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冷静に考えてみよう

最近真面目な展開が多かったのでここらで息抜き。

 一つ話をしよう。

 何、長い話じゃない。

 例えばだ、例えばそこに沢山物が入る箱が在ったとしたら何を入れる?

 大切な宝物を一つだけ入れるかい?

 それとも沢山の色々な物を詰め込めるだけ入れるかい?

 俺は後者だ。

 だって沢山入るのなら沢山入れた方が得じゃないか。

 福袋のように?いやいや宝箱のように。

 だから俺は箱の中に入るだけのモノを詰め込んだ。


 そうした経緯から、装着型多機能魔法具シリーズNo1、潜入用隠密作業装備「ケロッグくん」は開発された。


 まず最初にどんな機能を盛り込むか考える。

 せっかく入れるのだから色々詰め込みたい。

 まずは身を守る機能だ。

 それはどう身を守る?

 まず純粋な防御力、どんな攻撃からでも身を守る、打撃、斬撃、熱、雷撃、衝撃、純粋魔力、そういった直接的な攻撃から身を守る。

 これは単純に防御力を上げる魔法プログラムと素材を使う。

 次に間接的な防御力、毒ガスの中、水の中、あるいは空気の無い場所、そうした通常では生きられない空間から命を守る。

 こちらに必要となるのは完全な密封空間を作ることである。つまり宇宙服や潜水服のような密封性だ。更に呼吸をする為の空気を作り出す装置も必要となる。

 そしてさまざまは補助機能だ。例えば水中で活動するなら水の中を抵抗無く動く為の装備だ。

 水中で動くならやはりスクリューがいいだろう、もっとSF的に水流推進も良いかも知れない。

 だがこうした機能を盛り込みすぎれば装備が大型化してしまう。

 強化スーツがいつの間にかパワードスーツ、分かりやすくいうとロボットアニメのサイズになってしまう。

 だがココはファンタジー世界。そんな現代人の常識を軽々と打ち砕いてくれた。

 それこそが空間魔法だ。

 俺の所有する古代魔法文明の技術の結晶、失われたテクノロジーである空間拡張携帯倉庫。

 通称『マジックボックス』

 俺の宝物庫を始めとするこの魔法具は文字通り空間を広げて本来の要領以上に物を入れることが出来る。

 これをスーツの各所に取り付けておけば大規模な装置を簡単に携帯することが出来る訳だ。

 このお陰でスーツにはさまざまな機能が取り付けられる事となった。

 まずマスクにはスーツが密封されても長時間呼吸が出来るように、空気製造機が搭載された。

 酸素製造機でないのは人間は酸素だけでは生存できないからだ、出来ない事はないが酸素濃度とか考えるのがメンドイからである。そう言うわけで空気中のさまざまな成分を混ぜ自然な空気が合成されるように調整したお陰で、スーツを着ていてもマスクをしていないかの様に自然に呼吸ができるようになった。

 さらにマスクにはライト、食糧庫、翻訳機能、ビデオカメラ、通信機など様々な機能が搭載された。

 次にスーツであるが、機能を大量に盛り込むならきぐるみ的な体を大きく包み込むものが好ましい。

 だが大きすぎれば動きが悪くなるし、きぐるみでは細かい動作が困難だ。

 なのでヒーローモノのようにタイツいやスーツにした。

 先に言ったとおり、様々な防御性能を盛り込んだだけでなくゴーレム服の技術をフィードバックした強化機能、魔法プログラムを刻んだパーツによる戦闘補助機能など詰め込めるだけ機能を詰め込んだ。

 単純な打撃力の増加、篭手内部には切れ味を増加させる魔法プログラムを刻んだ仕込みナイフに多目的ワイヤーとカギ爪。

 脚部には勿論キック力増強の魔法プログラム、むしろ無い訳が無い、強化スーツにキック力増機能は必須である。また膝の下、ふくらはぎの横には各種補助装備が出るマジックボックスを横付けしてある。

