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婚約交渉

「前」ではなく「約」です。


いつも誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます。

また複数の方からご要望がありましたのでハーレムタグを付けさせて頂きます。


追記

内容が分かりづらかったのでクラフタの内心を加筆して補足いたしました。

 エメラルダは言った。


「報酬は私の、ヴィクツ帝国皇帝の伴侶の座よ」


 だから俺も言った。


「あ、そういうのはいらないです」


「……え?」


 たっぷり5秒。


「な! なんでよ!? 皇女なのよ! 次期皇帝なのよ! 私を娶れば帝国を好きにできるのよ!!」


「いや、俺ルジウス王国の侯爵だし」


 全くもって過分な地位だが俺はルジウスの貴族だ。

 そんな俺が陛下の許可も取らずに婚約や結婚をするわけにはいかない。

 いや、シャトリアの件は洗脳されかかっていたからノーカンな。

 つまり、二度も同じミスをする訳にはいかないって訳だ。


「それなら心配いらないわ。帝国の王女である私が欲しいと言っているのよ、ルジウス王国も逆らえないわ」


 権力を使って脅してくるか、それは気分が良くないなぁ。

 って言うか、やっぱルジウス王国発言はスルーですか。

 まぁさっき心を読まれていた時にアルマのステータスを見ちまったから、その時にアルマがルジウス王国の王女なのは当然バレていると考えるのが当然だ。

 おそらく俺に助けられた時から心を読んでいたんだろう。


「勿論貴方の意志は尊重するわ、可能な限り貴方の求める待遇をかなえるわよ」

 

 さらりとスルーしたまま会話を続ける、神経太いなぁ。

 普通に考えれば怪しいよな。警戒して当然の好待遇すぎる待遇だ。

 次期皇帝と婚姻とか、危険な匂いがプンプンするぜ。


「そもそも皇女なんだから婚約者とかいるだろ普通」


「勿論諦めさせるわ、ゴネる様なら力ずくで」


「本気か? 帰ってきた皇女がイキナリ婚約者を切り捨ててどこの馬の骨とも思えない男を伴侶にすると言って家臣達が納得するのかよ?」


「するわよ、だって帰った時には私は皇帝になっているんですもの。ドラゴンカイザー様の取決めには誰も逆らえないわ」


 帝国の国父ならぬ国祖に逆らうという事は帝国貴族である事を否定するに等しい行いと言う訳か。

 そりゃ権力の亡者にとっては究極の選択だな。

 

「それに貴方はどこの馬の骨でもない大貴族でしょ。それも今売り出し中の薬師貴族、ゴーレム貴族、落とし穴貴族。様々な二つ名を欲しいままにする少年貴族」


 エメラルダが俺の両頬に手をあてる。


「クラフタ=クレイ=マエスタですもの」


 ここでようやく完全にこっちの素性はバレている宣言か。

 そう考えると心を読むスキルはそうとうチートだな、漫画なんかだと常時本心が分かってキツイ能力ってイメージだがスキルならON/OFF自在みたいだし。 


「と言う訳で私と結婚しなさい!!」


「だからやだって」


「なんでよ!」


 本当にコイツは俺と結婚したいのだろうか?

 皇帝になる為に俺の力を必要としての交渉だが、事を成した後も俺を利用するつもりで婚姻を求めている可能性は十分にある。

 技術的な意味で解除が絶望的だった呪印の解呪と治療をした俺の利用価値を考慮して本当に結婚をする、荒唐無稽のように見えるが俺がアルマと結婚したのはまさにそういう理由だったから否定は出来ない。

 自慢じゃないが俺の技術力は古代魔法文明人である師匠達を除けば数世代、場合によっては数十世代先の技術を有している訳で、古代の進んだ技術を求める物にとっては垂涎モノだろう。


