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遺跡の中身

今後の配信スケジュールを変更しましたので、活動報告にて報告させて頂いて降ります。

 水晶の森の中にあった古代の遺跡。

 そこで暮らしていた元獣ダークフェニックスの幼生であるシュヴェルツェに人間の物語を教えた謎の人物の痕跡とその目的を知る為、そして古代魔法文明の危険な遺産の封印という師匠達からの依頼の為に、俺達は再びここに来ていた。

 そして迷宮の入り口に隠された謎のパズルを発見、解除した。

 そして奥に新たな領域が姿を現したのだった。


「コレは空間魔法か」


 パズルを攻略する事によってパズル内部に仕込まれた魔法プログラムが起動する。パズルのピースを揃える事で、ばらばらだった魔法式が正しい配置になるというシンプルな構造のようだ。

 そして出来上がった魔法式は扉の奥の空間を別の空間と交換する、さしずめ分岐装置で電車の進路を切り替えるように。


「ここが本当の遺跡なんでしょうか?」


 アルマが眩しそう手で目を覆いながら言う。無理もない、今まで暗い迷宮にの中に居たのに突然明るい部屋に入ったら目も眩むというものだ。

 部屋の中は自然光に近い光を放つ室内灯で照らされており、まるで昼間のようだ。

 周囲には背の低い椅子やテーブルがあり、ロビーの様に見える。

 部屋を見回すと、建物内部の案内地図があった。

「地図だ」

 ソレをみると現在地がロビー、奥に入ると研究室や実験室、スタッフの宿泊施設などがあった

 どうやら此方は隠し部屋と言う訳ではないみたいだ。

 いや、もしかしたらスタッフは別口の移動方法があって俺達の入ってきた方が隠し通路なのかもしれないな。

 地図に従って部屋の奥を見ると他の部屋へと繋がる扉があった。

「行くか」

 二人に目配せをすると俺は取っ手を回してドアを開く。

 ドアは何の抵抗も無く開き、少しだけ拍子抜けの気分を味わった。


 ◆


 ドアの向こうは通路に成っており、左右に向かって道が伸びていた。


「どちらに行きますの?」


 右が職員の宿泊施設だから研究室のある左から行こう。


「じゃ、左から」


 まっすぐ歩いていると左右に扉が現れる。この辺りは実験室や試作品を置く部屋になっていたな。


「ふむ」


 中を確認するのは確定だが、もしも何か危険な存在でもいたら大変だ。俺は領域スキルを使って周囲の生命反応を探る。

 生物の反応は感じない、まぁセキュリティが有るとしたらゴーレムのような無機物系モンスターだろうな。

 だがドアを開けて中を覗こうとしたのだが、カギが掛かっていたのかドアは開かなかった。

 よく考えれば当然か。

 他のドアも全て試して見たがどこもカギが掛かっていた。

 ドアを破壊すれば中に入れるだろうが、破壊活動を行なう事で防犯装置が作動する可能性も有る。ここは一旦諦めてそのまま奥に進むとしよう。


 ◆


 そのまま進んでいくと右向きの曲がり角に突き当たる。道に沿って更に奥に進んでいくと再び右向きの曲がり角に突き当たり、その角には先ほどまでのドアとは意匠の違うドアがあった。


「ココが研究室か」


「ドアの見た目が変わりましたし、そうだと思います」


「ふふ、遂にラスボスが出てくるのですわね。きっと倒しても変身をしますわ」

 また変な知識を、とはいえ二人共ここが特別な部屋だということは察したようだ。

 先ほどまでのドアは全てカギが掛かっていたがココはどうだろうか?

 などと多少の心配もあったがドアはあっさりと開いた。

 

 ◆


 ドアを開け、部屋の中に入る。其処は会社のオフィスのような空間だった。

 机の上には大量の古代魔法文明の文字が書かれた書類が置かれており、サンプル品と思しき魔法具もある。


「あ、開いてた理由発見」


 壁を見ると古代魔法文明の文字で『最終退出者はカギをかけて係員に預ける事』と書かれていた。

 だが鍵はここにある。

 つまりかぎの閉め忘れだ、うーんヒューマンエラー。こんな所は異世界も同じ様である。 

 気を取り直して近くの机にあった書類を手に取り、翻訳魔法を発動して内容を読む。


 『体感型娯楽魔法具を応用した訓練施設の有用性と弊害』

 『魔力収束と余剰エネルギーの拡散比率』

 『魂の改竄による性能変化』


 いくつかの書類には魔法プログラムの論文や魔法具の批評や改善案が書かれている。

 数千年前の遺跡に置かれているにしてはやたらと状態の良い書類だ。

 さっきまでいた遺跡、表の遺跡は劣化していたのにだ、もしかしたらこのフロア、裏の遺跡には何らかの保存処理がなされているのかもしれない。

 そう考えると表は量産工場でこちらは開発室や企画室専門と考えた方がよいのだろうか?