 そして要所を強化した魔法合金で補強。

 できればそうした箇所にはこれまで発見してきたオリハルコンを使いたかったのだが、残念な事にオリハルコンは何をやっても加工できなかった。

 オリハルコンの加工には特別なナニかが必要らしく、それは古代の英知をその身に宿す師匠達ですら知らなかった。

 残念ではあったが、出来ないものは仕方がない。

 その為スーツのパーツには、既存の金属と属性石を組み合わせた合金を魔法で作り上げ使用した。

 はっきり行って自分的に最高傑作である。

 スーツの作成で考え出した技術をフィードバックして、よく壊れると評判の俺のロマン武装『七天夜杖』も強化してある。これでもう出るたびに壊れる武器とは言わせない!


 だがこの装備を完成させた時、あるクレームが入った。

 それは……


「無機質な顔で怖いです」


 フルフェイスになる事で表情が見えない事が、嫁を始めとした女性人達は受けなかった理由らしい、とはいえ潜入用装備でもあるので顔を見れるようにするのも本末転倒である。

 故に、ヘルメットのデザインを親しみやすいものに変えざるを得なくなった。

 元々のデザインは日本では有名すぎるロボットアニメの主人公機をベースに作ったのだが、夜間の活動を考慮して黒系のカラーにしたのもいけなかったらしい。

 そこで再びデザインを煮詰め直していたのだが、男と女の感性の谷は何というか見た目の深さを遥かに飛び越して遠かった。

 つまり、出すデザインがことごとく没になったのは言うまでもない。

 そこで俺は一計を案じた。

 だったら彼女達が好むデザインとは何かを調べれば良い。

 そこで当人達に効いて見た所。


「やっぱり可愛いほうが良いんじゃない?」


 との答えが返ってきた為、ファンシーさを盛り込む事にした。

 だがあまりに可愛すぎても舐められる為、なるべく記号的な可愛さを盛り込む事にした。まんま模倣したデザインよりも、多少ディフォルメしたデザインのほうが親しみがわくこともある。

 結果出来上がったのが、カエルをもチーフにしたケロッグ君の頭部であった。


 子供の親しみやすい動物、カエルをモチーフにして表情は笑顔にしてみた。

 そしてかえるらしくカラーを緑に変更、もちろんスーツもである。


 完璧だ。

 出来上がったそれを日本風に言うならば、


『某野球球団のマスコットキャラ』


 見たいな感じである。

 さっそく完成したソレを装備して嫁達に見せたところ。


「えっと……インパクトがあってよろしいのではないかと」


「……視覚情報も戦闘に活用するとはさすがご主人様です」


「うわっキモッ!!」


「うぇ!? え? な、何? ホラーゲームの敵キャラ?」


「不味そう」


 全員が目を逸らしながら言った。

 彼女達の意見を取り入れたのに何がいけなかったのだろうか?

 しかし一部の意見だけを鵜呑みにしてはいけない。

 そこで俺は多くの人の意見を取り入れる為に街に繰り出した。

 このままの格好で。


 結果、家臣である自警団に攻撃された。

 子供ガン泣き。

 市民逃げる。

 新手の魔物と勘違いされる。

 

 ちょっと洒落にならん事態に発展してしまったので、用水路に飛び込んで逃走した。完全密封されたスーツは浸水する事無く、地上にいるのと同じ様に呼吸が出来た。

 途中、水生種の冒険者達に追われたが、水中装備を展開して全力で逃走を図ったお陰で無事追っ手を撒く事に成功。ちょうど良い実戦テストであったとも言える。

 そしてその後、緑の名状しがたい存在は『水の怪人』として異世界初の都市伝説となった。

 そんな悲劇の来歴を持つスーツを身に纏った俺に対して怪盗はこう叫んだのだ。


「へ、変質者か貴様!!」


 ……あ、あれ? なんだかその通りかも知れない気がしてきた。

 気のせいだよな?

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