 正直言えば『看破』スキルがある訳だから、多少の負担を無視すればその辺りの真偽は直ぐに分かるだろう。

 だがスキルの暴走が怖いので、ここは正攻法で行かせて貰う。


「俺の正妻はアルマだ。たとえ帝国の皇女で次期皇帝であってもその座は譲れない。どうしても結婚したいのなら第二夫人以降で我慢してもらう」


「皇女である私を二番手にするというの?」


「そういうことだ」


 正攻法、つまり正妻であるアルマを優先するからお前二の次な、と明言するわけだ。

 エメラルダの反応からその本心を引き出す。


「貴方がそう言っても王国と帝国の考えは違うんじゃないかしら?」


「この『会談』は今ここで決める『俺達』の話だ。王国も帝国もここでは関係ない」


「うっ」


 暗にワガママ言うなら放り出すと言っているのだ。

 龍の巣に行きたいエメラルダにとってはコレは痛い話の筈だ。

 ここで折れてくれれば結婚云々をうやむやにして金銭での交渉に移行できる。

 と言う訳で畳み掛ける。

 そして俺の心を読んでいるエメラルダならそれが事実なのは痛いほど理解できるだろう。

 俺は面倒なエメラルダを見捨てても不都合は発生しない。

 エメラルダは帝国に帰還し皇帝になれる機会を失う。

 エメラルダ一人では帝国に帰ることすら困難だろう。

 なにしろエメラルダがヴィクツ帝国の姫だと証言できる物が無いのだから。


「それはどうかしら? 私は貴方の力を見込んで勧誘しているのであって、貴方でなければいけない理由はないのよ。現に貴方が駄目ならこの国の貴族を取り込めばいいのだから」


「だったらそうすれば良い」


 俺達はじっと見つめあう。


「……」


「……」


 数分ほど見つめ合った所でエメラルダが根を上げる。


「その通りよ、今の私は皇女である証を持たない只の女よ」


 だろうな、皇女の証さえあれば帝国まで送ってもらうだけで良い。

 帝国に帰りさえすれば皇帝に保護して貰えるのだから。

 だがそれをせずに、帝国の皇族にとって最後の手段である龍の試練を求めたということは自身が皇女である証が立てられないと考えるのが自然だ。

 というか、俺が敵なら王位継承者である証を奪い取らないわけが無い。


「そうよ! 私は王位継承者の証である指輪を奪われたのよ!! だから龍の試練を受けないと帝国に帰っても城に入る事が出来ないの!!」


 どうやら王位継承者としての証だけでなく王族としての証明書でもあるようだ。

 ということは王族の刺繡が入ったこのドレスを着たままヴィクツ帝国領に入ったら、皇女の証が立てられないエメラルダは王族の刺繍を勝手に使った犯罪者として処刑されてしまう可能性が高いのでは無いだろうか?

 

「そうよ、その通りよ! だから奴隷として売られた時もこのドレスを着せたままだったのよきっと!! 私が国に帰れないように、でも皇族だけが着る事を許される金毛鳥の羽糸を使ったドレスだから、数少ない皇女の証だから! でもコレを着ていたら捕まるから使えないって言うジレンマで苦しむのを楽しんでいるのよ!!」


 ああ、忌々しいと悪態をつきながらエメラルダは憤慨している。

 とりあえず、ドレスを着せたままとの指示を出した奴は相当いい性格をしているって訳だ。


「まぁ、そう言う訳だから。一人で帰ったら確実にドレスを目印に暗殺者が来る君を保護するのはデメリットの方が多い。 今は平民の服を買う金も無いだろう?」


「ううっ」


 そう言う訳で実はエメラルダは詰んでいたのだ。

 エメラルダが水晶の像になっていなければきっと敵の間者がエメラルダを殺しに掛かるだろう。

 ……もしかしてムド達を殺した闇ギルドの暗殺者も帝国絡みだったりするんだろうか?


「俺はルジウス貴族だ。国を出る気は無いし帝国の貴族と戦争する気はない。それでも、もしも本気で俺と結婚したいのなら帝国全てを結納品として俺の元に嫁に来い!」


「な!?」


 さすがに絶句するエメラルダ。

 当然だろう。っつーか国際問題級の問題発言だがエメラルダとしては俺に龍の巣まで連れて行ってもらわなければならない為、ビジネスライクな対応を取らざるを得ない。すでに奴隷の身分から解放された借りもあるしな。

 個人の感情を排して皇帝の道を選ぶのか本心で俺の元に来るのかの両天秤な訳だ。

 なにしろそんな要求を飲んだら帝国を裏切るに等しい所業だ。確実にエメラルダは皇帝の座から引きずり降ろされる。

 元皇帝で今は只の貴族の女なら利用価値も、扱いづらい存在と言う意味で激減する……と思う。

 まかり間違っても皇帝のまま嫁に来るなんて不可能だろう。

 政敵に陥れらた事に関しては自身の体験から理解できないでもない、そういう意味では協力してもいい。皇帝に成りたいのならそれも協力しよう。

 その辺はウチの陛下もOK出してるから問題ない。ビジネスとして対応できる。

 だが結婚となると話は別だ。エメラルダが本当に皇帝になったらその権力で帝国を好き放題できる。現代における最大勢力を誇る国家の全てをエメラルダの一存で好きにできるということは、気分しだいで戦争を始めて、大抵の国家は滅ぼせる。


