くわよ!!」


「「…………」」


 ◆


 少し歩くと二股に分かれた通路に行き当たる。


「おかしいわね、前に来た時はこんなの無かった……っ! まさか今日という日の為にわざわざ墓所を改築したっていうの!? なんて大人気ない御先祖なの!」


 お前が言うな。


「ここは二手に分かれるしかないわね。私が右へ行くから二人は左へお願い」


 言うが早いか、フィリッカはあっという間に走り去ってしまった。


「こういう時って単独行動すると大抵悲惨な目に遭うんだよな」


「この前読んだ本にも同じ事が書かれてました」

 アルマの言葉を肯定する様に彼方から悲鳴が聞こえてくる。


「捕まったな」


「捕まりましたねぇ」


 どうしよう、いやマジで。


「せっかくなのでこのままお墓参りをしましょう」


 アルマさんとってもクール。


 ◆


 墓所の奥深くに到達すると、そこには多くの死者達が待ち構えていた。


『ははははは! 良く来たな悪ガキめ!! 今日と言う今日は許さんぞ!!…………って誰だお前達は?』


「お墓参りに来ました、御先祖様」


『え? 誰だ?』


『ここに来れるんだから王族だろ?』


『いや、しかし今まで見た事無い子供達だぞ? 赤ん坊ならともかく、アレだけ

成長した子供が参りに来ない理由が無いだろう』


 困惑する死者達。まぁ分からんでもない。アルマは病弱で墓参りに来れなかったのだから知らなくて仕方が無い。


『……あら? 貴女もしかしてアルマちゃん?』


 そんな中、一人の女性の霊が現れる。


「ミズハ大叔母様!?」


 どうやらアルマの知り合いだったようだ。って言うか御先祖なんだから当然か。


『やっぱり。まぁまぁ、すっかり大きくなって。病気はもう大丈夫なの?』


「はい! クラフタ様が治して下さいました」


『クラフタ?』


 ミズハと呼ばれた女性の霊が俺の方を見る。


『はい、私の……婚約者……です……」


 顔を真っ赤にしてアルマが答える。


『あらあらまぁまぁ、アルマちゃんもそんなお年なのねぇ。ほら、立ち話もなんだからこっちいらっしゃい。採れたてのアイ・スクリームがあるのよ』


 ◆


「目玉が悲鳴をあげとる……」


 アイ・スクリーム、皿の上には読んで字のごとく、悲鳴をあげる目玉が置かれていた。


『採れたてのゴーストの目玉を恐怖でキンキンに冷やしたのよ。さ、おあがりなさい』


 アルマの大叔母らに目玉を勧められる。おあがりなさいって……

 助けを求める様にアルマを見ると、そこには美味しそうに目玉をパクついているアルマが居た……マジか!?


「美味しいですよ、クラフタ様」


 マジッスかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 アルマと周囲の死者達が俺を温かい目で見ている。きっと初めて食べる食材に緊張していると思われているんだろう。いやそうなんだけどさ。

 とはいえ、善意で勧められた物を食べないのも色々問題がある。幽霊とはいえ、この人達は王族なのだ。

 意を決して目玉を口に放り込むと口の中から悲鳴が聞こえる。ひぃぃぃぃぃ……

 我慢して目玉を噛み潰すとイクラを噛んだような触感がする。


「……!?」


 しかしその味は予想外にもクリーミー。スープのような温かさと恐ろしい怪談話を聞いた時の様な背筋がゾクッとする感覚が口の中にあふれ出る。あえて言うなら凄く甘いミント味のクリーム団子?


「……けっこう美味い」


『でしょー! 王国の名産品なのよコレ!!』


 幽霊が作る名産品って……

 後日聞いた話だが、ゴーストの目玉は魔力さえ補充すれば再生するので量産が可能らしい。

 それを利用して恐怖の質を変える事で味を変化させているのだとか。

 異世界怖ぇぇぇぇ!!


 ◆


 その後、さんざんアルマとの馴れ初めを根掘り葉掘り聞かれた俺達は、夜になってようやく解放されアイ・スクリームを土産に城に帰るのだった。


 ◆


 余談だがフィリッカは罰として墓所の大掃除をさせられる事になった。


「ちょっと位食べたって良いじゃないー!!」


『貴女のはつまみ食いってレベルじゃないのよ!! さっさと終わらせないと泊まり込みよ!』


「夜通しお説教はイヤー!!」


 やっぱり悪い事はしちゃいけないね。

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