「クーちゃん! 凄い魔法プログラムが一杯です! あ! 傷を一瞬で治す最新の魔法プログラムが有りますよ!!」


 他の書類を手にしていたアルマが興奮気味でやって来る。

 アルマから受け取った書類を斜めに読んでいく。


「あー、確かに凄いけど副作用も有るな、要修正項目に過剰回復で細胞が癌化する危険有りって書いてあるわ」


「え? あ、ホントです!」


 思わぬ問題点を発見したアルマはがっかりした顔で書類を戻しに行く。


「いや、欠点は分かっているんだから改善できないか調べて見れば良いんじゃないか?」

「でも私魔法プログラムはまだ習っている最中ですから、こんなに複雑な魔法プログラムは読めません」


「帰ったらコル師匠に教えてもらえばいいだろ」


「はい!」


 企画室だけあってここの魔法プログラムは未完成なモノが多いみたいだ。

 だがそれは逆に言えば当時の最新魔法を目の当たりにしていると言える。

 そう言う意味ではコレは宝の山だな。


「あら?」


 魔法プログラムが読めなくて退屈そうにしていたシュヴェルツェが小さく声を上げる。


「どうかしたのか?」


「ええ、こんな物を見つ付けましたわ」


 そう言ってシュヴェルツェは手にした書類を渡して来る。

 渡された書類には『試作魔法プログラム製作依頼表』と書かれていた。

 

 受け取った書類を確認してみる、そこに書かれていたのは試作魔法と新型魔法の目録だった。

 どちらも同じ内容に思えるが、書類を見るとその違いは明らかだ。

 試作魔法は完成したばかりのテストもしていない魔法で、これから運用試験を行なっていく物で、新型魔法は既にテストも完了し、安全性、安定性、効果が確立された、いわゆる正規量産品だった。

 書類によればこの試作魔法と新型魔法の魔法式を仕込んだ魔法装置を少数量産してそれぞれ別々の部署に回して運用試験を行なう予定らしい。

 試作魔法は安全性と安定性、そして無駄を省く為の試験を行い、新型魔法は実戦で運用して不足を感じないか? 逆に過剰な性能でないかを調べる予定だったらしい。

 そこまでは只の資料と放置できた所なのだが……一つ気になる部分があった。

 それは製品の完成具合を示す進捗表に『完成欄』にはチェックがされているのに『出荷欄』にはチェックが入っていないものだった。

 その魔法の名は

『変身光線灯(防犯用) 先行量産試供品』

『偽装神言魔法 魂魄改竄(試作)』


「これってこの間の魔法具の事ですよね」


 横から見ていたアルマが俺に聞いてくる。

 変身光線灯、コレはムドの屋敷に隠されていた魔法具と同じ名前だ。

 あれは変身の魔法の応用で光を浴びた対象を水晶に変えることが出る魔法具だった。

 ムド達は使い物にならない魔法具を二束三文で買い叩いたような事を言っていたが、もしかしたら連中がアレを手に入れたのは意図された事だったのでは? そしてその魔法具が元々有った場所がココだったとしたら。

 シュヴェルツェが出会った人物の正体は帝国に深い関わりを持つ人物なのではないだろうか?

 魔法具をムド達に渡した理由がエメラルダ達のような、自分達に邪魔な連中を殺す事無く無力化する為なのではないだろうか? 

 そうなると殺さない理由は何だ? となるが、もしかしたら殺したくなかったのかもしれない。

 いざという時には水晶の彫像となったエメラルダ達を元に戻して人質にしたりと何かしらの理由があってこんな面倒な事をしたのではないだろうか?

 自分で使わずムドに使わせているのも自分の下にエメラルダ達を連れてきたら誰かに知られる危険が生まれるのを危惧しての事ではないか? ムドが水晶にした人間を売り出し、仲間が無関係を装って購入、その後贈呈品などとして送らせれば良い。

 一種のマネーロンダリングと言える。


「どうやら意外と狭い世界なのかも知れないなぁ」


 こうなるともう一つの魔法もその人物によって悪用されている可能性が高い。

 師匠達からの依頼もあるし、帝国に行く理由が増えたなぁ。

 その後、遺跡の中を隅々まで探索してみたが他の部屋は全てカギが掛かっていた。

 もしかしたらマスターキーがどこかに有るのかもしれないが、今回はココまでにしよう。

 新しい魔法も手に入ったし、危険な魔法や魔法具は回収した。

 念の為転移用のマーカーを残しておく。

 

「それじゃあ町に戻るか」


「もう良いんですか?」


 アルマは探検し足りないみたいだがカギが掛かっている以上ここにいる意味も無い。

 ドアを破壊して無理やり入るのも気が引けるしセキュリティが働いたら危険だ。

 カギが掛かっているのなら無理に開ける事も無い。セキュリティについては後で師匠達に報告する時にでも聞いてみる事にしよう。


「取り急ぎ危険はなくなったからね、帝国の件に戻る事にするよ」


「何にも無くて退屈でしたわ」


 冒険を求めていたシュヴェルツェには退屈な探索だったと見える。


「じゃ、帰りますか」


こうして日帰りの遺跡探索は終わり、俺達は帰路についたのだった。


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