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牢屋の中のお姫様(だが放置する)

左利きだから異世界に連れて行かれたの発売日が07月15日に決定致しました。

詳細は活動報告のほうに乗せてありますのでよろしければ見ていってください。

 さてさて、奴隷を犠牲にした非道な商売の証拠を掴みに来たら、とんでもない出来事に遭遇してしまいました。

なんと子悪党の屋敷の地下に造られた牢屋の中には、とある大帝国のお姫様が捕まっていたのです。

常識的に考えて国際問題どころか戦争に発展しておかしくない案件ですよ。マジで。


「どうすんよコレ」


 俺は目の前で寝こけているお姫様を前にそう呟いた。


「さすがに放置すると我が国にとっても国際問題になってしまいますから、助けるのが妥当かと」


 だよなぁ。

帝国の王女を見捨てたのが何かの拍子でバレたらウチの国の立場が不味くなる、ここは帝国に恩を売っておこう。


「とはいえ、本物なのか? たとえば詐欺師が捕まって奴隷に落とされたとかは?」


 偽者の可能性を疑っておかないといつかの二の舞になるからな。


「この方の刺繡に使われている金毛鳥はヴィクツ帝国が極秘に有する隔離庭園と世ばれる場所にのみ生息する鳥です。見てください、金毛鳥の毛は文字通り『金』でできた毛で、金髪や金色に染めたモノではありません。またその毛は鳥の羽毛ではなく人や獣の毛と同じ長い糸状をしています」


 言われて見ればその刺繡はメッキのように輝いている、普通の金糸とはあきらかに違う。

しかし金毛鳥、サラサラロングヘアの鳥って訳か、どうやって飛ぶんだろう。

……空飛ぶ金髪カツラ?


「庭園にのみ生息って事は絶滅危惧種なのか?」


「詳細はずっと昔から秘匿されて続けているので細かい事は分かりません、噂では金毛鳥の金を独占するために野生の金毛鳥を乱獲して滅ぼしたと言う噂が立ったほどです」


 うーんワイルド&バイオレンス。

そこまで厳重に秘匿するのも刺繡が盛んな国だからか? 本物の金でできた糸はヴィクツ人にとってすごい価値があるのかもしれない、まぁ金は高価という点では他国も共通なんだけどさ。


「話を戻しますが金毛鳥は一般人の手には入りませんし、更に鎧龍の刺繡は王族の刺繡ですので見つかった即死刑です」


 おっかない国だな。


「騙るにはリスクの高すぎる相手って訳か」


「はい、それに帝国には人のウソを見抜くスキルを持つ方がいらっしゃるそうですので、言い逃れは不可能です」


 ウソを見抜くスキルか、尋問には最適だなぁ、なんにせよあまり会いたくない人物だ。


「どうやら本物っぽいな、でも起こすのはこの地下室を探索し終えてからな」


「ですね」


「ですわね」


 非常なようだが表向きただの商人である俺達が、魔法具やスキルを使って事件を解決するのを見られるのは大変よろしくない。

何で身分を偽って居るのか分からなくなるからだ。


「アルル、他にも貴族が居るか分かるか?」


「そうですね……」


 アルマが眠っている奴隷達をじっと見定めていく。


「確信はありませんが良い服を着ている人が数人います。奴隷として捕えられてからマトモに手入れされていないみたいなので薄汚れていますが上質の布としっかりした縫製の服なのでそれなりに裕福な家の人間だったのだと思います」


 そう言って5人ほどを指さす、確かに言われてみると良い服を着ている、平民の服とはちょっと違うな。


 そうなると没落して借金で身売りさせられたか、野盗や人買いに捕まったといったところか。

それでも帝国の姫がこんな所に居る理由にはならないが……なにやら陰謀の香りがする。

 地下室の探索が一段落着いたら陛下に連絡して国としての方針を決めることにしよう。


「よし、それじゃ後は向こうの通路を探ろう」


「ああ、秘密の部屋に隠されたモノは一体何なのでしょう、私の作家魂が早く真実を知りたいと叫んでいますわ」


 シュヴェルツェがオペラ役者のようにポーズを取りながら、辛抱たまらないとばかりに俺の腕を引っ張る。だがその絶壁は俺の腕に接触しても何の感動も与えてはくれなかった。強く生きろ。