 そう、国としての国力は帝国のほうが上だ。それも圧倒的に。

 ルジウス王国は地球に換算すると北海道くらいの広さだ。中世の西洋国家と比べるとかなり広い。

 だがそれはあくまで地図上の広さ。俺が開拓するまで人が住めなかったイージガン平原など込みの広さなので実際のはもっと狭い。

 対する帝国はアメリカくらいの広さがある。単純な地図上での広さとしてもだ

 浮島の古代地図を元に今の国家情報と照らし合わせた大雑把な比較だがそれでも国力の差は明白だ。


 別に俺一人なら浮島に逃げ込めば良いし、戦うにしても大量の大型ゴーレムを作り空から戦線に投入すれば舐めプで勝てるだろう。

 だが逃げれない王国はそうも行かない。帝国との戦いになったら王国とその民の命も守らなければならないからだ。

 貴族になった事で余計な弱点を持ってしまったといえる。

 正直な話アルマの故郷だから所属し続けているだけだしな。


 だからエメラルダと結婚してこれ以上面倒を背負い込むのはごめんだ。

 どうしてもと言うのなら何もかも捨てて身一つで来てもらわにゃ俺の神経が持たん。こちとら小市民なんだ。


「本気でイヤなのね……」


 見るからに落胆した顔を見せるエメラルダ。


「帝国の次期皇帝っていう肩書きとしがらみが嫌なだけで、エメラルダは十分魅力的だと思っているぞ」


 胸もでかいしな。


「はぁ、分かってるわ。貴方の第一印象の基準が顔と胸だけだって言う事は」


ひ、人聞きの悪い事を! 俺が胸の大きさだけを気にしているように聞こえるのは勘弁して頂きたい。


「小さくても形がよければアリなんでしょう? 本心ではいろんなサイズの胸の女の子を侍らせたいって思っているんだものね」


「ななななな何の事かな?」


「そう言う意味では私も芽が無いわけじゃないのよね。ほんと君のそう言う所、愛しいわ。……でも私は次期皇帝で帝国の未来を……」


「良いのではないですか?」


「「え?」」


 突然俺達が行なっていた交渉と言う名の舌戦が打ち切られる。

 その犯人はアルマだ。


「良いって何が?」


エメラルダが問いかけるとアルマは部屋の隅に移動してエメラルダに手招きをする。


「もしょもしょで……」


「ええ!? でもそんなもしょもしょ……」


「ですからもしょもしょ」


「……もしょ」


 疎外感パネェ。


「……それなら大丈夫でしょう?」


「本気……なのね。でも貴女の旦那様はそれを知らないみたいだけど?」


「はい、これは私の個人的な願いですから」


「怖い娘、本当は貴女が彼にとっての一番の敵なんじゃないかしら」


「たとえ夫に嫌われても夫の為に尽くす、それが妻の愛です」


 エメラルダが大きなため息を吐く。

 

「……分かった、降参、貴女みたいなイカレタ娘が相手じゃ正妻の座は奪えそうも無いわ。2番で我慢するとするわ」


「え?」


 今2番とおっしゃったか?


「ええ、決めたわ。第二王妃でいいから貴方のモノになるわ。貴方の条件通り帝国全てを貴方への結納品として捧げることを誓うわ。よろしくね、あ・な・た」


 そう言って再び俺にしなだれかかってくるエメラルダ。

 だが俺はそんな幸せな感触を楽しむ事は出来なかった。


「おま! 本気かオイ!?」


「本気も本気! 貴方のモノになる為に全てを捧げる! 元々貴方が言い出した事よ!!」


「頑張ってくださいねクラフタ様」


 ハートマークが付きそうな声音と共にアルマが反対側にしなだれかかってくる。


「い! 良いのかアルマ!?」


 俺がアルマ以外の女に手を出すって事だぞ!?

 陛下の許可も取らないでこんな事を勝手に決めたら不味いなんて話じゃないだろ!


「大丈夫です、クラフタ様。この私の、貴方の妻の言葉を信じてください」


 そう言われるともう何も言えなかった。ここで問いつめれば俺がアルマを信じていないという事になってしまう。

 アルマはこれ以上は話すことは無しと甘えん坊モードに入ってしまい。エメラルダも負けじと甘えてくる。

 結果俺は二人の女の子に甘えられ途方にくれるしか無かった。


「ホントに大丈夫なのかよ?」

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