竜の姫
「私の名はエメラルダ=ジェイ=ヴィクツ
ヴィクツ帝国第5皇女にして次期ヴィクツ皇帝よ」
俺の部屋にやってきたのは、件の帝国の姫だった。
それにしても次期皇帝とは大きく出たな。
年のころは14、5歳と言った所か、身長は俺より高く、フィリッカと同じくらいだ。
容姿は相当の美少女で、アイドルになればNo1アイドル間違いなしの器量だ。
なかなか変わった髪型をしていて緑の髪を肩まで伸ばし、サイドは胸元まで伸ばしてある。アニメじゃ結構居るけど現実じゃそう見ない髪型だな。耳の後ろには角を模したアクセサリを付けている。
そして胸はかなり豊満で自己主張が強い。とはいえオーナと言う規格外にはかなわないみたいだ。
あとかろうじてアルマのほうがでかい。年齢的なハンデを考えてもアルマの勝利は揺るがないだろう。
「貴方、本当に胸の事ばかりね」
エメラルダがあきれた口調で俺にツッコミを入れる。
「な! 何のことですかなぁあぁぁ?」
「クーちゃん、語尾が変です」
ははははは、別に胸意外も見ていますよ。
「そうね、顔やお尻も見ているわね」
何この娘エスパー!?
「?」
ん? エメラルダが不思議そうな顔をしてこちらを見る。
「それで、続きを話して良いかしら」
「あ、ああ。どうぞどうぞ」
「軽いわね、少しくらい驚きなさいよ、スキルの事とか帝国の皇女だと言った事とか」
あ、そういえばそうだ。
「……」
完全にあきれた顔で見られている。
「えー……そ! そういえば何でさっきは俺のスキルについて分かったんだ!?」
うん、確かにさっきの発言はおかしかった。あの状況で俺がスキルを使った事が何で分かったのだろうか? おそらくは……
「その通り、スキルよ。詳しくは貴方の『看破』を使って調べれば直ぐ分かるわ」
「!」
この状況で『看破』の名前を出すか。やはり色々気付かれているみたいだ。
「どうせそのスキルを使われたら分かる事だがらね。でも慎重にね。スキルは神器に入れたままにしておきなさい」
神器の事まで知っているのか。これは只のスキルじゃないな。
「クーちゃん」
アルマが俺を不安そうに見る。無理も無い、うかつにスキルを使えばまたさっきのような状況に陥る可能性があるからだ。
俺はアルマの頭を撫でながら優しく諭す。
「大丈夫だ、慎重に必用な情報だけを取り出せば暴走することは無いさ」
心の中で多分な、と付け加えながらエメラルダと向き合う。
「それじゃあ使うよ」
「ええ、どうぞ」
これから自分のステータスを読まれるというのにエメラルダは微塵も不安や不満を感じさせない不適な笑顔をしている。
俺は細心の注意を払って『看破』のスキルを発動させた。
途端に頭の中に大量の情報が流れ込んでくる。
「くっ!」
「クーちゃん!?」
声をあげ膝を付いた俺にたまらずアルマが声をあげる。
「大丈夫だ」
無理に抵抗してはいけない。必要のない情報は見ずに欲しい情報にだけ意識を集中させるんだ。
カメラのピントを合わせるように、必要な情報だけを拾い集めていく。
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名前:エメラルダ=ジェイ=ヴィクツ
Lv24
性別:女 年齢:14歳
種族:人間(竜人:上位貴種)
クラス:ステイツマン
派生クラス:ポリティシャン
エンプレス
ラブスレイブ
スキル
中級心見 ・中級模倣
スペル
・初級回復魔法:消費魔力5
・中級火魔法:消費魔力25
・初級竜魔法:消費魔力17
能力値
生命力:350/400
魔力:250/250
筋力:2
体力:2
知性:8
敏捷:2
運 :6
感情:恋/80
『ヴィクツ帝国第5皇女』
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何とか問題なく見る事が出来た。
今回はエメラルダの正体を知りたいと思ったからなのか、最大素質値は表記されていない。
メルクリウス達の時は詳細な経緯などまで表記されていたが、今回は皇女である事だけが記載されている。
ただ、いまいち使いこなせていない感だ。まだまだ無駄な情報が多い。要練習あるのみか。
種族は人間だが竜人か。恐らく天使や竜人と言うのは人間と言うカテゴリーの中の派生種なのだろう。
犬の中の柴犬やチワワみたいに。
所でクラスのステイツマンって何だ?
「政治家って意味よ」
ご丁寧にエメラルダが教えてくれる。
なるほど、じゃあボリティシャンって言うのもソレ系のクラスか。
って言うか、またラブスレイブがあるんだが、これは奴隷にされたから生まれた派生なのか?
なんかよく分からんクラスだな。
そして肝心のスキルだが、『心見』と『模倣』か。
なんとなく名前から想像できるがこの二つのスキルについて知りたいとイメージする。
『心見
指定した相手の考えた事が分かるようになる。
相手の考えていない事は分からない。心を読むには相手が視界内に居なければいけない。
持続時間5分 一日5回』
『模倣
接触した相手の魔法、技術を模倣する。
スキルは模倣できない、自身の肉体の限界を超える技術は再現できない。
模倣できる技術は4つ、技術はストックしておけるが5個目を模倣すると一番古い技術が上書きされ消える。技術は任意で削除できる』
へぇ、なかなか優秀なスキルだ。
そういえばアルマが言っていたっけ、帝国には相手のウソを見抜けるスキルの持ち主が居るって。
「そう、私の事よ」
なるほど、俺の心を読んだから色々知っていたって訳か。
ああ、さっき顔色が悪かったのは『看破』の暴走で溢れた情報の波に巻き込まれたからだな。
「そうよ、さっきはひどい目にあったものだわ。まぁ、貴方の頭の中は基本女の子の胸の事ばかりだったからスキルの使い損だったけどね」
なぁ~んの事ですかねぇ。
「ほんと、そういう所素敵だわ」
エメラルダがポソリと何やら呟くも声が小さすぎて俺には聞こえなかった。
「ん?何?」
「なんでもないわ。それより貴方に頼みたい事があるんだけれど」
「帝国に帰りたいって言うんだろ」
なんたって自称次期皇帝様だもんな。
「自称じゃなくて確定よ、私以外皇帝にふさわしい人間はいないんだもの。
でも違うわ、いえ帝国には帰りたいのだけれど、その前に行かなければいけない場所があるの」
「行かなければ行けない場所?」
俺の問いかけにエメラルダは頷き言葉を発する。
「ええ、私が行かなければいけない場所、それは、『龍の巣』よ!!」
「……」
ん? 雲の中に行くのか?