 っと、そういえばコイツ遺跡の部屋では自筆の小説に埋もれていたんだっけな、そうするとこのテンションはミステリーかサスペンスのノリなんだろうなぁ。絶壁だけど、いやサスペンスなら断崖絶壁は必須か。



 シュヴェルツェに引っ張られながら左の通路を進んでいくとすぐに行き止まりにドアに突き当たる、そしてドアは左右にも存在している。

『領域』スキルで感じる魔力は右の部屋のみ、生命力はどの部屋も感じない。


「どちらにしますの?」


「魔力を感じるのは右だな」


 そういって右の部屋に入る。

部屋の中に入るとそこには数体の水晶の彫像が立っていた、いずれも卑猥な格好をしていて、まるで生きている人間のようだ。


「これが全部人間なんですね」


 アルマが言葉に怒りを滲ませながら呟く。


「まずは人間を水晶に変える魔法具を探そうか」


「はい!」


「ええ」


 まずは『探索』スキルで部屋を調べる、だが特に隠しているものは見つからなかった。

まぁこの部屋そのものが隠していたものだからなぁ。

そのまま『領域』スキルの魔力反応を頼りに部屋の中を探ると、ソレはあっさりと見つかった。

部屋の中には水晶の彫像以外に机が一つおいてあり、その引き出しの中に無造作に入っていた。

形としては懐中電灯のような形をしていて、持った際に親指が当たる位置にボタンが二つあった。


「これが魔法具か」


早速スキルで鑑定して見る。


『変身光線灯

 変身魔法で対象の生物を任意の存在に変身させる事ができる。

 復元ボタンを押せば元に戻す事もできる』


 あー、シュヴェルツェがちょっと違うって言ってたのはそういう事か。

変身魔法で水晶になるって事は某国民的ファンタジーRPGの鉄になる魔法みたいなもんか。

だとしたら時間が経てば元に戻る可能性もあるのかもしれないな。

だがもしもそうでなければ永遠にこのままなので、ここは素直に復元ボタンを押して元に戻す必要があるだろう。


「これが人間を水晶にした魔法具なんですか?」


 俺がスキルで鑑定できることを知っているアルマは、鑑定が終わった事を俺の表情から察したらしい。


「ああ、変身光線灯という魔法具で相手に変身魔法をかけるものらしい」


「よく分かりますのね、もしかしてスキルですの?」


 さすがにバレるか。


「ああ、鑑定系のスキルだ」


「それでこの人達は元に戻せるんですか?」


 アルマが不安そうな声で問いかけてくるので、アルマの頭を撫でながら答えてやる。


「大丈夫だ、復元ボタンを押せば元に戻る」


 俺の言葉を聞いてアルマはほっと息を吐いて優しげな表情を浮かべる。

なんとも思っていないように振舞っているがシュヴェルツェも心なしか表情が柔らかい、どうやら元獣であっても彼女の感性は人間に近いらしい。これも彼女が読み耽っていた人間の本のおかげだろうか?



 水晶にされた人達を元に戻す前に残りの部屋も調べて見ることにする。

正面のドアを開けるとそこは階段になっており、上っていったら見知らぬ民家の部屋に出た。

領域スキルで調べて見たが生命反応は無く、部屋もホコリが積もっていて足跡と荷物を置いた後だけがあった。

おそらくこの階段は抜け道兼密売品を運ぶ通路で、家はダミーハウスなのだろう。

 階段を戻って左のドアを開ける、するとそこには大量の荷物置いてあった。

部屋の隅に置かれた机を調べると荷物の帳簿が入っており、ここに置いてあるのは全て違法な品や密輸品であった。

 魔法具は無かったが薬の材料になる貴重な品などが多くあったので幾らか頂いておこう、水晶の森で襲ってきた慰謝料だ。

 後この部屋にも数体の水晶の彫像が置いてあり、これも人間が変身魔法で水晶にされたものだった。


 地下室はこれで全てみたいだな、じゃあ水晶にされた人達を元に戻して眠っている奴隷達を解放する……いや、まてよ。


 よくよく考えるとここにはお姫様を込みで貴族が数人いる訳で、保護するのはいいがどういう立場で接するか対応を考えた方がよさそうだ。

 通信機を使って陛下に連絡を取ったほうが良さそうだな。

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